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客席放浪記

2012年1月30日鈴本演芸場1月下席夜の部

 19時15分。仲入りの最中、2000円の割引料金で入場。主任は乱暴者キャラで売っている橘家文左衛門。十日間のネタ出しがしてあって、千秋楽のきょうは『文七元結』だということに鈴本の前まで来て、表に出ていた看板で知る。

 喰い付きの漫才、ロケット団のお馴染みの四字熟語ネタが始まる。そんな中「凶暴で暴力的なこと」とツッコミの倉本が振れば、ボケの三浦が「文左衛門」と答えて、ドッと笑いを取る。四字熟語・・・かねえ。「周りの迷惑を考えない勝手な人物」 「文左衛門」 ここで座布団やらトイレットペーパーを投げ付けながら「ふざけんじゃねえぞ!」と文左衛門が乱入。逃げ惑うふたり。打ち合わせ通りらしいが、これぞ寄席の醍醐味。

 春風亭一朝『初天神』。なにしろトリが『文七元結』とネタ出しがしてある。あまり長いネタは出来ない。そこはベテラン一朝師。笑いの取れる噺を十分でまとめて高座を下りる。

 ペペ桜井のギター漫談。この人の漫談はいつも同じようでいて、ちょっと観ないでいると、どんどん新ネタが増えている。刑務所慰問ネタから、刑務所用童謡メドレーがおかしい。♪ぞうさん、ぞうさん、お鼻が長いのね。そーよ刑期もなーがいのよー

 乱暴者というキャラで打っている橘家文左衛門だ。『文七元結』の長兵衛のキャラがやはり、すさんだ乱暴者という設定にしてある。佐野槌にいる娘のお久を預かるという女将に、捨て台詞を言わずにはいられない。「金なんか早く返してしまって、こんなとこクソくらえだ!」 それでいて、吾妻橋で身投げをしようとしている文七に五十両を恵んでやろうという場面では、躊躇をみせながらも、五十両を見つめながら「(オレには)授からなかったのか」と、空を仰いで呟いてみせるあたり、案外、運命論者なのかもしれない。文左衛門が高座に上がったのが20時。終演20時54分。54分の熱演だった。

 退院後、久しぶりに入った寄席定席。こうやってフラツと入って色物と長講を楽しむのって、たまらなく楽しい。

1月31日記

静かなお喋り 1月30日

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