R20
悪の華
XS

届かない大空
Squalo14-22
R20
(九代目×S・家光×S ほか)

冷血


(スクアーロ21)



8



 
ボンゴレ九代目は、時おりきびしい側面を見せるが、
いつも温和で尊敬すべき人物だ。
守護者たちは、いつもその人格をほめたたえ、九代目のためなら命を捨てる覚悟はできている。
九代目の愛するものは、仲間と秩序と自然と平穏のはずだ。

それなのにガナッシュは1年前に見た出来事を忘れることができなかった。
九代目がザンザスを養子にしたのは憐れみだけなのか?
スクアーロはなぜあんなところにいたのか?
家光は何をしたのか?
いや、それ以前に、御曹司とスクアーロの関係はどういうものだったのか?
しかし決して問いかけることはできない。
九代目の闇を覗いてはいけない。
知らないほうがいいこともある。
マフィアに闇はつきものだ。


スクアーロは、久々にボンゴレ本部に呼び出されていた。
毎年恒例のパーティーだ。
オッタビオとともに、九代目の護衛を申し付けられているのだ。
他の幹部は拒否したからスクアーロだけが任務を命じられた。
部外者でも簡単に入り込めるバーティーだから、
どこから不審者が現れるのか予測できない。
守護者たちは九代目を取り囲むようにして「警備」を続けていた。
スクアーロは、九代目が見える位置で遠巻きに様子を伺っていた。
嫌な任務だが断ることはできなかった。

「よお」
馴れ馴れしく声を掛けて来る男が誰だか分かっていたが、
スクアーロは見向きもしなかった。
「仕事熱心なことだな」
沢田家光はうすら笑いを浮かべて、スクアーロの側に立った。
スクアーロは無言で睨んだが、
家光は肩をすくめただけだった。
「おー、恐い恐い」
へらへら笑う家光の側には、「家光のお小姓」と噂されるバジルが立っていた。
バジルはスクアーロの睨みに怯え、家光の影に隠れた。
「親方様、この人は?」
バジルは恐る恐る尋ねた。
スクアーロはバジルをまじまじと眺めた。
ただのガキだ。
全然強そうでない。
オレの敵ではない。
「オレの名はスクアーロ。スベルビ・スクアーロだぁ!!!
つまらねえことしやがったら、たたっ斬ってやるぞぉ!!!」
スクアーロが怒鳴ると、バジルは青ざめた。
「知っています。お主がスクアーロ・・・。
剣帝テュールを倒したという・・・」
バジルは素直に感嘆の声を上げた。
ヴァリアーは謎に包まれた存在であり、公の場に姿を現す事はほとんどなかった。
親方様はもちろん知っていたはずたが、紹介されたこともなかった。
バジルもある程度、修行を積んでいるので、多少は人を読むことができるようにはなっていた。
スクアーロの鋭く冷たい視線で睨まれると、背筋が寒くなった。
しかしスクアーロは味方なのだ。
ともにボンゴレを守る、力強い仲間なのだ。
「拙者はバジルと申します。
親方様のところに来て、3年になります」
何の影もない明るい笑顔を浮かべ、律儀にあいさつをするバジルは、心から「親方様」とやらを慕っているようだった。
スクアーロは嫌な気分になった。
バジルを先に行かせた家光は、
スクアーロにそっと耳打ちした。
「警備が終わるころ、連絡する」
家光は、何もなかったようにスクアーロから離れ、
バジルに声をかけると、
バジルを連れて、九代目のところにいき談笑を始めた。

スクアーロは、拳をにぎりしめ唇をかみしめながら、その様子を見つめていた。
九代目はいかにも親しげにバジルの肩を抱き、笑みを浮かべていた。
家光はその横で、善良な部下としての役割を完璧にこなしていた。

斬ってやる。
あいつらみんないつか倒してやる。
すべてなぎ倒してやる。
いつかこの剣でやつらを倒す。
すべて壊して切り刻んでやる。




家光はぴりびりしているスクアーロの様子を見て秘かに笑みを浮かべた。
簡単に手に入るものには興味がない。
だが楽なのも確かだ。
バジルといると楽でいい。
この子ならなんでも思い通りになる。
奈々といるのも楽でいい。
それには十分満足している。
しかしこの危険な情事ほどスリリングなものはない。
誰にも媚びない誇り高いスクアーロをひざまずかせる快楽は何ものにも代え難い。
ひとたび気を抜くと、こちらの寝首を掻かれかねない。
だがスクアーロはいくら抗おうとも、我々に逆らうことはできない。
あれはボンゴレのものなのだ。








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