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客席放浪記

2011年10月31日東洋館スペシャル寄席 音ネタ特集

 入場したのが12時10分を少し回ったところ。一番手の習志野ごんべえの出番はもう終わってしまっていて、指揮者形態模写の好田タクトが上がっていた。クラシツク音楽には詳しく無いし、オーケストラ指揮者の特徴も知っているわけではないのだが、朝比奈隆の指揮など、おそらく誇張はあるのだろうが、おそらくそうなんだろうなあと微笑みが浮かんで来てしまう。

 早川きょーじゅは、ヴァイオリンによる形態模写。何といっても面白かったのは、『おしゃべりバイオリンによる結婚披露宴祝辞』。祝辞をヴァイオリンでというアイデアが素晴らしい。言葉をヴァイオリンで模写するのはもちろん、そこにいろいろな効果音を入れていく。ヴァイオリンひとつで、これだけ楽しませてくれるのは得した気分。

 ハーモニカをハーモニカホルダーに挟んで手を使わずに、どんな曲でも吹いてしまうのが源氏太郎。最後はハーモニカを吹きながら、ギターを弾き、両足にカスタネットをつけて鳴らし、なぜかギターのヘッドで皿回し・・・って、そんなにしなくてもいいのに。

 藤本芝裕の三味線漫談。寄席に出ている三味線漫談や音曲とは一味違う。「『トイレの神様』って、いいんだけど長いのよ。10分くらいある。それで1分にまとめてみました」と1分版『トイレの神様』。さらには30秒版『大きな古時計』。三味線でベンチャーズ(ウォーク・ドント・ラン〜パイプライン)など。

 ポンちゃん人形の副話術。ポンちゃんとおばあちゃんの人形との掛け合い。音ネタは・・・あまり見当たらず。

 アンクルベイビーのムード歌謡漫才。最小編成のボーイズものか。ギターを持った男と、歌専門の男のコンビ。漫才の形をとっているが、音楽ネタで勝負している。歌のレパートリーは古め。

 とにかく東洋館というところは、唖然とする芸人さんが登場するので来るたびに驚かされるのだが、次のタブレット純には度肝を抜かれた。ギターを持って出てきた姿は、美人女性歌手・・・と思いきやオカマだった。「マヒナスターズで歌を歌っていたことがあるんです。私の担当は低音部なんですけど」って、えーーーーーーっ!! 低音が得意ということでフランク永井の曲を何曲か聴かせてくれたあと、突然キーを上げて三善英史の『雨』。なんかこの人は、特別に笑わせるというようなこともあまりやらないのだが、なんというか存在しているそのこと、そのものが面白い。

 めおと楽団ジキジキは、みんなよく知っている歌を歌いながら、お客さん参加で盛り上げて、タブレット純を受けて、JAの歌。
♪のうきょおー ないと こまるー (東京ナイトクラブの節で)
 そして、『ここどこタンゴ』と『浦和』。このネタは関東でやると受ける。

 仲入り後はケチン・ダ・コチンのコントから。ホストクラブのコントと、法事のコント。歌とギターが上手い新人ホスト、お経をギターの弾き語りでやる坊さん。面白ーい!!

 次の漫才の334には、ややがっかりした。一応この日は音ネタというシバリがあるはずだ。普通に漫才をやられては趣旨に反するだろう。気持ちのいい漫才だっただけに、無理にでも音楽に関するネタをやって欲しかった。

 BBゴロー。30秒でやる『勝手にしやがれ』でお客さんを掴み、お得意の稲川淳二の物真似へ。ギターを持ってのネタ『ひょっこり稲川淳二』はさすが。

 マキタスポーツはオフィス北野の芸人。いわば、たけし軍団のひとりだ。この人のネタは見たことが無かったのだが、これは全ての人に受けるわけではないが、かなり面白かった。ギターはエリック・クラプトンの『ティアーズ・イン・ヘブン』を弾きながら、谷村新司の『昴』を歌う。同じくエリック・クラプトンの『レイラ』を弾きながら、北島三郎の『与作』を歌う。これはわかる人にはわかる、目から鱗ネタ。サザン・オールスターズの『いとしのエリー』を弾きながら、長淵剛の『乾杯』を歌うというのもやってくれた。

 ヒザになる太平洋は曲芸。寄席に出ている太神楽の芸人と違って、不安定ではあるがエネルギッシュで一生懸命なところが魅力。独楽、けん玉、笠廻し、シガーボックス。そして最後は荒業、波乗りお魚ジャグリング。

 トリが林家ペー。「水戸黄門の里見浩太郎は野球が上手い。ピッチャーをやらせると、内角低めの玉はまず打てない。インロー(印籠)って言って」 「私はよくカメラを持ち歩いて写真を撮るんですが、林家正蔵の写真を撮ろうとしたら、だめだって言われたんですよ。肖像(正蔵)権の侵害だって」 おいおい音ネタはどうしたんだと思っていたら、ギターを持ってきた。「石原裕次郎の『夜霧よ今夜もありがとう』のB面って知ってます? 最近は渡哲也も歌っているんですがね、『喜びのバラード』って曲なんですが、御存知ですか? ♪喜びの酒 松竹梅」 まっ、いいか。

 終演後、エレベーターの方へ向かうと、ジキジキのカオルコさんが、お客さんをエレベーターに誘導している。声をかけて、しばし話していると、荷物を自動車に運んだキヨシさんがエレベーターで上がって来た。私の店を閉めた事、私の病気のことなどを正直に話した。今年の春に、うちの音楽会に出て貰ったときには、今の状態になるとは夢にも思わなかった。

 でも、ジキジキも見られたし、マキタスポーツのクラプトンネタは面白かったし、太平洋の曲芸には目を見張ったし、タブレット純には度肝を抜かれたし、楽しい企画だったなあ。

10月31日記

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