July.27,2001 ありがとうございました

        本日、明治座千秋楽。今月は、竹下景子座長公演『花は紅、染千代一座』でした。愛川欽也様、いまむらいずみ様、金田龍之介様、佐藤正宏様、東てる美様他の皆様から出前の注文をいただき、楽屋までお届いたしました。ありがとうございました。


July.20,2001 伊計ビーチ

        沖縄そばの昼食を済ませて、さて、午後はどうしようとガイドブックを再びパラパラとめくる。両親はあいかわらず歩き回るのはイヤで、このまま観光タクシーでドライブをしながら、きれいな海を見たいと言う。何処か砂浜の海岸のようなところに案内できないものか。ページをめくる手が、ふと[伊計ビーチ]のところで止まった。沖縄本当の中部に位置するこの海岸は写真で見ると本当にきれいな感じがする。運転手さんに、「それじゃあ、つぎはこの海岸に連れていってください」とお願いする。「かしこまりました」 こうしてタクシーは一路、伊計ビーチへ。

        通りすぎる車窓の風景をボンヤリと眺めていると、やっぱり建物がもうすでに日本らしくないのに気がつく。昔の瓦屋根の住宅はもちろん本土にはない独特な建築物なのだが、新しく建てられた家がことごとく本土ではみかけない建て方をされている。一階部分を駐車場にしている家が多いのは、電車などがない沖縄としてはクルマを交通手段とせざるをえないので当然のことだろう。しかし、何かが確実に本土とは違う。そう、ここで見られる建築様式は、日本のものというよりは、東南アジア、フィリピンやタイなどでみかける家並みに似ているのだ。無駄な飾りがなく、どっしりと四角張っていて、いかにも頑丈そう。やはり、ここはもう日本というよりも、東南アジアに近いのかも・・・。

        クルマで走っていると、をよく見かける。別に寺があって墓場にズラリと墓が並んでいるというわけでもなく、道端に突然、墓があったりする。それがまた本土のものとは大違い。普通の墓石が立っているというのではなく、なんだか歴史の教科書で見たような、古代の前方後円墳のミニチュアのような、地面に横に長い墓なのである。「沖縄本島ではもう、ほとんど火葬になりましたがね、小さな島の方ではまだ火葬場が出来てなくて、いまだに土葬のところも多いんですよ」と運転手さん。

        伊計ビーチに近づくあたりで、[ハブに注意]の立札を見かける。「昼間はまず、ハブは見かけませんがね、夜暗くなると草叢にいるんですよ。噛まれたらタイヘン」 うーん、マングースにハブ。沖縄は野生の世界だなあ。

        伊計ビーチには、海中道路なるところを通って行く。しかし海中道路といっても、別に海底トンネルを通るわけではない。平安座島、宮城島、そして伊計島へと連なる島へ道路を作ってしまったというわけ。両側が海という道路をクルマは走る。赤い伊計大橋を渡る。「この橋から下の海に飛び込むのが若い人達の流行りなんですよ」と運転手さん。けっこう高さがあるよ、この橋。橋を渡ると、ほどなく伊計ビーチに到着。ここは、一応プライペート・ビーチのようになっていて、入口でひとり400円也の料金を払うことになる。

        真っ白な砂。コバルトブルーの透き通った海。これは確かにいいビーチだ。ボートや浮き輪も各種レンタルで使えるし、ガラスボートなどで沖まで連れていってくれる設備もある。スキューバダイビングやシュノーケリングもあり。こりゃあ、1日いても飽きないなあ。ビーチではバーベキューの施設もあって、みんな缶ビールを飲みながら盛大に肉や野菜を焼いている。パラソルを立てて昼寝をしているカップル。いいなあ。いつかまた、ここへノンビリと遊びに来たいものだ。

        両親も、きれいな海をボンヤリと眺めていた。とうさん、かあさん、こんなんで良かったのかなあ。気に入ってくれたのならばいいのだけど・・・。金婚式、おめでとう!


July.7,2001 沖縄観光タクシー

        両親の金婚式を祝う目的で沖縄までやってきたものの、さて、何処を観光したらばいいのだろうか? 両親に訊いてみたらば、とにかく歩くのはイヤだという。それでは、観光タクシーでも雇って、何ヶ所か回ってもらおう。「何を見たいの?」と訊くと、名所、旧跡にはまったく興味がないという。特に戦争の傷跡があるようなところはイヤだという。「じゃあ、どんな所に行きたいわけ?」とさらに訊きなおすと、きれいな海が見える所だという。

        1時間4000円だというタクシーを手配してもらい、午前9時、ホテル前を出発。「どこを案内しましょう」という運転手さんに、ガイドブックの写真がきれいだった[残波(ざんぱ)岬]に取りあえず連れていってくれと頼む。ゴールデン・ウイーク中ということもあって、北へ向かう道路は混んでいると聞いていたが、さすがに地元の運転手さん、裏の道を知っているらしくスイスイと走っていく。レンタカーを借りて回るという手もあったのだが、やっぱり道に詳しい人は違う。それと、車を走らせながら、いろいろと解説をしてくれるのが楽しい。

        沖縄はアメリカ軍の基地の島だというが、こうして走っていると米軍施設でいっぱいだ。「いいところは、全部米軍が使っています。わたしら沖縄県民は、その隙間を使って生活しているようなものですよ」と運転手さん。「確かにいろいろ問題があって、米軍基地なんてない方がいいんでしょうが、この基地で働いている沖縄の人間もたくさんいるわけです。さらには、アメリカ人相手の飲み屋もたくさんあるわけです。今、米軍に出て行かれたら大量の失業者が出ることになる。痛し痒しでしてね。ほら、隣に止まったタクシー、あれは米軍基地に入る許可をもらったタクシーです。一般のタクシーは基地の中に入れません。あの許可があると、米軍との契約で月々、利用料金以外に、ある程度お金が貰えるんですよ」

        タクシーは、あっちへ曲がりこっちへ曲がり、裏の道をたどる。小高い丘のようなところに出た。周りは一面のサトウキビ畑。「[象の檻]って話題になったことがあるでしょ?」と運転手さんに言われたが、はて、象の檻って何だ? 「米軍の通信設備なんですがね、一時期、問題になって、このへんはマスコミの取材でごった返していたものですよ。ほら、もうすぐ見えてきますよ」。その光景を目にして、「あっ!」と思い出した。土地の一部が沖縄の人もので、それを米軍が借りていて、中に入れろ入れないのと騒動があったではないか。もう忘れてしまっていた。もちろんガイドブックなんかには載っていないから、普通の人は行くこともない。どうやら運転手さん、サービスで回ってくれたらしい。写真を撮り忘れちゃったので、よそのホームページを見てください。思い出すはずだから。

        残波岬というのは、ただ灯台がひとつポツンと立っているだけで、あとはなーんにもない海岸だった。なーんにもないから、空が広い。360度、全部真っ青な空。気持ちいい。観光客の姿もひとりも見ない。「ここは、観光地じゃありませんからね。土地の人だってめったにこない」。ハンバーガーやアイスクリームを売るバンが一台止まっているだけ。アイスクリームを一つ買って食べる。それにしても何もない。誰もいない。おかしなことに釣り人の姿すらないのだ。本土では海へ行けばどこにでも釣りをしている人がいる。それが、一人もいないのだ。これは、沖縄の何処へいっても同じらしくて、釣りをやる人が少ないようなのだ。

        釣り人だけではない。漁船の姿もほとんど見ない。市場には、毎日魚があがっているのだから、漁船が出ていないわけはないのだが・・・。いや、漁船ばかりではない。船もあまり見かけないのはどういうことだ?

        今度は、もう少し観光地らしいところで、きれいな海の見えるところにやってもらう。沖縄本島をさらに北へ。この辺まで来るともうあまり裏道は少なく、渋滞に巻き込まれる。ただし、本土のことを考えるとカワイイもので、ある程度のスピードでクルマは流れている。本土ではこの程度は渋滞とは言わない。

        海岸線を走ると、ちょうど引き潮なのであろう、浜辺がかなり露出している。ガイドブックでは絶対に見られない風景だ。ガイドブックに使われるのは必ず満ち潮。いっぱいの青い海しか載せない。なんだかトリックに引っかかったような気分だ。

        [万座毛(まんざもう)]は、よく知られた海岸。[象さんの岩]で有名だ。ここはもう、モロに観光地。駐車場はクルマでいっぱい。土産物屋が軒を連ねており、呼びこみの声もうるさいほどだ。そこから、[象さんの岩]が見えるところまで遊歩道を歩く。確かに象さんに似た岩が見える。でもまあ、それだけのこと。のんびりとコバルトブルーに彩られた東シナ海を眺めていれば、そっちの方が気持ちがいい。沖縄の民族衣装を着た女性と写真を撮らないかというセールスをかいくぐりタクシーに戻る。

        クルマをもと来た方向に戻る。反対方向はさすがに空いている。サイクリングをやっている人を見かける。そういえば、朝からタクシーの外の風景を眺めているというのに、自転車に乗っている人の姿をほとんど見ない。運転手さんに訊いてみると、沖縄はこれでけっこうアップダウンがあって自転車は案外不便だからだろうということだった。待てよ、自転車も見ないけれども、人の姿もあまり見ない。ゴールデン・ウィークのせいかなあ。那覇だって、国際通り以外は人の姿がまばらだった。

        [恩納(おんな)岳]が見える。「こっちから見るときれいな山でしょ。ところがね、反対側は丸坊主なんですよ。なぜかというと米軍の実弾訓練でボロボロにされちゃってるんです」。う〜ん、軍事優先かあ。こうやって、観光しながらも沖縄の現実が少しずつ見えてくる。やっぱり観光タクシーというのもいいものだ。

        [ビオスの丘]にやってもらう。ここはいわば植物園。ランを中心にして、様々な花が咲いている。ここでも両親は歩き回るのはイヤだというので、即、湖水鑑賞舟乗り場へ。なんだか、デズニーランドのジャングルクルーズみたい。約1Km、25分かけて人口池を回る。ところどころで舟を止め、若い船頭さん(?)が説明をしてくれる。その船頭さんによって話術の巧みな人と、そうでない人がいるようで、舟によっては常に爆笑が起こっているのや、ただ静かに走っているのもいる。私たちの乗った舟は適度に笑いを交えてくれていた。

        ランというのは、鉢植えでしか見たことが無かったので、こういうふうに、木に寄生しているものだというのは初めて知った。「ランはランでも女性の体にくっついているのはランジェリー」。しょーもない駄洒落をかます船頭さん。はいはい。

        [ビオスの丘]を出てタクシーに戻る。うっそうとした熱帯植物の中を走っていると、突然マングースが道を横切った。ハブが大量発生してしまったのでマングースを放したら、今度はマングースが増えすぎちゃったとか。うまくいかないものですね。

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