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2011年1月10日シベリア少女鉄道スピリッツ『もう一度、この手に』(王子小劇場)

 シベ少を観始めたのは2005年の『アパートの窓割ります』からだった。なっ、何これ? という芝居で、芝居というものを逆手に取っているというか、はたまた芝居と観客をばかにしているのか、とにかく不思議な劇団で、また次が観たいと、そのたんびに足を運んでしまうようになってしまった。

 今回は上演前に「上演時間は2時間10分を予定しています」との説明があったので、「おや?」と思った。この劇団、今まではだいたい1時間半くらいのものが多くて、また内容的にもその程度が限界だと思っていたからだ。事前に今回は短編オムニバスになるのだというコメントがあったことを思い出し、ああ、それならありかと納得。

 当日貰った紙には上演される9本のタイトルが書かれていた。

How are you ?
教え
業X業
終わりの始まり
It doesn’t hear it
柔らかな銀行
深黒
COMING SOON
See you again !

 1時間半程度が限界とい書いたのは、この劇団の芝居の特徴は最後の壮大でバカバカしいオチにある。そのために前半は、まさにそれへ向けての伏線を張って行く作業に費やされる。そのために前半は「なんでこんなことやっているの?」といった気持にさせられ、なんだかよくわからなかったりする。あまりの退屈さにウトウトしてしまったことも。

 そのオチも、ある程度元ネタになる、テレビ番組とか漫画本とかアニメとかテレビゲームを知っていないと、何のことかわからなかったりするから、やや観る人を選ぶというやっかいな劇団ともいえる。しかし、ツボにはまると、ふはははと、笑えるというわけなのだ。

 一編が10分くらいの芝居だから、芝居というよりはコントに近い。前振りからオチまでの時間が短いから、「ああ、あのテレビ番組だ」とわかるまで退屈している暇がない。「次はなんだ?」と推理しながら観ていくと、4本目の終わりあたりから様子がおかしくなる。あとから思い返してみると『終わりの始まり』というタイトルが象徴的ではないか。

 そして5本目の『It doesn’t hear it』が始まり、グタグダになりはじめたところで突然、町田マリー(毛皮族)のナレーションが入り、このオムニバス芝居は別の様相を見せ始める。詳しくは書かないが、それこそ芝居でそういうことを演ってもいいんだという、まさに目から鱗の展開に唖然となった。ここからはコントではなく芝居という感じになっていく。

 もう、どうしようもない状況になってしまう7本目『深黒』が終わって、『COMING SOON』に入ると、この芝居はまた、これぞシベ少という展開に持ち込んでいく。最後はもうネタ全開。いくつものオチが連続して、シベ少好きなら、やんややんや。

 そして9本目のラストは最初に戻るという構成の妙もうれしい。

 こう書いても何のことかわからないだろうが、まっ、好きな人が行けばいいんだ。次はまた一年先なのだろうか?

1月22日記

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