March.28,2002 ありがとうございました

        本日、明治座千秋楽。今月は西郷輝彦座長公演『風の砦』(原田康子原作)でした。西郷輝彦様、杜けあき様、浜畑賢吉様、青山良彦様、鈴木ほのか様、渡辺典子様、川辺久造様、西田良様、田口守様、岡部征純様、植松鉄夫他の皆様より出前の注文をいただき、楽屋までお届けさせていただきました。どうもありがとうございました。


March.26,2002 迷惑携帯電話

        携帯電話を持つようになって2年たった。最初は、こんなものいらないと思っていたのだが、やっぱり現代人として必要な道具ではあるなと思うようになってきた。ただ、私はめったに使うことはない。特に自分からかけることは、よっぽどのことでない限りないので、毎月600円までの通話料金がセットになった契約で一度もオーバーになったことがない。

        最近は電車の車内や公共の場所で、携帯電話の使用は迷惑になるからご遠慮くださいとしているところも多いが、私はそういうところで使うことはまずないし、また、他人が使っていてもあまり気にならない方だ。止む終えない理由で使わなければならないことはある。もっとも最近の若い人たちは、携帯電話で平気で世間話をしているが、それももう、どうでもいい事だという気がする。勝手にしてくれ。私生活を人前で話しているあの人たちこそ、よくぞ恥ずかしくないなと思う程度。

        それが先日、どうにも不快を覚えることがあった。買い物がてら映画でも見ようと繁華街に出た。私の買い物は本を一冊捜すことだったのだが、目的の本はあっさりと見つかってしまった。見たい映画の次の上映時刻までまだ1時間ある。外は雨。歩き回るのはイヤだ。私はコーヒー・ショップに入り、買ったばかりの本を読んで時間を潰そうと思った。カウンターでコーヒーを一杯受け取り、2階に上がった。窓際のカウンター席に座り、本を読んだり、窓の外から見える雨の歩道を眺めていたりしていた。店内はわりと混雑していた。そんなとき誰かの携帯電話の着メロが鳴り響いた。

        私の後ろの方の席の若い男が電話に出た。「もしもし? 誰? ああ、何?」。その声が大きいのだ。数人連れで来ていておしゃべりしているお客さんも多いのだが、それらの声を圧倒して私の耳に飛び込んでくる。「マジで? 本当にマジでその日かよ! その日はねえ、前日にウチアゲがあって三次会まで行くから、ちょっとその日は、寝てるだろうなあ。だからパスってことにしてくれる? いやほんとマジでさ」 ほう、ウチアゲって、芸能関係の人なのかな? とチラリ思いながら、また読みかけの本に戻ろうとしたのだが、この男の声があまりに大きくて気になって本の世界に戻れない。それこそ店内全体に響き渡るのだ。

        そのうちに話は違う話題になったらしい。「まあ、お互いの親睦をはかるということでさ、一泊旅行を考えているんだけど、その話乗る? 安い宿見つけたんだよ、マジで。一泊一万円しないんだ。それで夕食は食べ放題。いやほんとだって! マジでだぜ!」 どうも私はこの[マジ]っていう言葉が好きになれないのだが、今の若い人たちはこの言葉を連発している。そして彼の話はいつまでも続いていく。「で、旅館のある○○○まで電車賃いくらかかるか知ってる? ・・・・・・えっ!? マジで? マジでそんなにするの?」 しばらくしてようやく通話が終わった。なんだかもう読書はどうでもよくなった。トイレに行って一息いれるついでに、その男の顔をじっくり見てやろうと席を立った。

        私はびっくりしてしまった。今まで通話していた男には、連れの男がいたのである。今度はその男と話している。ということは、あの長電話の最中に、連れの男を待たせて会話していたということになる。私にはこの神経が信じられないのである。先日、[いつもここから]というお笑いコンビの『悲しいとき』というネタの中で、「悲しいときー。ウチに遊びにきた友達が漫画本ばかり読んでいたときー」というのがあったが、まさにそういうこと。連れの男に失礼だと感じないのだろうか? 私だったらマナーとして、かけて来た相手に、「今、手が離せないから、後でこちらからかけ直すから」と電話を切る。あるいは急ぎの用件だったら、場を離れて手短に会話をする。二人連れの一方の相手をほったらかして電話をしているという事態はちょっと異常だ。そして不思議なことにこの男、電話でなく隣の連れと会話をしている時は、電話の時のような大声ではないのだ。

        トイレへ行って気分転換をして、席に戻ってまた本を読み出したら、また例の男に電話がかかってきた。「えっ!? ああ、オレ。今、何やってんの? オレは今コーヒー飲んでだぺってるの。お前、こっち来ない? マジで。えっ、マジで! そうかあ。じゃあしょーがないか。お前さあ、中学のときの○○って憶えてる? そうそう、あいつ。あいつさあ、今オレと同じ大学行ってるの。いや、ほんと、マジで。キャンパスでバッタリ逢ってさ。マジだって・・・。お互い同じ授業とっててさ。明日試験なんだ・・・」 なっ、なんだ、学生かよ。勉強しようね、学生さん。


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