April.8,2001 避妊手術

        チェリーを飼うことに決めて、最初にしたのは避妊手術だった。これまで飼ったことがある3匹の猫は、全てオス。メスの猫を飼うという経験はしたことがなかった。

        猫を捨てるなどという卑劣な行為をする奴は、自分のところのメス猫が産んでしまった子猫をどうしたらいいか分らなくなってしまっているんだろう。自分のところで飼いきれず、貰ってくれる人もみつけられず、かといって殺すこともできない。そこで、誰か飼ってくれる人が現れるのを期待して捨て猫にする。卑怯だよ、そんな行為は! ウチで飼った猫は、1匹目は貰いもの、あとは全て捨て猫が可哀想で飼ってやったんだぜ! 当然、良血の血統書猫なんかじゃない。ただの駄猫だ。

        ウチに迷い込んできてから一週間後、私はチェリーに避妊手術をしてもらう為に動物病院に連れていった。いかになんだって、猫は一匹でけっこう。子供を産まれたりしたらかなわない。それが、メス猫を飼うことの最低のルールだと思ったからだ。一週間ウチにいただけで、チェリーはすっかりウチとウチの家族に慣れてしまっていた。また籠に入れられ運ばれたチェリーは、どうなることかとオドオドしていた。

        先生に手術を頼んで、いったんウチに帰る。翌日、病院に顔を出すと先生は「手術は終わりましたよ」と包帯に包まれたチェリーを檻から出してきた。チェリーは私の顔を見ると鼻にかかった声で「クーン」と鳴いた。そして私の身体に顔を擦りつけてくる。「まったく甘ったれた声を出す子だねえ」と先生。「何か食べましたか?」と私。チェリーは食が細い猫だった。ウチに来たばかりのころは、鰹節をあげても、キャットフードをあげてもほとんど食べようとしなかった。「うん、よく食べるよ。刺身が好きだね。マグロの刺身をペロッと食べた」。そうかあ、刺身が好きなんだ。でも猫に刺身なんて贅沢はさせられんなあ。「もう帰ってもいいけれど、包帯はまだ取らないでね」 「そうですか、じゃあ包帯が取れるようになるまで、もう少し置いておいてください」

        数日後、チェリーを引き取りに行った。お腹の毛は剃られていて無惨だったが、そのうちにまた生えてきた。こうして、チェリーは我家の一員となった。どうも本人は、飼われているというよりも飼われてやっているという意識が強いようだったのだが・・・。

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