September.9,2007 傘のトラブル
私はもともと、高級品、ブランド品の類にまったく興味がない。時計は時刻がわかればそれでいい。バッグは通販で買った1000円のトートバッグ。服はスーパーで売っている安物ばかり。靴はバーゲン品のスニーカーを穴が空くまで穿き続ける。物、道具なんてものにはまったくこだわりがない。所詮消耗品くらいの意識しかないから、所有欲がない。
傘は、これまたバーゲンで買った大き目のが1本。それと、もう十数年使い続けている折り畳み式傘が1本。大き目の傘はよく無くすので、これが何本目の傘がわからない。電車の中に置き忘れたり、人に貸してあげてそのままになってしまったり。あるいは、買物や飲食店で傘立てに入れておいて、間違われて持っていかれたり、盗まれたり・・・。
傘は天下の回り物って意識でいれば、あまり腹は立たないのだろうけど、世の中の人はそうは思わないらしい。当たり前か。飲食店などの傘立てに「傘に関するトラブルは、当店では一切責任を負えません」と書いてある紙をよく見かける。それほど、傘に関するトラブルは多いらしい。当店でも例外ではない。まあ、おそらく他の人のと間違えて持って行ってしまうのだろうと思うのだが、間違えられた人はたまったもんじゃないということでしよう。私の経験上、間違って傘を持っていった人はまず99%取替えに来ない。こんな場合、そのときに店にいるお客さんに自分の傘を指摘してもらい、残った傘が間違えて持っていった人の傘だからと、間違えられた人に渡そうとすると、まず99%の人が、その傘を差して行くことを拒否なさる。そこで一時はトラブル用傘として適度に高級な傘を何本か購入しておいて、間違えられた人に差し上げることをしていた。しかし、これでも間違えられた人は不満顔なのだ。「間違えられた傘は思い出の品で、他の傘には変えられない」とおっしゃられる方もいた。
こういうトラブルの対処法を教えてくださった方がいた。間違えられたお客様に別の傘を買ってもらい、領収書を送っていただき、その代金を支払うという方法。これはいいと思い、次のトラブル発生時に実行してみた。ところが、このお客様はそうとうに怒ってらした。間違って持っていった人に対する怒りと、当店に対する怒りだ。「ちゃんと管理しろよ!」と怒鳴り、その怒りは止まる事はない。仕方なく、私の傘を使ってもらうことにして、代金はお支払いしますから新しくお気に入りの傘を買ってくださいと持ちかけた。しかし、それでも納得がいかない様子。1時間ほどして、そのお客様から電話がかかってきた。「借りた傘は、今、宅配便で送り返したから!」 「あっ、別に送り返していただかなくても、その傘は差し上げたものですのに」 「乞食じゃないんだから、いらねえよ!」 「申し訳ありませんでした。新しい傘をお買い求めいただき、領収書を送っていただけませんでしょうか」 「金の問題じゃないんだよ! しっかり管理しろよ!」 こうして、その人から領収書が送られてくることは無かった。
どうも最近知らされたのは、他人の傘を知らないで間違えてしまう人ばかりではなくて、意識的にいい傘を持って行ってしまう人が存在するということだ。傘立ての中には、鍵付きのものもあるのだが、やや大きいのと、鍵が壊されたり、そのまま忘れて行ってしまう人がいたりというケースがあり、これも気が進まない。
そこでやっぱり行き着くところは、これしかない。ビニールの傘入れを入口に置き、これに傘を入れて店内に持ち込んでいただく方法。これに今まで難色を感じていたのは、ゴミが増えること。地球の環境によくないという思い。それと、座敷に持ち込まれると畳が濡れてしまう可能性があるということ。しかし、これ以上傘のトラブルで悩まされるのはまっぴらだ。畳だって濡れるのは水なんだから拭けばいい。かっぱ橋へ行き、購入してきました。値段も思っていたほど高くはなくて、これならばもっと早く買っていればと思った。
それでも、これを使わないで店の入口付近に傘を置く人っているんですね。ビニール袋を設置して最初のクレームのお客さんがさっそく出た。入口のところに置いておいたのを誰かに盗まれたとおっしゃる。「このビニール袋に入れて席までお持ちいただきたかったんですが」 しかしまだ怒りは収まらない。でもねえ、こうなると私ども、どうしようもないんですけど。