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客席放浪記

2011年9月16日渋谷に福来たる〜落語ムーヴ2011〜vol.3(渋谷区文化総合センター大和田内伝承ホール)

 まだできて間もない公共のホール。ここに来るのは初めてだ。

 オープニングトークは、この日二席を演る橘家文左衛門とゲストという立場の三遊亭遊雀。登壇していきなり文左衛門が遊雀に「最近、○○○に会ってるか?」と先制パンチ。それを受けて遊雀が「その話で来ますか? いいですよ、そっちがその気なら、きょうはとことんその話でいきますよ」と応じると、客席から拍手が来る。もちろんそんな方向へ話が行くわけでもなく、前座修行時代の思い出話というところに落ち着く。

 遊雀が「私が座布団返して、メクリをかえすときに、次に出る人と違うメクリをかえしちゃったことがある。すると、太鼓叩いていたアニさんが、突然私にハイキック飛ばしてきた」とかのエピソードをいくつか披露してくれ、場が温かくなったところで、落語会の始まり。

 二ツ目になった春風亭昇太の弟子、春風亭昇々は、楽屋話あれこれをマクラに、新作落語『お面接』。いわゆるオウム返しネタ。けっこう、こういうのって作るのはたいへんなんだよなあ。それにあえて挑戦している姿勢はいい。なかなか面白かったし。

 橘家文左衛門の一席目は『笠碁』。文左衛門のちょっと怖い顔がやはり迫力がある。ふたりの老人が、一手待て待たないで大ゲンカしたあと、やはり碁仇が来ないと、暇で居ても立ってもいられない。店先で子供が遊んでいると「仕事の妨げになります」とどかしていた主人が、碁仇が店の前を通るのをみかけると、碁盤を店先にこれ見よがしに出しておく。店の者から「仕事に妨げになるのではないか」と言われると、「そんなことはどうだっていいんだ!」

 三遊亭遊雀は、噺を軽く演ることを、この何年かでさらに習得してきたのではないだろうか。『悋気の独楽』で独楽を廻す定吉は、江戸曲独楽さながら。紐を使わず、親指と人差し指の間で器用に独楽を廻して見せる。

 橘家文左衛門のトリの一席は『らくだ』。こういう噺をさせると、やはり文左衛門はいい。こわいアニィと、酔って形勢逆転の屑屋の、張り合いの妙はすげーな。

9月21日記

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