October.28,2004 ありがとうございます

        本日明治座千秋楽。今月は里見浩太朗座長公演『大石内蔵助』でした。里見浩太朗様、新橋耐子様、嘉島典俊様、伊吹剛様、山下規介様、川辺久造様、中村繁之様、稲吉靖司様他の皆様から出前のご注文をいただき、楽屋までお届けいたしました。ありがとうございます。中村繁之さんが可笑しかった。カレー南蛮うどんをお昼にお届けしたら、「きょうは吉良亭に討ち入りなんだけど、雪が降っていて寒いから、うどんを食べて暖まってから行く事にしたの」 あはははは、ありがとうございます。


October.26,2004 事情のありそうな求人電話

        お昼にパートで働きに来てくれている人が、ふたり一度に辞められた。おふたりともとも、もう年金を受け取る年齢に達し、ここらでのんびりと暮らしたいとのこと。また、長年ウチで勤めてくださったこともあり、「ご苦労様でした」と送り出すことにした。

        このふたりの抜けた穴を埋めるために、新聞に募集広告を打った。いやあ、驚いた事にウチのようなちっぽけな店でも働いてくれるという人は、けっこういらっしゃるようで、電話での対応、面接に忙しい思いをした。以前はそば屋のお昼のパートといったら、ある程度子供の世話から手が離れた主婦と相場が決まっていた。それがけっこう幅広い層から問い合わせがある。驚いたのは男性からも申し込みが多くあったこと。以前は新聞の広告欄には男女の別を明記していたのだが、今は雇用均等をはかるためらしく、それは書いてはいけないことになったらしい。それでも去年にやはり男女区別のない募集広告を出したときには、男性からの問い合わせは一本もなかった。それだけ職がない人が増えたのだろうか。

        面接というのも辛い仕事だ。何人もの人を面接して、採用を決めるのは、ほんとうにごく少ない人しか雇えない。いわば人間をふるいにかけるわけで、落とされた人は決してこちらの条件に合わないという人ばかりではない。また、ある程度、その人の家庭事情なども聞かせてもらう必要があるから、その人のプライベートが見えてしまう。「あっ、訊いては悪かったか」と思う瞬間もあるのだが、どうしようもない。

        いわば、いろいろな人の人生がドッと見えてしまう人材募集という作業は、とても疲れると同時にいろいろな人の人生を知って、考えさせられるものがある。

        こんな電話があった。洗い場希望という女性の声は、やや聞き取りにくい
女性 「そちらは、オープン・キッチンですか?」
私はオープン・キッチンという言葉の意味が一瞬わからないでいた。
私 「と、申しますと?」
女性 「ですから、調理場がお客さんから見えるんですか?」
私 「いや、昔ながらのフツーのそば屋でして、お客さんからは調理場や洗い場は見えません」
女性 「お店はどのくらいお客さんが入るんですか?」
私 「四人がけのテーブルが八っつですから、32人でいっぱいです」
女性 「あのー、お給料は週ごとにもらえませんか?」
私 「いやあ、ウチは月ごとの支払いになります」
女性は、「それでは」と電話を切った。

        この人は、どういう人なんだろう。私の想像は逞しくなってしまう。お客さんから自分の姿が見えるのは困る。そして給料は週ごとに払ってほしい。ひょっとして借金取りに追われている人なんではないか・・・・・?

        新しいパート従業員も決まり、ふと、あの電話の女性のことが気になっている。


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PRIVATE EYE