2010年3月22日 第15回翁庵寄席『小宮孝泰の小田原提灯ぶらさげて』 去年の春の翁庵寄席が終わったときから、もう今年の春の企画は出来ていた。小宮孝泰さんは小田原高校で落語研究会を作った人。そのずーっと後輩が柳家三三師匠ということで、この2人の会をやろうということ。どうせやるなら小田原が出てくる噺をということで、小宮さんは『抜け雀』を稽古するから、三三師匠には『小間物屋政談』をやってもらってくれとのお達し。 インターネットって便利だ。検索してみれば三三師匠、『小間物屋政談』持っているではないか。さっそく交渉開始。当初、小宮さんが『抜け雀』一席で、三三師匠に『小間物屋政談』他一席をお願いするつもりだったのだが、三三師匠はあくまで謙虚というか、先輩の小宮さんを立てている。「これは小宮さんの会なんですから、私はあくまでゲストという形にしてください。ですから、小宮さんと私、一席ずつか二席ずつ、あるいは小宮さん二席私一席ということで」 小宮さんに相談すると、「じゃあ今、『元犬』が出来そうになってきたから、それを演るよ」とのこと。『抜け雀』も『小間物屋政談』も尺が長めだから、小宮さんの『元犬』を入れると、それで時間いっぱいになりそう。 公演日が近くなるに従って予約も増え出して、やがて満員。インターネットを見ていると、どうやら三三師匠、このところ『小間物屋政談』をあちこちでかけている様子。講談の人に習ったので『万両婿』としているとのことだが、ははあ、さらっているんだな。 当日、小宮さん、三三師匠、ほぼ同時に楽屋入り。お客さんも続々と御来店。ドタキャンのお客さんはほとんど無く、大入り。小宮さんと三三師匠は驚いたことに初対面とのことだが、またたく間に打ち解けて、楽屋のムードも和やか。 どう考えても時間が押しそうなので、開演5分前に私が出てマエセツ。最近私がマエセツをやるようにしているのだが、やっぱり人前で話すというのは難しい。 開口一番の立命亭八戒は「小田原しばりですから、小田原の出てくる噺をします」と言っていたが、はて他に何をやるのだろうと思っていたら、なんと『花筏』。地方興行の場所を銚子から小田原に移して。なあるほど。「この噺、どこへ持っていっても、その地方にしてしまえばいいんだと気がつきました」って、なるほどね。 小宮孝泰の『元犬』は、ペットのマクラをたっぷり振ってから。これが実に面白い『元犬』。人間になったシロが、うれしかったけど「肉球は残しておいて欲しかったな」なんて言うところは、ペット好きにはたまらないクスグリだ。 仲入り後がいよいよ小田原特集。柳家三三が小田原の思い出をマクラにして場が和んでから『万両婿』へ。箱根の山中で追いはぎに襲われた男を見つけると「今朝がた人間になったような」なんて台詞をクスグリで使ってみたりと余裕の仕上がり。それにしても三三は凄い。この難しい噺を見事に聴かせる。この狭い空間で三三が聴けるなんて贅沢すぎ。 トリは小宮孝泰『抜け雀』。小田原のマクラたっぷり。そして今までで一番のデキになったと本人も納得の高座。 そのあと、三三、小宮でアフタートーク。もちろん小田原高校の話に終始する。そのとき客席に小田原高校出身のパントマイムの山本光洋さんを発見。高座に呼ぶと、軽くネタをやってもらう。さらには三人で小田原高校の校歌を斉唱。最高潮になったところでお開き。 ウチアゲでのビールのおいしかったこと! 一年がかかりの企画だったが、やってよかった。この席で来年の春の翁庵寄席も小宮さんでいくことに決まった。次のアイデアも小宮さんから提案が出て、さあ来年がまた楽しみになってきたぞ。 4月17日記 このコーナーの表紙に戻る |