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2011年2月19日西荻の会『ロング・ロスト・フレンド』(本多劇場)

 もともとは、伊東四朗、佐藤B作、角野卓造、あめくみちこ、松金よね子、市川勇ら、仲の良い役者仲間が集まって飲む会なのだそうだ。それが、ひょんなことからみんなで芝居を演ろうということになったのだとか。顔ぶれを見るとみんな中高年で濃い芝居を見せる人たちばかり。こういう、酒飲みの勢いで始めちゃったものって、あまり期待できないなあと思ったのが第一印象。

 それでストーリーがやくざ者ばかりが集まっている老人ホームのコメディと聞かされると、ますます食指が鈍る。こういうの、なんかなあ、面白くなりそうにもないと思ってしまったのだった。

 それでもチケットを買ったのは、伊東四朗なら観ておいて損も無いかと思ったという、それ一点。

 出てくる役者の年齢層も高いが、客席を見回すと、こちらも中高年が圧倒的に多い。本多劇場に来る客というよりは、新橋演舞場あたりで見かけそうな客層。

 芝居が始まると後ろの席の女性が、周りに聞こえるような声で、「あっ、今出てきた役者、なんて言ったっけ」「かくのたくぞうよ」「いや、あれはかどのって読むのよ」なんて話声が聞こえてきたり落ち着かない。

 芝居はコメディというよりは、わりとシリアスな話で、なんだか重苦しい。「参ったなあ」と思っていると、後半になってグイグイと面白くなっていった。伊東四朗が何か秘密を抱える男だというのが前半で伏線としてあって、それが後半になって真実が少しずつわかってくるという脚本のよさ。

 役者陣も、飲み会の続きというわけでなく、力いっぱいの熱演。

 これはいいものを観られたという感じ。

 これで西荻の会は、またただの飲み会に戻ってしまうのだろうか。たまには、また芝居を見せてくれるとうれしいのだけど。

3月22日記

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