■17■
宿命
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クリスマス前夜。
街には華やかな装飾がほどこされ、普段人気の少ないこのビル街にまで人が溢れていた。
ミホークが時折姿を見せるビルをサンジは見下ろした。
ゾロは今日はそのビルに侵入している。
完全に警備されたビルの内側。
それを知るものは少ない。
サンジは再び通りに目を落とした。
粉雪がちらちらと舞い始めている。
今年、初めての雪。
眼下を家族連れらしい一段が通り過ぎていく。
その様子をしばらく目で追う。
家族づれが見えなくなってしまうと、サンジはその場を離れた。
パソコンのスイッチを入れ、ゾロの持っているディスクを入れた。
何故、それをゾロが持っていたのか。
そこには、サンジの見たくない画像が写っていた。
陵辱される子供と支配者たちの姿。
ゾロが知っていた。
それは予想されたことだ。
だが、それを見て喜ぶような悪質な人間ではない。
何かが、ある。
ゾロはこのディスクを自分が見ることはないと、そう思ったに違いない。
だが、サンジは見た。
そして、隠しデータがあることを見つけた。
そこには、ミホークと先の帝王ゴールドロジャーへの誓いや殺戮といった、
噂だけで誰も真実を知らない情報が残されていた。
膨大な情報の塊。
その中に、記されていたものは・・・。
ミホークは忠誠の証として生後二ヶ月の息子を刀で傷つけた。
その子供は殺し屋として育てらる。
------19年前の、1月11日。
ゾロだ・・・。
間違いない。
でも、どうして?
どうしてだ!!
ゾロは・・・知っている。
知っていて・・・。
知ってミホークを・・・。
どう・・・して。
サンジは長い間、まばたきもせずに画面を見つめていた。
それからキッチンに向かい、あるだけの材料を全て出した。
小麦粉・卵・バター。
ケーキを作ると、次は違う料理にとりかかる。
かつてバラティエで教えられた料理。
知っている料理を全部つくった。
作れるものは全て。
所狭しと並べられた料理を一瞥するとサンジは静かに部屋を出た。
粉雪はやがてぼたん雪に変わる。
すれ違う人々の顔は喜びに輝いていた。
サンジはふらふらとした足取りで街を彷徨った。
美しい街の輝き。
喜びに満ちた人々。
サンジは道ばたにうずくまり、音もなく街を白く変えていく雪をいつまでも眺めていた。