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客席放浪記

両極端の会vol.11

2017年3月29日
紀伊国屋ホール

 オープニングのトーク。かっちりした古典の三三、落語の常識をぶち破る新作の白鳥。まさに両極端のふたりの会だが、三三が言うように、最近は三三の方が白鳥側に寄って来た感じ。一方で白鳥はあいかわらず自分のペース。ガチガチの古典はやりようがないらしい。先日の喬太郎との会でも、喬太郎がフツーに『粗忽の使者』を演ったら、お客さんが意外な顔をしている。「なんでフツーに古典やっちゃいけないんだ」と喬太郎が不貞腐れていたそうだが、白鳥との会じゃあ、お客さんだって何か突拍子もないことをやるのを期待するやなぁ。このあとも白鳥の危ないトークが続いて、一席目、白鳥の高座へ。

 今回の三三から三遊亭白鳥への宿題は、「文七元結をテーマにした落語をやってほしい」というもの。白鳥は自分の会で一度だけかけた女性の視線に立った『文七元結』を口演して見せた。基のものは60分あったそうだが、そのうち25分はいらなかったのでカットしたと言うが、今日のも50分あった。大して変わってないじゃん。ウハハハハ。
 最初に驚かされたのは、事が起こる前から、お久と文七がすでに恋仲になっていたという設定。これが最後になって効いてくる。女性の落語家がやりやすいようにという工夫から、なるべく女性の登場人物の動きを多くしてある。お久、長兵衛の女房、佐野槌のおかみ。この三人が中心。だから意識的に吾妻橋の部分はカットしたらしい。翌朝、佐野槌のおかみが、長兵衛がおかみから借りた五十両を見ず知らずの男にあげてしまったと言って夫婦喧嘩をしているという話を聞き、お久を連れて長兵衛の家へやってくる。女三人と長兵衛ひとり。長兵衛は両腕を斬り落とされそうになったり、荒縄で首を絞められたりと、酷い目に合う。やってきた文七も、お久から、「私が吉原に身を売ろうとしていた時に、なんであんなに、もうやらないと言っていた碁に手を出していたのよ!」となじられる。男どもは散々だね。
 途中、『初天神』のパロディを入れたり、『居残り佐平次』は『明烏』の若旦那だったというギャグをいれてみせ、あれらの廓話は『紺屋高尾』、『幾代餅1』も含めて「全部男が都合いいように書かれた落語だ」と看破してみせるところも面白かった。
 途中「しどきん」という言葉が気になったが、あとから白鳥も、「さっきメールを貰いました。『支度金』って『しどきん』ではなくて『したくきん』って読むんですね。おれってまだのりしろありますね」って、シレっと言ってのける所が、またこの人らしいなぁ。

 白鳥から柳家三三への宿題は、「俺の新作から落語家が主人公の噺をやってほしい」というもの。白鳥の噺には落語家の出てくるものって多い。何をやるのかなぁと思ったら、私がまだ聴いたことがなかった『天使がバスで降りた寄席』。かなり危ない噺で、実在の落語家や席亭がバンバン出てくる。これを白鳥がやったために、しばらく干された寄席もあるという、まことしやかな話まであって、決してネットには書かないでくれというので、書きません。まあ、この噺を三三がやったと知られたからって、三三を干す寄席があるとは思えないけれど。ウハハハハハハ。

3月30日記

静かなお喋り 3月29日

静かなお喋り

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