March.27,2004 ありがとうございます

        本日、明治座千秋楽。今月は藤田まこと座長公演『剣客商売−深川十万坪−』(原作・池波正太郎)でした。藤田まこと様、小林綾子様、藤田弓子様、三沢あけみ様、海峡ひろき様、亀石征一郎様、田中綾子様、高松あい様、吉田哲子様他の皆様から注文をいただき楽屋まで出前いたしました。ありがとうございます。


March.14,2003 マサルによる、歯茎の膿、摘出手術

        虫歯の治療にマサルのところに通ううちに、余罪が見つかってしまった。上の前歯の歯茎に空洞があり、そこに膿が溜まっているというのである。

        この膿の存在は、数年前に初めてマサルから治療を受けたときに知らされていた事でもあった。そのときは、薬を歯から注入することで治るだろうと思われていて、実際、薬を注入していたのだ。ところが、膿が予想以上に大きくて薬の力では治らなかったらしい。

        マサルは溜息をつきながら(患者の前で溜息つくなよ)、「あと三種類の薬を順次使ってみます。それで治らなかったら、手術ということになります。具代的には、メスで歯茎を切開して、膿を取り出すんですが・・・、あっ、あくまでもこれは最後の手段ですよ。薬で治ってしまう事も多いんですから・・・」と言った。手術!? 切開して膿を出す!?

        三種類の薬は段階的に強い薬となり、歯茎に向かって注入されたが、あまり効果はなかったらしい。一番強い薬を一週間ほど試してみたが変化があまり見られなかった。マサルは舌打ちした。「チェッ、ダメかあ」。おいおい、医師が舌打ちするなよー(笑)。「仕方ありません。手術の覚悟をしていただきたいのですが・・・」 ちょっと引いてしまう私。それを見て、すかさずフォローを入れるマサル。「あっ、別にこれは珍しい症状ではないんですよ。実はボクもやったことあるの。歯科医師としては恥ずかしいんですがね」 うーん、これってウソなんじゃないかあ。私はいままで、歯茎の中の膿を摘出したなんて話、聞いたことない。ましてや、マサルもやったなんて信じられない。

        「手術は簡単です。歯茎をメスで切って、膿を取り出して、あとを縫うだけ。30分で終わります。ボクはこれ、得意だから安心してください。他の人よりも絶対に早いから」 一生懸命フォローするマサルの顔を見て、「それじゃあお願いします」と答えると、「そうですね、それじゃあやりましょう」と言ったところまではよかった。

        手術が決まった途端にマサルはこう言った。「手術をしたあと、しばらく歯茎が腫れ上がっちゃいますよお」 グッと引いてしまう私。「それと、二三日は手術のあとが痛いですからね」 さらに引いてしまう私。おいおい、手術の覚悟を決めた患者を脅すなよ(笑)。「では、手術はいつにしましょう?」 ええっ? こっちで決めるのかあ。30分もかかる手術ともなると、マサルの都合のいいときの方がよさそうだ。比較的、患者さんの少ない土曜日がいいだろうと思った。「あっ、手術の翌日に消毒に一度来ていただきたいので、それなら金曜の方がいいですね」 嫌なことは早く終わらせた方がいい。今週の金曜にしましょうかと言うと、「今週の金曜は手が足りないから、来週の金曜ではどうでしょう」と答えが返ってきた。

        手術当日。昼の仕事を片付け、マサルのところへ。ドアを押して中に入る。いつも数人の患者さんが待合室にいるのに、この日に限って誰もいない。シーンとしている。マサルが顔を出して、「あっ、こんにちは」と軽く声をかけてくる。私は気持ちを落ち着けるために、待合室の雑誌をめくるが文字が頭に入ってこない。そりゃあそうだ、数分後には手術なのだ。私はいままでの人生で外科手術といわれるものは35年前の顔面骨折の手術を経験したのが最後。それ以来、緑内障のレーザー手術を3年前にしたことがあるだけ。気持ちは高ぶっていた。簡単な手術、慣れている、という割には、治療室で緊張が走っているのが感じられる。マサルが助手の女医さんに、「それではこれから、なんとかかんとかの手術をします。一緒にやりましょう。よく見ていてください」なんて言っている言葉が耳に入る。おいおい、この手術って、本当は珍しいんじゃないのかい?

        案内された診察台に座る。「何か質問はありますか?」 ないない。もう何でもやってよという気になる。歯茎に麻酔が打たれる。マサルと雑談を交わすうちに、五分間経過。いよいよ手術が始まる。それにしても私以外に患者が誰もやってこない。マサルのところにしては珍しい。いつも患者さんは何人か待合室にいるのに、シーンとしている。このとき私は気がついた。マサルが翌週にしてくれと言ったのは、私の手術の時間に患者さんを来させないように調整するためだったのではないかと。

        「それでは、少しずつやっていきましょう」と、診察台が倒された。普通の治療のような診察台を斜め位置に固定するのではなく、床に対して水平の、まったくのベッドの形にして手術は始まった。メスが入るのがわかる。助手の人が吸引器で血や膿を吸いだしている。マサルは先の尖った器具でガリガリと歯茎を引っかいたり、ピンセットや鋏で何やらしているのがわかる。ドリルを使っているのは、悪くなった骨を削っているのだろう。「もう少しですよう」と言うのだが、手術は一向に終わらない。結構たいへんな手術になっているらしい。

        マサルの額に汗が浮かんでいるのがわかる。どうやら手術は終了したらしく、切開したあとを縫っている。5針ほど縫った。ふうー。終了だあ。かなり疲れたが、マサルもさぞや疲れたろう。

        「(手術)やってよかったですよ。思ったよりも膿が多かったですから」 どうやら、相当長年に渡って膿が私の歯茎の中に溜まっていたらしい。取り出した膿の袋というのを見せてくれる。なにやらブヨブヨとした赤い物体だった。

        受付の会計で治療費を払う。なんと請求金額6000円なんぼ。あれだけの手術をして6000円は格安なんじゃない? 今回のことは、本当にマサルに感謝。いつもバカにしたような文章書いてごめんね。マサルって名医だと、自信を持って書いておこう!!

        夕飯が喉を通らない。夕食がハッシュドビーフでよかった。ほとんど噛まずに飲み込む。食後、痛み止めの薬を飲んで仕事。1時間ほどで効いてくる。そのあと仕事。店も忙しく痛さも忘れていたのかもしれない。その夜はアルコールは飲んではいけないと言われたので、そのまま布団に入る。アルコールを口にしなくても、すぐさま眠りに落ちてしまった。相当疲れていたのだろう。朝までぐっすり眠った。目が覚めても、またもや睡魔に襲われて沈没。

        土曜のお昼ごろに、またマサルのところへ行く。「うまくいきましたね。二三日は激しい運動などしないようにしてください」 家に帰ったら、また眠くなってきた。安静が一番らしい。私はまた眠りに落ちていった。


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