R20
悪の華
XS

遠い明日の誓い
Xanxus34-Squalo32
X×S ほか S受


慈雨



2




スクアーロが意識不明となってから、3ヶ月が過ぎた。
内臓の傷は治ったのに、意識だけが戻らなかった。
跳ね馬ディーノは、毎日のようにスクアーロの見舞いにやってきた。
「ほら、今日の土産はこれだ」
「ししし。このチョコうまそーじゃん」
「まあ。いつもすまないわねえ」
ベルは素早くチョコの箱を手にとり、
ルッスーリアは気の毒そうに微笑んだ。
「今、ボスがいるから」
「ああ、そーなんだ」
ディーノは曖昧な笑顔を浮かべた。
ザンザスのせいでスクアーロは意識不明になったと聞いた。
反省の言葉などさっぱりのようだが、
病室に誰もいない時に、
側に行って黙って座っているらしいのだ。
あのザンザスが!!
この2ヶ月というもの、
まったく色事にも手を出していないらしい。
あのザンザスが!!
「ごめんねー、跳ね馬ちゃん、私たちはボスの味方だから、
せっかく来てもらっても何もできないわ」
「ボスもやっと気がついたんじゃね。センパイがいないと困るって」
ベルは肩をすくめた。
ディーノの気配に気づいたのか、
めずらしくザンザスが出てきた。
「ザンザス、久しぶりだな」
ディーノは笑顔を浮かべたが、目は笑ってはいなかった。
「ふん。また来やがったのか。役立たずを見に来るとは、よっぽど暇らしいな」
相変わらずの尊大な口調に、ディーノは苦笑いした。
「相変わらずだな、ザンザス。
役に立たないなら、オレにくれよ。
寝たまんまでいいから」
答えないザンザスに、ディーノは続けた。
「本当に必要ないなら、オレにくれ。好きな条件を言ってくれ。お前の条件をのむ」
ディーノは本気だった。
スクアーロが意識不明になって、いてもたってもいられず、ヴァリアーに通うようになった。
他のファミリーのボスに、みっともないから止めろと言われても、気にならなかった。
じっとしてはいられないのだ。
スクアーロがしあわせなら、あきらめる。
けれど、不幸な姿を見たら、あきらめらない。
ザンザスはディーノを見た。
こいつは何でも持っている。
何をよこす気だ?
金か?
有能な部下か?
キャパッローネの地位か?
すべて必要ないものばかりだった。
ザンザスの欲しいものは、今は眠りについている。
以前のザンザスは「好きにしろ」と答えた。
でも今はそう答えることができなかった。
「考えといてくれねーか?」
ディーノはなおも続けた。
ザンザスは答えなかった。
失って初めて、スクアーロの存在の大きさを知った。
スクアーロは趣味と実用を兼ねた存在だった。
適度にいびり、ちょっかいを出し、その反応を楽しんだ。
部下としても一番マシで使えたし、
性欲処理も事足りた。
ディーノは返事しないザンザスを見て、少し安心した。
ザンザスの様子を見ると、
スクアーロが憎くてああなったのではないようだった。
あんな状態になってしまって、どうしていいか分からないようだった。
シャマルの話では、身体の傷はもう癒えているらしい。
身体のダメージに精神的なショックが重なり、ああいう状態になってしまったのではないかとのことだ。
ザンザスがああしたんなら、
ザンザスが救うしかない。
あきらめてはいけない。
スクアーロはどれほど待った?
いくつもの冷たい季節を待ち続けた。
分かっている。
オレではスクアーロはしあわせにできない。
だから、ザンザス、お前に託す。
恐れてはいけない。
愛することなんて簡単だ。
自分のことでなく、
相手のことを考えればいいだけなのに。








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