April.26,2004 ありがとうございます
本日明治座千秋楽。今月は松井誠座長公演『雪之丞変化』でした。松井誠様、木村理恵様、竹内春樹様、谷崎弘一様他の皆様から出前のご注文をいただき、楽屋までお届けさせていただきました。ありがとうございます。
April.7,2004 なぜ私は食事中に移動させられたのか?
この数年で築地の場外市場に、続々と寿司屋がオープンした。築地市場寿司屋戦争なんて報じられたくらい寿司屋が多くなった。これらの寿司屋はどちかというと、買出しにやってきた業者向けではなく、観光客を相手にしているようなところがある。そのくらい、場外市場にはいかにも観光客という人が歩いている。外国人の数も多い。そういった人相手の寿司屋が出来てもおかしくないし、結構なことだと思う。
私は仕事がら、10日に一度くらいのペースではあるが築地に行く。仕事で使う材料などは、ほとんど業者が届けてくれるのだが、どうしてもこちらから買いに行かなくては手に入らないものもあるし、プロ用の調理器具などは、やはり築地まで行かなくては買えないものが多い。朝の早い時間に行って買い物をすませるのだが、ついでに朝飯を食べる。これが築地に行く楽しみでもあるのだが。
その日、私はそんな寿司屋のひとつで食事をすることにした。寿司屋というよりは寿司丼屋。鉄火丼とかネギトロ丼とかイクラ丼とか、いわゆる寿司飯を丼に入れ上に刺身を乗せて食べさせてくれる店だ。さらに言うなら、店というよりは屋台。道路側に椅子を並べただけの小さな店舗である。その店で食事をするのは初めてだった。
私は、六脚並んでいる椅子の右から2番目の椅子に座った。理由はこれといってない。ちょうど板前さんの真正面の位置だから、注文をしやすいと思っただけだと思う。お客さんは私以外にはもうひとり。一番左の椅子に座っているだけ。私はネギトロ丼を注文した。返事も何もない。わかっているのだろうと思い本を読んでいると、しばらくしてネギトロ丼は出てきた。小皿に醤油を入れ、ワサビを溶かし、ネギトロ丼の上にかけて食べ始めた。
さて、現在このカウンターだけの店の六脚の椅子の並びをもう一度書いておくと、一番左に先客。右から2番目の椅子に私という状態である。そこへ私の右側に座る男がいた。男は店の人にやはりネギトロ丼を注文した。それは自体はおかしくない。「?」と思ったのは、「ふたつ」と言ったことである。「おやっ?」と思って右を見ると二人連れの男ではないか。すると店主は、私に向かって「お客さん、ひとつ隣に詰めてくれませんか?」と言うのである。どういうことなのであろうか。私の左側には席が三つも空いているのである。二人連れの男は当然として並んで座れる私の左側に座るのが成り行きだと思うのだが、おかしいだろうか? またこの場合、店主はこのふたりの客に、私の左側に並んで座ってくれと言えば済むだけの話ではないか。人間、食べている途中で場所を変われと言われるのは結構屈辱的なことだ。口をモゴモゴさせながら、丼と箸を持って移動するのだから。
そりゃあ、店の都合もあるだろう。やむ終えない場合は私も移動する。同じ職業をしているので、店内を有効に使う為に、お客様同士に移動していただきたいと思うことはある。しかし、よほどのことがないかぎり食事中のお客さんに移動をお願いをすることはない。
私は黙って左にひとつずれた。もう一度書く。私の左側に席が三つも空いていたのである。なぜ二人連れは私の左側に座らなかったのか。そして店主はなぜ食事中の私に移動しろと言ったのか。私はその日一日、妙に不愉快だった。