bruciata
(ブルチャータ・焼き栗)
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もふもふ耳あて話 その2
小説本の耳あてスクを見た時に思いついていた話です。
指輪戦の前の24ザンザス×22スクアーロ。
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その立派な屋敷の中では、華やかなパーティーが行われていた。
イタリア経済界の大物をはじめ、政治家や真の支配者であるマフィアも招かれていた。
ボンゴレ九世の経済界での取引先でもあるイタリアの大富豪のバーティーに参加できるのは選ばれた者だけであり、誰もがその権利を欲しがった。
広い屋敷の外はぐるりと高い柵で仕切られ、豪華な車が出入りする屋敷を覗こうとして集まった野次馬たちは追い払われた。
大広間には各界の著名人が着飾ったパートナーを連れ、なごやかに談笑を続けている。
邪魔にならない程度のクラシック音楽が絶えず流れ、料理や酒を手にしたメイドやボーイが流れるように客の間を動いていた。
スクアーロは輪の中心にいる己の主を見ていた。
ゆりかご事件から8年がたってしまったが、ザンザスは氷の中から甦った。
九代目のジジイはあのくだらねえ金持ちどもに、ザンザスは長期間海外に留学していたと説明していたらしい。
なんだかんだ言って、あいつは御曹司だから、顔見せをしとかねえといけねえようだ。
九代目は温和な笑みを浮かべ、取引先の金持ちどもと話しているが、ザンザスはむっつりして一言も喋る様子はなかった。
「ボスったら、我慢強くなったわねえ」
スクアーロのとなりで、ザンザスの様子を伺っていたルッスーリアがしみじみとつぶやいた。
「ゔぉおおい、当たり前だぁ!!」
警備のために来ていることも忘れ、ついいつもの調子で喋ってしまい、
近くにいた者ははっとしたようにスクアーロのほうを見て、不思議そうな顔をした。
「うるせえぞ、ドカス!!」
ザンザスが振り返り、スクアーロにまっすぐ近づいてきて、髪をひっぱると、広間からずんずんと離れていった。
「おほほほほほ。何でもないんです。
みなさん、おかまいなく」
ルッスーリアがざわめく人々に向かって笑顔をなげかけた。
ボス狙いの女たちが、動揺してるわ。
そりゃあ、ボスはかっこいいから、バカな女たちが狙うのは分かるわあ。
九代目の財産はすごいから、御曹司の玉の輿ねらいよね。
でも、あんたたちなんか、ボスには似合わないわ。
せいぜい、くやしがればいいのよ。
ザンザスは誰もいない通路までスクアーロをひきずりだした。
「ゔぉおおおおい、何だってんだぁ!!」
うるさいスクアーロをとりあえず一発殴った。
「何しやがる!!!!
いてぇぞぉ!!!」
うるさいので、また一発殴ったが、スクアーロが静かになる気配はなかった。
「ゔぉおおい!!」
「おい、ドカス、焼きぐり買って来い」
ザンザスの視線の先には、はるか遠く、屋敷の柵の外で店を開いている移動式の焼きぐり屋があった。
「へ・・・あれかあ?
寒いぞぉ!!
雪がちらちら舞ってるじゃねえかよ!!」
「買え」
様子を見ていたルッスーリアは、あわてて手近にあるものを探した。
言い出した以上、ボスが引くことはなく、ここで機嫌をそこねられたら大変だ。
なんとしてもスクアーロに行かせるしかない。
パーティ会場からかなり移動したため、クローゼットがすぐ側にあった。
「スクちゃん、ここに、イアーマフがあったわ!!
暖かいからこれ着けていってらっしゃい!!
ボスはもうお帰りよね」
「おお、そおかあ。
ここの食い物は気に入らねえんだな!!」
ようやく気づいたので言ったのだが、スクアーロはまた殴られた。
「行ってくるぜえ!!」
スクアーロがあわただしく駆け出すと、ザンザスは舌打ちをした。
どうしてあいつはあんなにカスなのか。
パーティー会場でいきなり大声をあげて、好き者の金持ちどもにじろじろ見られてやがったのに、全く気づいてねえ。
ジジイの嫌がらせのために、スクアーロを連れてきたのだが、他のにしといたほうがよかったか。
ジジイの魂胆はみえみえだ。
金めあての女どもがじろじろこちらを見てやがる。
「よい出会いがあるといいのだが」だと。
女など押しつけようとしやがって。
女が欲しけりゃ、自分でなんとかするわ!!!
くだらん女に割く時間などない。
おのれ、今に目に物みせてやる。
貴様の思い通りになど、誰がなるものか。
それでもザンザスは九代目のところに行って帰ることを告げた。
「まあ、もうお帰りですの?」
「もっと、お話したかったのに!!」
「私はジュスティーヌです。
お知りおきを」
「次のパーティーでもお会いしとうございます」
着飾った美女たちがザンザスに群がり、口々にしゃべりかけた。
どの美女たちもそれなりの令嬢であり、言いよる男を手玉にとるような女ばかりだった。
ザンザスは一瞥もせず、完全無視のまま通り過ぎた。
「あんな男、見た事がないわ」
「恐いほどのクールさが素敵」
「あの目で見られたら、震えてしまうわ」
「あの方は氷の御曹司よ」
女たちのため息が聞こえてきて、ルッスーリアはほほえんだ。
そうよ、ボスは王にふさわしい方よ。
ボンゴレ十代目になるのは、ボスしかいないのよ。
ボスの身体は素敵だけど、偉大すぎて切り刻めないわあ。
ルッスーリアはヴァリアー専用車を回すと、ザンザスを乗せ、パーティー会場から出た。
風が冷たくなり、雪がちらちらと舞い始めていた。
「あら。裏門に出ちゃったわ」
車の出入り口と、焼きぐり屋はかなり離れているようで、スクアーロがどこにいるのか全然分からなかった。
しばらく車を走らせ、ぐるりと屋敷を回ると、やっと正門が見えて来た。
「あ、いたわ!!」
「止めろ」
ルッスーリアは、ザンザスに言われ、静かに車を止めた。
スクアーロは正門の警備員がいるあたりから少し離れたところにぽつんと立っていた。
焼きぐり屋からもかなり離れたところにいて、両手で焼きぐりをにぎりしめていた。
いつものうるさいスクアーロではなかった。
静かで、人形のように美しい姿だった。
雪がちらつく中、焼きぐりだけをにぎりしめ、まったく動くことなく、まっすぐ前を見ていた。
ルッスーリアは、思わずザンザスを振り返った。
ザンザスは無言でスクアーロを見つめていた。
スクアーロに黒いイアーマフはとても似合っていた。
隊服を着ているだけなのに、黙って立っていると、とても可憐に見えた。
そう、スクちゃんは8年待ったもの。
あと少し待つくらい、なんでもない。
だって、あなたのボスはここにいる。
ここにいて、ちゃんと、スク、あなただけを見ている。
パーティー会場で、女たちにまったく目もくれず、九代目やほかの男たちもろくに見なかったボスが、スクちゃんだけを見てる。
よかった。
本当に、よかった。
じっと見ていると、人形のようなスクアーロの視線が動き、ザンザスたちの車をとらえた。
それまで清楚な人形のようだった顔は、急に目つきが悪くなり、口の端がつりあがり、凶悪な表情を浮かべた。
「ゔぉおおおおおおおい、遅いぞぉ!!!!」
スクアーロはものすごい勢いで走って来て、ドアを開け、車に入りこんできた。
外の冷気が一気に車のなかにすべりこみ、ザンザスは顔をしかめた。
「ルッスーリア、なんでもっと早く来ねえんだ!!!!
寒いぞお。ボス、焼きぐりだぁ!!!!」
それまでの静かで美しい空気はすっかり消え失せ、車の中にスクアーロの大声が響いた。
「うるせえ、ドカスが!!!」
ザンザスがスクアーロを殴り、はずみで手にもっていた焼きぐりがばらばらと落ちた。
「ゔぉおおおおおおおおい、そりゃないぜえ!!!!」
スクアーロが怒鳴り、ザンザスはさらにスクアーロを殴った。
「あらあら、仲のいいこと。
じゃあ、車を出すわね」
ルッスーリアは、車の床におちた焼きぐりを見てため息をついた。
ボスったら、またあんなに殴って。
これ以上スクちゃんがバカになったらどうするつもりかしら。
でも、しょうがないわ。
スクはうるさすぎるもの。
けど、うるさくないスクちゃんなんてらしくないし、殴らないボスなんてらしくない。
今はこんなだけど、きっともう少しよくなるわ。
これから先、ボスとスクには時間があるから。
身も心も汚いヴァリアーにも愛は必要よ。
ヴァリアークオリティでなんとかなるわ!!!!
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24のボスは年中無休で、スクがかわいいと意味もわからず動揺して殴ってると思います。
小説本の表紙の耳あてスクを見た時、衝撃的なかわいさと可憐さで私も激しく動揺したものです。
ヴァリアーの休日の中でちらっと書いた、「焼きぐりで耳あてもふもふ」に反応してくださった方がいらしたので、書いてみました。
この話の仮タイトルは「焼きぐりもふもふ」でした。
またしても、もふもふは、ほぼ関係ナッシング!!!!
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