January.28,2006 ありがとうございます

        本日、明治座千秋楽。今月は『渡る世間は鬼ばかり』でした。えなりかずき様、吉村涼様、佐々木一哲様、辛島咲子様他の皆様よりご注文いただき、楽屋まで出前させていただきました。どうもありがとうございます。


January.27,2006 酒飲みのマナー

        私が合法的に酒が飲める年齢に達したとき、年上の従兄が居酒屋へ連れて行ってくれた。頑固そうな親爺さんと、その奥さんがやっている小さな居酒屋だった。料理も美味しかったが、日本酒の燗の具合が抜群だった。必ず上温という状態の燗酒が出される。燗がつきすぎたり、ぬるかったことは一度もない。また、この店ではお銚子ひとり3本までと決まっていて、それ以上注文しても出してくれなかった。ここで、私は従兄から酒を飲むマナーを教わった。酒は飲みすぎてはいけない。酒は静かに飲むものであり、周囲に迷惑をかけるような大声で話してはいけない。その後も私はこの店に友人を誘ってよく通ったものだった。

        大手居酒屋チェーンというものができて、世の中は一変した。この手の店は格安の料金で酒が飲める。私も最近は利用することが多くなった。何より安いのがいい。また、知らない土地で一杯と思っても、初めて入る店は注意が必要で、あまり美味しくないツマミや酒を飲まされたり、不当に高い料金を請求されたりすることがある。その点、大手居酒屋チェーンなら、味もそこそこだし、ボラれることもない。

        大手居酒屋チェーンは安く飲めるから、学生さんたちの利用も多い。ただ、この学生さんたちが困るのだ。酒を飲むマナーというものを教えられていない。酒を飲んだ開放感もあり、何をしてもいいものだと思っているのだろうか。大きな声で話したり、ふざけあったりしている。こちらが仲のよい友人と静かに話をしようと思って入っても、大騒ぎのグループの声に会話はかき消されてしまい、話にならない。仕方なく、ビールを一杯飲んだだけで、「河岸を変えようか」ということになる。

        こういった大手居酒屋チェーンは、大騒ぎしているお客さんに注意するということをしないらしい。私も店をやっていて、アルコール類を出すから、大声で話しているグループには、「他のお客さんの迷惑になりますから」と、やんわりと注意する。こういったお客さんは、そのあと二度とやってこなくなる。ウチとしては、このお客さんを逃がすことになるが、静かに飲んでいるお客さんを逃がすことになるよりはずっといい。お客さんのマナーに目を光らせる頑固親爺は、大手居酒屋チェーンには存在しないらしい。

        大手居酒屋チェーンには、飲み放題の料金システムを導入しているところもある。これがまずいけない。お客さんは元を取ろうとして、ついつい飲みすぎてしまう。結果、泥酔集団が出来上がる。酔っ払ってくると、ついつい声が大きくなる。周囲のことなど意識から無くなってしまう。しかも、ビールやらサワーやら日本酒やらをチャンポンで飲むから余計に酔いが回る。

        繁華街に行くと、よく居酒屋から出てきた学生のグループが道で集団で固まっていることがある。この人たちは道路の交通を邪魔しているという意識がないらしい。しかも酔っ払っているから、突然にふざけて暴れだしたりして、その身体や手が通行人に当たったりする。居酒屋の外に出てまでこれじゃあ、一般人は、たまったものではない。酒飲みの私でさえ迷惑だと感じるのだから、下戸の方など、「だから酒飲みは嫌いだ」という気になるだろう。

        学生のうちに酒飲みのマナーを教えられてこないから、会社に入ってからも同じことが起こる。学生のうちはどうやっても自腹だから限度はある。それが会社関係で飲みに行くと、時には領収書なんてものを貰えば、ただで飲み放題なんてことにもなる。接待に使ったなんていう名目で、同じ会社の人間が会社の金を使って飲んでいたりする。こういう人たちの会話はだいたい決まっていて、会社の方針に対する不平不満やら、その場にいない上司、同僚に対する悪口。そして、そんな会社で自分がいかに頑張っているかの自慢話だ。それを大声でやられるから、隣で楽しい会話をしようと思っている私は、酒がどんどん不味くなってしまう。

        酒飲みのマナーなんていうものは、学校で教えるものじゃない。先輩が後輩に教えていくものだ。そのシステムがこの国では、いまや絶滅してしまったのだろうか? なんだかマナーの悪い酒飲みを見ていると絶望的な気分になってくるのだ。


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