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客席放浪記

柳家小三治独演会

2015年7月29日
松戸市民会館

 前座を使わず、弟子であるベテラン真打の柳家喜多八から。よく聴くことがある立ち食いそば→松茸のマクラの流れから、お得意の『筍』。最近はこの噺を演る人も増えたが、やはりこの人には敵わない気がする。武士しか出てこない噺なのに、なんともとぼけた味わいで、それがまた喜多八というキャラクターにぴったり合っているところがある。春の噺だが、いつ聴いても楽しい。

 柳家小三治は、「昨日ニュースで、帯広のばんえい競馬が人気になっているというのを聞きまして」と、自分が以前に見た、ばんえい競馬のことを話しだした。かつては毎年夏になるとオートバイで北海道をツーリングしながら落語会を回っていたという人だけに、夏のばんえい競馬も見たらしい。長いマクラに定評のある人なので、そのばんえい競馬観戦記のようなものが面白いのなんのって。ばんえい競馬の様子が目の前に浮かんでくる。私もつい先日、レースは行われていなかったが、帯広のばんえい競馬場を見て来たばかり。私にとってグッドタイミングなマクラだった。ばんえい競馬のことをマクラにしたということは、ひょっとするとこれは『馬の田楽』かなと思ったら、九段の坂を荷を引いた馬を登らせるときに、一旦馬を止めて、馬を励ますように話しかけるという聞き覚えのある話しを始めて『馬の田楽』に入った。しめた! 今日はアタリだ。この噺、演る人は少なく、しかも今のところ小三治に敵う人を聴いたことかがない。しかもこれは夏の噺。゛実にの〜んびりした噺で、夏の暑さの中で聴くにはうってつけだ。

 多趣味であることも有名な小三治。仲入り後のもう一席は、切手集めに夢中になったことなどを話しながら、やがて釣りの話題。自分はあまり夢中にならなかったと言って『野ざらし』。あまりほかの人と変わったところはないストレートな『野ざらし』だが、こういう噺をさせても、やはりこの人は上手いし、まだまだ若いんだなと感じた。

 帰宅して、「はて、以前、小三治の『馬の田楽』を聴いたのはいつだったろう」と思って調べてみたら、もう十一年も前の2004年4月25日。所も同じ松戸市民会館だった。あのときは高知競馬のハルウララのことなどをマクラにしていたようだ。ハルウララ、懐かしい。まったく勝てないことで有名になってしまった馬だった。あれからもう11年経つんだぁ。そしてもっと驚いたのは、もう一席も今日と同じ『野ざらし』。11年も経つと忘れているものですねぇ。

7月30日記

静かなお喋り 7月29日

静かなお喋り

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