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2010年7月24日三遊亭遊雀勉強会 文月会(お江戸日本橋亭)

 まずは恒例、三遊亭遊雀のご挨拶。三遊亭遊三がホールインワンをやったとかで、ゴルフの話から。「馬風師匠が55歳のときだったかなあ、ゴルフを始めたんですよ。そのとき専属のキャディとして私が付きまして、師匠が打つと私が走って行って、いい位置に新しいボールを置く、『ここですよー』と合図するの。それでもグリーンに乗ってからもホールの近くで何回も叩く。本人は1ホールで何回叩いたのか自分では憶えてない。それで私が数えているんですがね。『このホール何回叩いた?』 『24です』 『バカー! 5を越えたら全部5だー!』 そしたら一緒に回っている師匠たちも『そのとおりだ!』

 この会のゲストは芸協の主に二ツ目ということが多いのだが、この日は落語協会の二ツ目春風亭一之輔。「5歳と2歳の男の子がいるんですがね、私が家で稽古したりしてるでしょ。『かんかんのう踊らせるぞー』なんて言ったあと黙ってると、『(その先)やらないの』なんてぬかす。『その先憶えてないの』って言うと、『憶えろ』」 ネタは『青菜』だ。この噺、前半は仕込み部分であまり笑いが少ないのだが、一之輔はのっけから飛ばす。ギャグをガンガン入れ込む。新鮮だなあと思っているうちに後半へ。タガメ女房の憎々しい顔と声の演出で爆笑の世界へ。「『植木屋さん、そのグラスでおあがり』 『だから植木屋はお前だろ。おれは建具屋! グラスなんかないじゃないか、これはシャケ缶の空き缶じゃねえか。口切りそうだよ!』」

 三遊亭遊雀出てくるなり、「いやあー、自由な『青菜』だなあ。一朝一門とは思えない」 ふはははは。一席目は『花瓶』。古道具屋で使い古したし瓶を花瓶と間違えて50両で買ってしまった田舎侍。このし瓶に菊の花を活ける手つきが様になっている。田舎侍といえども風流心のある
『花瓶』のお侍。そして、これがとんだ代物と知るや、古道具屋に駆け戻る。それでいてこの不届きな古道具屋を許してしまうのは、案外江戸っ子気質に影響されていたのかも。

 三遊亭遊雀二席目は『くしゃみ講釈』。「寄席で、コショウが入るというのは、お客さんに邪魔をされるという符牒なんですが、私も何回かコショウが入ったことあります。浅草演芸ホールなんか多いですが。二階席で塩豆を食べながらビールを飲んでいたお客さんがいたんですね。落語やってると塩豆を投げつけるんですよ。高座に塩豆がコロコロと転がる。そうすると『惜しい』なんて声がする。それからは塩豆避けながらでした。また、『初天神』やってたとき、『ねえ、だんご買っておくれよー』と子供がぐずる。すると客席から『買ってやれ! だんご!』 それで私も『ああ言ってるんだから、買ってやる』」 『くしゃみ講釈』は遊雀に向いている噺のひとつだと思う。与太郎級の主人公と、周りの者の会話ともなると一気に盛り上がりをみせる。乾物屋で何を買いに来たのか忘れてしまった男が「医者に言われたことがあります。『あなた少し望遠鏡のケがある』って」 このあとの、のぞきからくりを一段語ってしまうところのおかしさといったら! 乾物屋の主人も野次馬の整理にたいへんだ。「前の方座ってください。後ろのお客さーん、見えるでしょ。押さないで!」

 ハネてから外にいた遊雀師匠に挨拶。「昔よく演っていたネタなんですけどね、変えようと思ってもやっぱり昔通りになっちゃう」 いやいや昔のままで結構。十分面白いんだもの。

7月29日記

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