2011年4月30日ブス会*『淑女』(リトルモア地下) 金持ちの個人宅のハウスキーピングを請け負う会社の事務所が舞台になっている。会社といってもアルバイトの女性ばかりで構成されているらしい。作業員はこの事務所に集まり、その日の仕事先に出かけていく。ここで働く4人の女性の生態を、観客は覗き見る感覚だ。 私も店をやっていて、長年、お昼の忙しい時間帯はパートタイムの従業員を雇っているのでわかるのだが、不思議なもので、働いている女性が何人かになると、たいていそのうちに諍い事が発生する。結果、そのうちの誰かが、店を辞めると言い出す。まずいぞと思いだす時は、たいてい誰かひとりが他の人から浮き始める時。対象の人物が席を外した瞬間から、その人の悪口が始まる。こうなってくると抑えが利かなくなる。やがてある日、そのうっ屈した状態が爆発して「辞めます」となってしまうのだ。 『淑女』の4人は、とうてい淑女とは呼べない女性ばかりが出て来る。4人のうちその場にいない人物がいると、その人物の悪口が飛び交う。その人の性格、行動、私生活など多岐に渡る悪口なのだが、いかにも女性らしい生理に、笑いが込み上げてしまう。男性の私には、どうも理解できない理由からの悪口だったりするのだが、それをこっそり覗き見る感覚が、 この芝居の面白さ。女性のフィジカルな裸を覗き観る覗き部屋ではなく、メンタルな裸を覗き見る覗き部屋だ。 同じ職場で働いていると多いのが、仕事がデキル人とデキナイ人の問題が実は一番大きいのではないかと思っている。個人の能力差というのは当然あるのだが、デキル人にとってデキナイ人の存在ほど苛立つことはない。それがパートタイマーのように時給が全員一律だっりすると、特に顕著だ。いや、以前会社員生活の経験を思い出すと、無能な上司の給料があんなに高くて、私の給料はこれっぽっちと思ったこともあったっけなあ。仕事帰りの飲み屋さんで今夜もサラリーマンたちは、そんなことを話しているんだろうな。 『淑女』のラストでは、そんなデキナイ人の行動から大爆発が起こってしまう。これでオシマイだなと思っていると、芝居は意外な形で集束していく。これだから女ってわからない。 5月21日記 このコーナーの表紙に戻る |