March.25,2007 そば屋の出前持ちのウソ
遅ればせながら、『ALWAYS 三丁目の夕日』を観た。結局、映画館に行かず、ビデオになっても観ず、去年の暮にテレビ放映があっても録画しておきながら観ないで今まで来てしまったというのは、なんなんだろうなあ実際あの時代を少年として生きた自分にとって、是非観てみたいという感覚と、そっとしておいて欲しかったという感覚が入り混じっていたからなんでしょうか。で、休日の午後、ひとり静かに鑑賞したのですが、CGで作られた昭和33年の東京の街が目の前に出現した途端、画面に引き込まれてしまいました。書きたいことは、いろいろあるのだけど、とりあえず、どうしても気になったことがあるので、そのことだけ。
映画の終盤、大晦日の日になる。その雰囲気を出そうとしたからでしょうか。年越しそばの出前らしい、自転車に乗ったそば屋の出前持ちがお膳にそばせいろを積み上げて登場します。それでお決まりのように自転車が倒れて、担いでいたせいろを投げ出してコケる。そのシーンを観ていて、「ああ、やっぱり、わかっていないんだなあ」という思いが湧いた。この出前持ち、左の肩にせいろを重ねたお膳を乗せ、右手で運転しているのです。おそらく利き手の右手で自転車のハンドルを握り、左の肩に左手で担ぐと思うのでしょう。ちょっと考えると、そう考えがちなんだけど、これが違うんだなあ。実際は、右肩でお膳を担ぎ、左手で運転するものなんです。左で担ぐなんて、私なんかには怖くて仕方ない。これはやってみたことのない人には絶対にわからないでしょう。
それには、自転車というものの構造を理解していないとわからない。自転車のブレーキというものは、右に前輪のブレーキ、左に後輪のブレーキがあります。つまり片手運転をしていると、前輪か後輪か、どちらかのブレーキしかかけられないわけです。後輪のブレーキというのは、ドラム式になっていて、ジワーっとブレーキがかかるような仕組になっています。反対に前輪のブレーキは、車輪を掴むような構造になっていて急にガクッとブレーキがかかるようになります。さらに、動体力学の理論から考えても、後輪のブレーキは後ろの方からソッと前への動きを止めます。一方、前輪のブレーキはグッと前へ進む力を抑えるんです。つまり、右の前輪ブレーキだけをかけたらば、自転車は、つんのめってしまうんです。これはどう考えても転倒しますよ。
というわけで、そば屋の出前持ちは、必ず右肩で担ぐということを理解して欲しいんです。その上で、こういった映画のシーンを観ていると、映画の中の出前持ちは、突然の事態にハンドルを動かしてバランスをとろうとする。その挙句に転倒してしまう。これもおかしな事です。実際の出前持ちは、こういう事態にハンドルを動かしてバランスをとろうとなどしません。ブレーキです。そっと左のブレーキ(くどいようですが後輪)をかけます。これで、まず転倒は防げます。そしてですねえ、まず急ブレーキなんてかけません。急ブレーキなんかかけたら、それこそ転倒の危険があります。急ブレーキをかけなくてすむようなスピードで走る。それが、そば屋の出前持ちなんです。
ところで最近、自転車に乗りながら携帯電話をかけている人をよく見かけます。これがまた、よく左手で携帯電話を持ち、右手で運転しているんです。これは絶対にやめてください。転倒の危険だけでなく、歩行者も危ないですから。注意を払って運転しているそば屋の出前持ちと違って、こういう人は注意が散漫になっていますから。
March.7,2007 佐渡稔さん
明治座2月公演は、コント55号と東京ヴォードビルショーの『仇討物語 でんでん虫』でした。上の写真は公演パンフレットの1ページ。東京ヴォードビルショーの佐渡稔(さわたりみのる)さんが、当店でそばを食べているところ。稽古初日、稽古前に寄ってくださって撮影が行われました。佐渡さんは、そばが大好きとのこと。見えないと思うけど、下の方に佐渡さんのコメント。「これはうまいねえ。ちょっと甘めのソバツユが後を引くんだよね。ソバ湯を入れて最後の1滴まで飲みたい」 ありがとうございます。
私が佐渡さんの舞台を観たのは確か1999年の堺正章の明治座公演『忠臣蔵症候郡 仇討でござる』が最初だったと思う。細かい演技で笑いが取れる凄い役者さんがいるもんだと感心したのを憶えている。それがきっかけで東京ヴォードビルショーの芝居を観るようになったのだ。これからも贔屓にしますよう。