2011年2月26日第17回翁庵寄席『孝泰くんと泰孝くん』 この企画が動き出したのは1年前にさかのぼる。小宮孝泰さんと柳家三三という県立小田原高校出身者という組み合わせで、15回目の翁庵寄席をやったとき、小宮さんから、「この前、林家正蔵から『小宮さん、おそば屋さんで落語やってるんですねえ』って言われちゃってさあ。そしたら『ボクも出してくださいよ』って言うんだよ。『それは席亭さんが決めることだから』って答えておいたんだけどさあ」 さらに「オレと林家正蔵って名前が似ているの知ってる?」と言われたのだ。「えっ、どういうことですか?」 「オレが孝泰だろ。正蔵は本名が海老名泰孝。名前がひっくり返っているだけで、字も同じなんだ」 ああ、なあるほどー。「正蔵師匠とは、オレ古い付き合いなんだよ。いつか二人会をやるとしたら当然タイトルは、孝泰泰孝」 「えっ、それ来年の春、ウチでやりませんか?」 「じゃあ、本人に訊いてみようか」 これで、あっという間にその場で一年後の企画は決まってしまった。 去年の秋、小宮さんから連絡が入り、正蔵師匠は3月ごろから映画の撮影に入るから2月の終わりごろならOKとのこと。2月26日を開催日に決定する。 こういう落語会を主催している私だが、気になるのは動員。はたしてお客さんは来てくださるのだろうか。毎回悩みのタネ。今年に入ってから、知り合い関係から勧誘を始めてみると凄い勢いで予約が入ってくる。さすがにマスコミに名前が売れている正蔵師匠だ。あっという間に予定数に達してしまった。 席亭なんてことをやっていると、はたしてお客さんがいらしてくれるのだろうかという不安がいつも付きまとう。どんなに自分が「この師匠の落語はいい」と思っても、一般の人には「誰、それ?」ということになってしまい、動員が難しいという経験を積んできた。しかし今回はそんな心配まったく無し。むしろ、満員だというのに「見せろ」という声に、どれだけ申し訳なくお断りしたことか。 落語会当日。いつものように朝から、楽屋の準備、そばの準備、会場の下準備。そして頭の中では、マエセツで喋る私の台詞の練習。 16時30分、小宮孝泰さん楽屋入り。スタッフも集まり会場設営。 17時30分開場。お客さんが続々と入場される中、正蔵師匠来場。もう集まってきているお客さん相手にギャグを飛ばす。さすが芸人。 簡単な打ち合わせ後開演。 まず私が出てマエセツ。 続いて、翁庵寄席の顔、立命亭八戒の開口一番。オチケンで最初に習ったという『一目上がり』を。私は八戒版が大好き。相田みつおが飛び出すあたり、いかにもって感じ。 小宮孝泰さんの一席目は、小宮さんが与太郎噺を集めてリミックスした準新作『与太ロード』。さまざまな与太郎噺が錯綜するネタで、落語好きほど受けるネタだけど、そんなもの知らなくても笑えるのはさすが。マクラで孝泰とか泰孝なんて名前は意外と少ないという話がある。 林家正蔵一席目。父の三平の本名が泰一郎だったことから、長男の自分が泰孝、次男の三平(元、いっ平)が泰助、次女が泰葉、長女だけがなぜか美どり。という説明が入って芝居噺『四段目』。歌舞伎はあまり好きではないといマクラとは裏腹に、楽しそうに演じる『四段目』に思わずニンマリ。 中入後は再び正蔵が上がって『ハンカチ』。ホロリとさせるオチまで観客を引っ張って行く腕はさすが。 トリは、小宮孝泰で『御神酒徳利』。亀戸でネタ下ろしは聴いているが、小宮さんらしいクスグリがあり、、いけるいける。30分以上があっといしう間。 アフター・トーク。正蔵師匠も出て来て、お互いに今映画の撮影に入っているという話。正蔵師匠は山田洋次監督が小津安次郎の『東京物語』をリメイクする『東京家族』に出演。小宮さんはまだナイショの某監督の映画に出演中。その話題で盛り上がる中、正蔵師匠から、「この会、またやりましょうよ」との発言。小宮さん「ではまた来年」と返すと、「えー、そんな先?半年後にまたやりません?」にお客さん大拍手。 うーん、秋もそれじゃ、この続きかな。 3月28日記 このコーナーの表紙に戻る |