June.27,2001 宝塚記念

「さあ、いよいよ、春のGT最終レース。どうだった?」
「テイエムオペラオーとメイショウドトウの一騎打ち。いやあ、見ごたえがあったねえ」
「常に目の前のタンコブ、テイエムオペラオー。こいつさえいなければ無敵と言われる存在のメイショウドトウだもんな」
「思い返せば、去年の宝塚記念、秋の天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念、春の天皇賞と全て、1着がテイエムオペラオーで、メイショウドトウは全て2着という有様」
「それが、今回、ようやくメイショウドトウは出しぬいて、迫り来るテイエムオペラオーから逃げ切ってみせた。いやあ、感動的ないいレースだったなあ。それで、お前は何買ってたの? 当然、メイショウドトウとテイエムオペラオーの馬連一点買いだろ?」
「本来ならそうなんだけどね。でも、それじゃあ、2.1倍しかつかない。だって、他の馬、みーんなロバだもん」
「こ、この野郎! こんな堅いレースにまたスケベ心出したな?」
「だからさあ、3着に何が来るかという問題なんだよな、ようするに。だって2.1倍じゃあ、しょーがないじゃん」
「この野郎、それで何買ったんだよ、複勝に!」
「これ」

「ス、ステイゴールド! お前が以前からステイゴールドを好きだっていうことは分っていたけど、まだこんな馬に賭けてるのかよ。今回、ステイゴールドは4着だぜ」
「そう、惜しかったなあ。もう少しだったのに。この前はドバイまで遠征して優勝したし、1、2着は無理としても、3着はいけると思ったのになあ」
「ステイゴールドも、もう7歳だぜ。最強の今の5歳馬軍団には勝てないって。3着だって5歳のホットシークレットだったじゃないか。いくらドバイで優勝したからって、宝塚記念で勝つなんて、ドバイ無理な話」
「そっ、それがオチかあ。あーあ、それて゜は皆様、10月の秋のGTまで、さようなら」


June.6,2001 安田記念

「じゅうにまんとんでろっぴゃくえん」
「ホント、びっくりしたよなあ。1着が9番人気のブラックホークで、2着に15番人気のブレイクタイム。馬連で、何と120,600円の超大穴だもんなあ」
「じゅうにまんとんでろっぴゃくえん」
「おいおい、ひょっとして当てたのかあ?」
「まさかあ・・・買えないよお、あんなスジ」
「で、何買ってたの?」
「う〜ん、最初はスティンガー流しにしようと思ってたんだ。思えば去年の安田記念の1番人気はこの馬だったからねえ。で、今回は2番人気。去年の雪辱戦になりそうだと思ってさ。買いに行く前日までは、そう決心してた。でも当日になって心変わり」
「結局、スティンガーはまさかの15着」
「で、当日、場外馬券売場まで来て気が変わってね。やっぱり、去年の安田記念の優勝馬、香港の6フェアリーキングプローンからの5頭流しに書き換えちゃった。それでもハズレだったけどね」
「フェアリーキングプルーンは、1番人気だったというのに9着」
「いや、ブラックホーク流しというのも考えないではなかったんだ。こっちは、去年の安田記念の2番人気。このところパッとしなかったけれど、行けるかもしれないと一瞬思ったんだけどねえ」
「そんな言い訳は聞き飽きてるよ! 競馬は買った馬券が全て!」
「でもねえ、仮にブラックホークから10頭流したとしてもブレイクタイムには届かなかったなあ。そんな馬いたの?って思ったもの」
「ほんとだよなあ」
「だってさあブレイクタイムって、休憩って意味じゃないの? 休憩しているうちに他の馬、みんな行っちゃうよ」
「違うんじゃないの。この場合のブレイクは[壊す]方じゃないのかあ? 時間を壊す。つまり記録破り」

ビリビリビリ

「何やってんだよ」
「こっちは、馬券破り」


May.30,2001 ダービー

「おい、何をボケーっとしているんだよ」
「・・・・・・・・・・」
「ははあ、さてはダービーも落としたな?」
「・・・・・・・・・・」
「おい、どうしたんだよ、馬券見せてみろよ」
「・・・・・はい、これ」

「んっ? 馬連9ながしってことは・・・9って2着に入ったダンツフレーム。1着は18のジャングルポケットだから、これ、的中してるんじゃないか」
「まあな。でも1番人気のジャングルポケットと、3番人気のダンツフレームじゃあ560円しかつかなかったもんなあ。200円じゃあ1120円。1000円の投資で1120円じゃあ、たった120円しか儲けはなかったことになる」
「それにしても、何でダンツフレームからなんだ?」
「1番人気のジャングルポケットと、2番人気のクロフネは、揃いも揃って大外8枠の17番、18番だろ? 絶対に不利だよ。それだったら、ちょうど真中の9番を引いてきたダンツフレームからっていうのが、スジだと思うんだけどなあ」
「なるほどねえ。ダンツフレームは皐月賞でアグネスタキオンに破れたとはいえ、2着。ジャングルポケットは3着だったもんな」
「だからね、ジャングルポケットかクロフネがヒモで来ちゃったら、もう諦めるつもりで、押さえで買っておいて、あとの3頭で来てくれればと思ってね。2ルゼル(4番人気)、7テンザンセイザ(5番人気)、10プレシャスソング(8番人気)というわけ。ルゼルとの組み合わせでも2410円ついたし、プレシャスソングとの組み合わせなら4540円ついたのになあ」
「まあ、しょうがないじゃない。そのへん実力だと思うよ。ジャングルポケットはさすがに強いよ。あの皐月賞だって展開によっては優勝しててもおかしくなかったんだもの」
「ジャングルポケットかあ・・・・・ジャングルポケットねえ・・・・・ジャングルポケット・・・・・」
「いつまでジャングルポケットって言ってるんだよ! まるでエアポケットに入り込んじゃったみたいにさ。さあ、いつまでもポケッとしてないで、仕事、仕事!」
「いつから、お前の方がオチ言うようになったの?」


May.22,2001 オークス

バカー! もう付合ってらんねえや。またムーンライトタンゴの単勝なんて買いやがって! もうおまえの手の内は分っているんだよ! ムーンライトタンゴのお父さんは?⇒ダンスインザダーク⇒シクシクシク―――だろ! もうそのパターンは聞き飽きたわ!!」
「そんなこと言うなよお。本当に行けると思ったんだから。桜花賞であの怪物テイエムオーシャンと競って2着。今度もこの2頭の争いになると思ったんだけどなあ」
「無理無理。だいたい仕掛けるのが遅すぎるよ。あんな後方で4コーナー回っちゃって! まったく届かないままで6着じゃないか!」
「実はねえ、もう1頭、考えていた馬がいたんだ」
「まさか、1着になった5番人気のレディパステルだったなんて言うんじゃないだろうな? 競馬は買った馬券が全てなんだからな!」
「いや、そうじゃないんだ。6番人気のオイワケヒカリ。これいいと思ったんだけどなあ。で、よく見たら、この馬のお父さんもダンスインザダーク」
「ほうら、お前もう真面目に競馬やってないだろ! このコーナーで笑い取るためにやっているとしか思えないよ、俺は!」
「そんなことないって!」
「オイワケヒカリだとお? 結局あの馬だって5着じゃないか!」
「うん、ムーンライトタンゴと並んで、5着と6着。仲良くゴール」
「バカ! そんなんで喜んでいてどうするんだよ!」
「オイワケヒカリの小林騎手は『直線で馬群をさばくのが難しかった。切れる脚がない分つらかった』って」
「それはオイワケヒカリじゃなくて、イイワケヒカリ」


May.8,2001 NHKマイルカップ

「シクシクシクシク」
「ははあ、またハズレだろう?」
「うん、先週の天皇賞で馬連一点勝負で取ったから、今回も同じく馬連一点勝負だっんだけどね。一番人気の4クロフネは動かしようがないから、問題はヒモだったんだよ。それが、よりによって18頭だてで13番人気の14グラスエイコウオーが2着に入ってきちゃうとは思いもつかなかった」
「実際、グラスエイコウオーはよく逃げたよな。距離が短いから目一杯逃げたという感じ。でも、それを余裕でかわすところなんか、さすがクロフネ、バケモノだね。それにしても、馬連配当6880円はすごいね。クロフネから総流しでもしてないと、なかなか買える馬券じゃない」
「2番人気の12ネイティブハートが断然のクロフネ対抗馬と言われていたでしょ。この組み合わせだと配当が300円切ってたもんね。それがまさか4着に破れるとはねえ」
「それじゃ、お前クロフネ=ネイティブハートの組み合わせを買ってたのか?」
「いや、それじゃあつまんないんでさ、そんなのは買わなかった」
「それじゃあ、3番人気の13キタサンチャンネルかい? あれなんて17着だったじゃないか?」
「いいや、キタサンチャンネルとの組み合わせでもなかったんだ。実は、4番人気の9エアヴァルジャンとの組み合わせ」

「ありゃりゃ、エアヴァルジャンは結局15着だったじゃないか。ひとつもいいとこ無しで終わっちゃったよね」
「シクシクシクシク」
「エアヴァルジャンじゃなくて、ほとんど、あの悲しい物語『ああ無情』のジャンヴァルジャンだね」
「シクシクシクシク」
「いつまで泣いてんだよ」
「しかもね、よく見たら、エアヴァルジャンのお父さん、何だったと思う?」
「ええっ! ええっとエアヴァルジャンのお父さんっと・・・・・・・・・・ゲゲッ、またもやダンスインザダーク!」
「シクシクシクシク」
「ふう、やってられんな」


May.1,2001 天皇賞

「ジャーン!」
「おおっ! これは天皇賞、1テイエムオペラオーと5メイショウドトウの馬連的中馬券じゃないか。しかも一点勝負でズバリ」
「ふっふっふっふっふっ。どんなもんよ。これがオレ様の実力よ」
「それにしちゃあ、今まであまりにもハズレてないか?」
「メイショウドトウは常にG1では2着なんだよ。遡ると、有馬記念、ジヤパンカップ、秋の天皇賞、宝塚記念・・・みーんな、2着。だから、メイショウドトウは今回も2着って読んでたね」
「人気でいくと、メイショウドトウは3番人気。2番人気のナリタトップロードはいらなかったのかい?」
「いらない、いらない。あんな波のある馬、いらないよ」
「結局は1番人気になったけれど、テイエムオペラオーは前走の大阪杯でまさかの4着。心配なかったのかい?」
「何言ってるの! かのテイエムオペラオーだぜ! 現在最強の馬だぜ! そして現在2番目に強いのがメイショウドトウ。実際、上にあげたメイショウドトウが2着になったG1は全て1着はテイエムオペラオー。この組み合わせ以外に買いようがないって!」
「今回は、当てただけに鼻息が荒いなあ。馬連で500円の配当だから、5000円の払い戻しかあ。いままでこの春のG1は4連敗だから、ようやく元が取れた程度なんじゃないの? 無駄使いすんなよ」
「大丈夫。いよいよ冴えてきたぞ! 次回マイルCSで、ガーンと儲けてやるからね!」
「やめた方がいいと思うけど・・・。また泣くのがオチだと思うがなあ・・・」


April.17,2001 皐月賞

「皐月賞も荒れなかったけど、どうした?」
「ああ、グリグリの1番人気アグネスタキオンの圧勝ね。強かったなあ。2着が3番人気のダンツフレームだろ。そして3着が2番人気のジャングルポケット。もうガチガチの線で決まっちゃったもんなあ」
「で、取れたのかい?」
「アグネスタキオンの軸は動かないとみて、問題はヒモだよなあ。アグネスタキオンの単勝が130円じゃあ、そう何点も買えない。とすると、アグネスタキオンからの一点勝負しかないなと思ったわけ」
「うん、当然だろうな」
「それで、見ていったら5番人気のミスキャストがいるじゃないの」
「おいおい、ミスキャストとの馬連を買ったのかい?」
「いや、アグネスタキオンとミスキャストとのワイド一点買い勝負。ミスキャストが2着に来いなんて欲はかきませんでした。3着でいいと思ってたから」
「結局6着だったじゃないか。そんなもんだよ、実力としては。まさか、ハズレても『ミスキャストでした』ってオチで終わらせるつもりだったんじゃないのか?」
「ご冗談でしょ。いいかい、ミスキャストのお父さんはサンデーサイレンスだぜ。それにお母さんときたら、あの、いいかい、あのノースフライトだぜ。きれいな身体しているくせに男勝りで、並み居る牡馬をものともせずの大活躍で引退した、あのノースフライトなんだぜ」
「ああ、ああ、お前のノースフライト好きは知っているさ。随分儲けさせてもらったみたいだしな」
「しかしなあ、出走前の厩舎のコメントが気に入らないよなあ。『勝ち負けは言わないけど、ダービーの権利(4着)は取りたいな』だと。4着じゃダメなの。3着に入ってくれなくちゃ賭ける方としてはワイドでも引っかからないんだから」
「そんな馬買うなよ、陣営だってそんなものだと思っているんだからさ」
「それにだよ、レース後の横山典騎手のコメントが気に入らない」
「ふうん、何だって?」
「『落ち着いていていい走りだった。今後が楽しみだ』だとよ。こっちは今後よりもだな、このレースを何とかして欲しかったもんだよな! ずーっと後ろの方走ってて、いいとこ無しじゃん。遅いよ、仕掛けるのが」
「本当にお前、ミスキャストはミスキャストでしたでオチにするつもりだったんじゃないのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、この日はね、飛行機で金沢へ行ってたんだ。だ、だからね、ノースフライト」


April.13,2001 桜花賞

「おい、桜花賞があってもう5日目だぞ。報告がずいぶん遅れたじゃないか。さては、またハズシたな!?」
「ごめん、ごめん。ここのところ、他のコーナーが忙しくてな」
「ウソつけ。きのうの『翁庵新メニュー開発ぷろじぇくと』なんてヤッツケじゃないか!」
「週末に金沢行くんで、このところ書き溜めしてるんで、ごめん」
「何、楽屋さらしてんだよ! 桜花賞だよ、桜花賞!」
「さすがグリグリの1番人気テイエムオーシャンだったねえ。先行していって、最後の直線をさらに加速していって、そのままゴール。2着が4番人気のムーンライトタンゴで、後方の悪い位置から4コーナーで一気に他の馬をゴボウ抜き」
「で、お前は何買ったんだよ」
「今回は正直言って迷ったねえ。最初に考えたのがタケイチイチホースの単勝」
「な、なにィ!? 10番人気で、結局は12着に終わった馬だろ? 無理だって!」
「だってタケイチイチホースってイチが2回も出てくるんだぜ。これが1着にならなくてどの馬が1着になるっていうの!」
「バカ! そういう買い方をしているから、取れねえんだよ」
「もちろん、そんなの買わないよ。それでね、次に考えたのがネームヴァリュー」
「12番人気、11着。けっこう着いていったけど、ゴール前で失速しちゃったね。なんでまたネームヴァリューにしようなんて思ったんだ?」
「騎手が松永幹だからねえ。牝馬(ヒンバ)の松永って言ってね、牝馬にはめっぽう強いんだ。マスクもいいから、けっこう牝馬にモテるんだよ、きっと」
「でも、ネームヴァリューじゃあ、ちょっと無理だろう。今回は怪物みたいなテイエムオーシャン以外にも、2着に入ったムーンライトタンゴだろ、それとタ゜イワルージュ、ハッピーパスなんて強いのが揃っているんだから」
「うん、それでね、迷いに迷って買ったのがこの馬券」

「な、なにィ。ムーンライトタンゴの単勝だってえ! なんだって複勝にしなかったんだよ! 複勝だって、2.9倍ついてたんだから、1000円が2900円になったのに!」
「惜しかったなあ。4コーナーからのゴボウ抜き。興奮しちゃったよ。もう少しで、テイエムオーシャンを捕らえられるところだったのに!」
「バカ! 3馬身も離されて、何が惜しいだ!」
「シクシクシクシク」
「1000円馬券で負けたからって泣くな、バカ! ハズレはハズレ!」
「違うんだよ」
「何が違うんだよ」
「ムーンライトタンゴのお父さんの名前、なんていうか知ってるかい?」
「ムーンライトタンゴのお父さんの名前? もちろん知ってるさ、ダンスインザダークだろ?」
「うん、あの悲しい悲しい映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を思い出しちゃって泣いちゃったんだ」

今回のオチは、春風亭昇太師匠の『花粉症寿司屋』のオチの一部を借用させていただいことを、おことわりしておきます。しかし、それにしてもこのコーナー、落語や漫才をやるコーナーじゃなかったのに、何でこんなことになってきてしまったのだろう。


March.27,2001 高松宮記念

「前回、今年は本気を出すって言ってたけど、今回は取れたのか? またいい加減な買い方してたんじゃないんだろうな?」
「まあ聞けって。このレース、18頭も出ちゃっているけれど、冷静に考えればほとんどの馬がいらない。実質3頭だけの勝負なんだもん」
「おおっ! 今回はいいとこ突いているじゃん」
「そう、もうどう考えたって、トロットスター、ダイタクヤマト、ブラックホークの3頭の中で決まっちゃうレース。他の馬がつけいる隙はないもの」
「うんうん、だんだん競馬が分かってきたな」
「実際、人気は直前の単勝オッズで、トロットスター2.9倍、ダイタクヤマト3.9倍、ブラックホーク4.0倍。ほとんどこの3頭は接近している。4番人気のビハインドザマスクはグッと落ちて11.8倍。やっぱりみんな実力の差を実感しているわけだ」
「それで、お前は何を買ったんだ?」
「まあ聞けって! 買い方としては、この3頭のどれかの単勝を買うという手か、あるいは馬連かなんだけど、トロットスター、ダイタクヤマトの組み合わせで6.2倍。トロットスター、ブラックホークの組み合わせで5.9倍。ダイタクヤマト、ブラックホークの組み合わせで8.1倍。3頭のボックスを組んでもいいのだけれど、資金を3等分しちゃうとあまり面白くない」
「それで、何を買ったんだ?」
「馬連の一点勝負か、あるいは3頭のうちのどれかの単勝か迷っちゃってさあ。時間は迫ってくるし、場外馬券売場の前で頭抱えちゃったよ」
「たかだか1000円分の馬券を買うのに悩むほどのことか! それで何を買ったんだ?」
「ゲートが開いて、各馬がいっせいに飛び出す」
「おいおい、実況の話かあ。馬券は何を買ったんだよ!」
「先行のダイタクヤマトが前から5頭目あたりの位置取り。後方からブラックホークとトロットスター。4コーナーを回ってブラックホークが飛び出して一気に先頭。むむっ、このままブラックホークが行っちゃうかなあと思ったら、ゴール手前でトロットスターが鮮やかに刺した」
「うん、きれいな刺し方だったよね。それでお前は何を買ってたんだ?」
「まっ、そういうわけで、高松宮記念は見所のあるレースだっと言えるんじゃないのかな」
「それは分かったから、お前の馬券を見せてみろよ」
「まあ、いいじゃない。いいレースが見れたんだから」
「ははあ、さてはまたはずしたな。ちょっとその馬券見せろ、こら!」
「あっ、ちょっとそんな乱暴な。やめろって!」
「まったく手間取らせやがって。ええっと。何だこの馬券は!」

「まったくもう、強引なんだから」
「ダイタクヤマトの単勝だとお! 結局ダイタクヤマトはどうだったんだっけ」
「直線が伸びずに不発。結局8着で掲示板にも乗らなかった」
「またハズレか。しかし何だってまた、ダイタクヤマトの単勝にしたんだ?」
「高松宮だろう? なんか皇族関係のレースじゃん。ヤマトって何となくふさわしいじゃない」
「ふう、お前ってどうしても、そういう買い方しかできないのな!」


February.22,2001 フェブラリーS

「おい、まだ懲りずにこの連載を続けるつもりか?」
「ああ」
「もう辞めちまえよ、こんなコーナー読んでいる人間いないんだから」
「人間はいなくても馬は読んでいるかも」
「馬が読むか! もし読めても馬が笑うぜ、こんな連載」
「昔、『ミスター・エド』ってアメリカのテレビドラマあったよね。♪馬が笑う そんかなバカな 馬が喋る そんなバカな―――ってさ」
「そんな恐ろしく昔の番組の話、今時誰も知らないって! 歳がわかるぞ!」
「ほんと、馬が喋ったら競馬も面白くなるんだがなあ。出走前にインタビューなんかしちゃってさ。『今日の体調はいかがですか?』なんて馬に訊くわけ。『へへっ、絶好調だぜ!』って馬が答えたりしてさ。中には『どうも今日は気分が乗らない』なんて言う馬もいたりしてさ。そうなると、人気が下がってオッズが急落」
「くだらねえよ」
「中には、暴力団と絡んでいたりする馬がいてさ、八百長やる馬も出て来たりさ」
「もういいって!」
「『八百長してくれれば、プールつきの豪邸で一生不自由させないからさ』なんて言われたら、馬だってその気になっちゃうだろうな」
「なるか! おい、なんだか今日のこのコーナー、爆笑問題の漫才みたいじゃないか?」
「ああ、ちょっと最近、あの連中の漫才が好きでさ」
「おい、どうでもいいけれど、肝心のフェブラリーSはどうしたんだよ」
「ああ、―――あれは、―――まあ、―――いいじゃない」
「よかねえよ! 取れたのかよ!」
「君君、言っとくけれどね、今年はね、オレはね、本気だすからね」
「なっ、何?」
「去年の秋みたいな、冗談みたいな馬券買いはもうやらないからね。はっきり言って今回は取りに行きます!」
「だからあ、そんなことはいいから、フェブラリーSの件はどうしたんだよ!」
「花粉症の季節だね。このところクシャミばかり出て辛いんだ」
「誤魔化してんじゃねえ! この野郎、ちょっとその馬券見せてみろ!」
「あっ、ちょっと、ちょっと・・・・」
「なっ、何だこりゃ! 大ハズレじゃねえか!」
「まあな、最初で運を使い果たすのもナンだしな。次回を見ていろよ! ドカーンと当ててみせるからな!」
「やってられんわ!」

このコーナーの表紙に戻る

ふりだしに戻る