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客席放浪記



神田松之丞新春連続読み
゛畦倉重四郎完全通し公演”第六夜(千秋楽)


2017年1月9日
レフカダ新宿

第十七話『奇妙院の悪事(下)』
第十八話『牢屋式炎上』
第十九話『重四郎服罪』

 例に結って、居眠り、咳き込み、身体を大きく動かすこと厳禁。空調は低く抑えられた超満員の客席だ。携帯カイロ、喉飴、チオビタドリンクなどが廻ってくる。六日間の長丁場も今日で終わる。

 第十六話が『奇妙院の悪事(上)』で終わってしまったため、第十六話のお浚いから。
 結局、おはまの墓から銀の簪を手に入れた奇妙院は、坊主に化け、それをおはまの両親に見せ、おはまの亡霊が出て、この簪を治自分が受け取ったと言い、成仏させるためと称して百両の金を騙し取る。昔っから、この手の手口ってあったのね。
 家に戻ると、そこには殺したはずの権太が! だから、とどめさしておきゃあよかったのよ、重四郎みたいに。おかげで今度は奇妙院が権太に騙されて百両は持ち逃げされてしまう。な〜んだ奇妙院晴天、ダメじゃん。
 奇妙院は、これだけの小者キャラなのだが、このあとの展開に大きな意味を持つ人物。
 重四郎は、軽い罪で牢に入った奇妙院に、自分には隠し金が千両あると言い、その半分をやるからと相談を持ち掛ける。伝馬町の牢に火を放ってくれというのだ。火事のさなかに逃げようという魂胆。
 釈放された奇妙院は伝馬町の牢の近くに家を借り、屑屋を始める。火つけの準備を始めていたある日、ちょっとした間違いから本当に火が出てしまい、見る間に燃え盛り大火事になってしまう。その混乱のなかで、奇妙院は死亡。なんとも狂言回し的な、なさけないキャラだったな〜。
 しめたとばかり、火事に乗じて逃げようとする所を重四郎は捕まってしまう。
 再び城富、おふみも揃ったお白州。重四郎は、ほとんどのの罪を認めたものの、平兵衛殺しの罪を富右衛門に被せたことだけは、ガンとして白を切る。ところが、城富と大岡の間で、もし真犯人が出てきたら、獄門にかけられた城富の父の代わりに、大岡の首を差し出す約束だったと知り、大岡も道連れだと、重四郎はあっさりと罪を認める。ところが死んだはずの富右衛門は生きていた。悔しがる重四郎。
 最後に何か言い残すことはないかと問われて重四郎は、お前らはいい女がいても声もかけられない。わずかばかりの金をアクセク稼いで、なにも楽しい思いもせずに死んでいくんだ。おれはいい女がいれば抱く。金があれば人を殺してでも奪う。太く短く生きたんだと見栄を切ってみせる。その大悪党らしい啖呵のかっこいいこと。
 『畦倉重四郎』、大岡政談のひとつでもあるが、素晴らしいピカレスク・ストーリーでもあった。

 大団円を迎え、記念写真大会、三本締め。そして入場者全員に、「よく眠ってください」と、「蒸気でアイマスク」が配られた。

1月10日記

静かなお喋り 1月10日

静かなお喋り

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