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2011年9月23日 落語教育委員会昼の部(横浜にぎわい座)

 お馴染みオープニング・コントは『犬神家の一族』。犬神松子に三遊亭歌武蔵。佐清(すけきよ)に柳家喜多八。金田一耕助に柳家喬太郎という配役。最初から最後まで一言も台詞のない喜多八が、攫って行った感じ。

 開口一番は春風亭朝也。「家が近いんで、市馬師匠に稽古をつけてもらうことが多いんです。普通、稽古って15時とか16時が多いものなんですが、市馬師匠の場合は、11時か13時なんです。これは、稽古のあとに、飯を食っていけということなんです。たいていカレーライスなんですが、ここでの決まりは、必ずお代りをしなくちゃいけない事。まず一杯目からしてご飯山盛りの上にカレーがかかって出てくる。ようやく食べ終えて、お代りを貰いますと、一杯目より二杯目の方が量が多い。これをようやくの思いで食べ終えようとする瞬間、レンジの音がする。市馬師匠のお弟子さんが、ご飯を温めている。師匠が「おい、何やってんだ。誰が食べるんだ」 「朝也アニさんがまだ食べると思って」 「お弟子さん達が怒られたら可哀そうだがら、『いただきます、いただきます』」。これが『そば清』のマクラ。うわー、『そば清』聴く前に、気持ち悪くなってきたよー。

 「秋らしくなってきたというところでしょうが、私はまだ夏の着物。私にとって、一年のうち十ヶ月は夏ですから」 大きな身体の三遊亭歌武蔵がそういうと、そんなものかと笑ってしまう。ネタは『天災』。3.11以降、この噺は封印という感じだったが、そろそろ半年。もういいのかもしれない。

 柳家喜多八は、歌武蔵と喬太郎の体型について触れたあと、自分もスリムな体型を維持してきたつもりが、歳を取ると付いて欲しくないところに肉が付いてきたという話。「ダイエットには寝る前に腹いっぱい食べないことらしいですね。それで実践したんですが、腹が減っていると寝付けないんですよ。そのうちに寝られるようになりましたが、夢の中でも何か食べている。納豆を食べている夢が実にリアルで味までわかる。それで目が覚めてから朝食に納豆を食べようとすると冷蔵庫の中に納豆が無い。流しを見ると、私の茶碗と箸が置いてあって・・・」 お得意の立ち食いそばの話やら松茸の話のあと、『目黒の秋刀魚』へ。

 トリが柳家喬太郎『宮戸川』(通し)。この噺を今、通しで聴けるのは喬太郎以外いないだろう。私はこれで二度目か。半七が乗り合わせた船に乗り込んできた酔っ払いから、自分の妻をもてあそんで殺したという告白を聞くダークな部分の凄さはどうだろう。でもこれが案外、誰でも男が持っている妄想部分なのではないか。こんな想像をしたことがないという男がいたら、それはウソだと思う。男はみんなそんな欲望をこっそりと貯め込んでいるものなんだと思う。それを落語という世界で見せてしまう喬太郎は凄いと思う。よく演られる前半部が男の健全な妄想なら、後半は男のダークな妄想の世界なのだ。

9月24日記

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