2009年10月10日 ハイバイ『て』(東京芸術劇場 小ホール1) 対面式の客席の前に舞台がある。開演時間になると役者が舞台に上がり、女装した菅原永二(猫のホテル)が開演前の注意事項を伝えて、「では、始めます」と言ってから芝居が始まった。 お葬式の場面。ある家族の祖母の葬式である。キリスト教の葬儀。神父さんが葬儀を執り行っているが、それがなんだか笑いを誘う。これがいわばこの芝居のテーマ。深刻な中にも物事には常に笑いが取り巻いているもの。 そこから、場面は祖母の生前、家族が久しぶりに実家に揃う場面になる。最初のうちは何をやりたいのか、何が起こっているのかよくわからなかったのだが、だんだんに状況がわかってくる。 この家族は、祖母以外には父(猪俣俊明)、母(菅谷永二)、その四人の子供という家族構成。父は過去に家庭内暴力を起こしていたらしく、かなり問題のありそうな人物。子供との間にかなりの溝があり、妻との間にも離婚の危機がある。兄弟同士もかなり険悪な関係があったりする。ようするに、かなりドロドロの人間関係が存在する一家なのだ。それが時に笑いを伴って語られていく。 最後の場面は祖母の火葬。ここで一気に芝居がクライマックスに達する。家族のいがみ合いと、そのなんとも滑稽な様がブラックユーモアで爆発する。そしてあっけらかんとしたラスト。 こんなこじれてしまっている家族は実際にはそういないだろうけれど、多かれ少なかれ、どこの家庭にも、底の方ではそんなこともあるのだろうなあと思わせられた。 2009年10月12日記 このコーナーの表紙に戻る |