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2009年11月21日人形町で『お富与三郎を聴く会 島抜け』(人形町翁庵)

 全六回の最終回を迎えた。始めた当初は、「これから六回か。長いなあ」と思っていたが、最終回ともなると、「もう終わりか」との思いが強い。

 馬石師匠の『お富与三郎』をトリに、馬石師匠にもう一席。それにゲストをひとりお願いしてきた。最終回のゲストは雷門花助さん。あまり人が演らないような珍しいネタをたくさん持っている二ツ目さんだ。馬石師匠とは協会が違うが、毎年恒例の、住吉おどりで顔見知りの間柄とのこと。楽しい最終回になりそうな予感がする。

 開場前に、馬石師匠と花助さんが揃って楽屋入り。表で偶然にばったりと遭ったのだとか。

 定刻開演。いつもの通り前座役の開口一番は、立命亭八戒。この日の『強情灸』は、いい出来だった。マクラから快調で、「おっ、八戒さん、今日は乗ってる」。噺に入ってからも、八戒流のくすぐりも冴えて、テンボよくサゲまで持っていく。
 気がつくと、馬石師匠が早くからスタンバイしている。「花助って、お喋り。私は高座の前は緊張するんですよ。うるさいから逃げてきた」

 隅田川馬石『厩火事』だ。働かない亭主を持ったおかみさんが、亭主に不満がありながらも、真から嫌いになれない様子がなんとも色っぽいし、亭主のたたずまいもいい。キリッとした一席に仕立てあげている。

 「お喋りな」雷門花助は、、本当に話好き。前座時代から、大看板の師匠であろうが自分から話しかけていたという、ある意味恐いもの知らず。そんな前座時代のしくじりエピソードの数々をマクラに持ってきたが、どうやらそんなに強く怒られたわけでもなさそう。得な性格なんだろうなあ。噺は私のリクエストでもある『両泥』。現在誰も演っていないので、速記本から起こしたという珍品だが、これ、私はよく出来た噺だと思う。なぜ他に誰も演らないのか不思議なくらい。

 仲入りを挟んで、いよいよ『お富与三郎 島抜け』。全六回の中では一番短いのだが、スペクタクル満点。これで六回に渡った長講も大団円。先代の馬生は『与三郎の死』まで演っているが、そこまで行くと、やや寂しい終わり方になってしまうから、これでいいのかもしれない。

 八戒さんの司会で、馬石師匠にインタビュー。進行役上手いじゃん。最後は花助さんにも出てきてもらって、突然の謎かけで締める。実は花助は大喜利も得意。いろいろと芸を持っているらしい。重宝な存在なんですよ。

 ウチアゲのビールは旨かった。全六回を終えて感無量。これだから席亭はやめられない、ってね。

12月12日記

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