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客席放浪記

春風亭一之輔独演会 一之輔のすすめレレレ〜vo;.14

2017年11月1日
なかのZero小ホール

 出囃子が「前座の上がり」で出てきたのは、なんと春風亭一之輔。「開口一番でございます」に大笑い。開口一番には誰か二ツ目を使うつもりでいたら、ネットで三遊亭歌太郎が『NHK新人落語大賞』を取ったと知り、急遽出てもらうことにしたとのこと。お祝いの意味を込めて先に一之輔が上がることにしたらしい。
 一之輔も二ツ目時代にこの賞を取ったとかで、そのときの審査の模様を面白く語る。スタジオには「笑い屋」の女性がたくさん入っていて、変なところで笑うので調子を崩す仲間が多いとか。そりゃやり難いだろう。私も一度、寄席にテレビの公開生放送が入っていて、前の方に「笑い屋」の女性がズラッと入っていたのを体験したことがある。落語家さんが、ただ座布団に座っただけで大げさに笑う。落語家さんが「何がそんなに可笑しいんですか?」と、戸惑っていた。
 一席目は、前座さんらしい泥棒噺『めがね泥』。一之輔と言えば、この人の『鈴ヶ森』は絶品だが、あえて『めがね泥』。それでも先輩の泥棒と、少し頭の足りない後輩の泥棒という構図は同じ。このふたりの泥棒の掛け合いの間が、この人がやると人一倍可笑しいんだよな。

 一之輔からプレッシャーを浴びた形で高座に上がった三遊亭歌太郎。その『NHK新人落語コンクール』決勝は大阪のスタジオだったそうで、ちょうど大型台風が日本に接近していたとき。NHKから、当日入りではなく前乗りで大阪にきてくれとのことで、相模原の仕事を終えて新幹線に乗ったら、台風で新幹線のなかに11時間閉じ込められたまま。「車内販売が売れるんですよ。こういうとき売るんじゃなくて配給にしてもいいんじゃないですか?」。
 そしてそのNHKでやったという『磯の鮑』。さすが大賞を取ったというだけあって、いい出来だった。あまり演じ手のいない噺をうまく工夫を加えて、この人のものにしている。

 一之輔の二席目。『NHK新人落語大賞』で賞金50万円を貰って、後輩たちを集めて居酒屋で飲んだというマクラ。どうやらこの賞を取って賞金を貰ったらみんなに奢るというのは伝統行事らしい。その場にいない二ツ目の悪口、あるいは嫌いな前座、真打、席亭、事務員の話題で盛り上がるって、目に浮かぶよう。そっちの世界には行けないけれど、ちょっとうらやましい。
 噺はそんな酒飲みの『猫の災難』。兄貴が鯛を買いに行って、なかなか帰ってこないので、兄貴の置いて行った酒を全部飲んじゃう。つい口をついた言葉が「寂しい」。しょうもない男だけど、なんだか可哀想になって来る。

 仲入り後は、岡大介のカンカラ三味線。私が最後にこの人を観たのは六年前、3.11のあとのゴールデンウイークの東洋館。被災地に慰問に行ったと言ってたっけ。『東京節』、『十九の春』、『トコトン節』、『御座敷小唄』。

 一之輔三席目。今日から一之輔の弟弟子でもあり、一朝門下の朝太郎が、前座修業を終え、春風一刀として二ツ目になる。一刀は七番弟子。その下にもまだ三人いる。「『そんなに弟弟子いらないよ』と言ったら、『そんなに兄弟子いりません』と言われてしまった」って可笑しい。しかし落語家の数はどんどん増えるね。
 噺は『化け物使い』。人使いの荒い隠居さん、お化けに身の回りの世話をさせる。「布団を敷け。北枕じゃなくて、南枕! そんな言葉があるかどうか知らないけれど。枕元には耳かき。それも南枕にする! どっちが頭ですか? ポワポワしてるのが付いているのが頭!・・・なに爪切りも置いているんだ! 気が利いたことをしたと思われたいんだろ! それが余計なんだ! まず言われたことを確実にやる!」 どつかの師匠が弟子に言いそうだな。

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