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act10*掠奪
ゾロは迷っていた。
あれはサンジだ。
攫えばいい。
閉じ込めて、オレだけのものにしたい。
だが、それをしたら同じだ。
籠の鳥。
微笑まない人形。
そんなものオレは欲しくねえ。
だけど、耐えられねえ。
アイツが誰かのものであることが。
サンジでないサンジ。
あれはオレの欲しいサンジじゃねえ。
オレの探してるサンジはどこにもいねえ。
心のないサンジは手に入ることはない。
無いものは無いままなのだ。
サンジはどこへ行った。
アイツは帰ってくる。
オレの目の前に。
あの生意気で皮肉な笑顔を浮かべて。
どこか遠くに旅している心。
帰ってこい、サンジ。
ここに。
*
*
ゾロは意を決した。
「ブランカ」が「サンジ」である以上、このままにしておけない。
感情がそれを許さないのだ。
掠奪。
計画は簡単に出来た。
攫って逃げればいい。
支配者のいない時を見計らい、ブランカに剣を突き付ける。
「大人しくしな」
ブランカは能面のような顔でゾロを見た。
コイツハナニシテル?
何もかもがどうでもいい。
殺されるのか。
不思議と恐れは感じない。
力強い腕に引き摺られる。
「来い」
ゾロはブランカを連れていこうとした。
ダメダ。
ダメダ。
警告。
身体が拒否反応を起こす。
いつもの頭痛が始まる。
崩れ落ちるブランカの身体を軽々と抱えるとゾロは走り出した。
*
*
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