ジャガイモの恐怖〜ソラニン

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古くなったジャガイモは絶対に食べてはいけません。1週間ほどもだえ苦しむ、時によっては命を落とす
可能性があります。今回は、ジャガイモ中毒の原因物質「ソラニン」の話です。

中毒の事例
いくつかの事例を紹介しましょう。まず1969年ロンドンの小学校で起こった例です。
原因は夏休み中ずっと放置してあったジャガイモが、誤って給食の食材に使われたことでした。給食から6時間後、
78人が倒れ、17人が入院、そのうち3人が重症でした。その症状の深刻さをその時のカルテが物語っています。
    
    S.M.は給食から20時間後、興奮してうわごとを言い始めた。入院当初は意識がなく、強くつねるとようやく
    反応するくらいで、顔面蒼白、落ち着きも無かった。体温37.5℃、脈拍毎分160でかなり弱く、呼吸数は
    毎分48、血圧は測定不能。高熱の割には手足は冷たかった。以後24時間、循環器は少しずつ回復したが、
    瞳孔は収縮したままだった。3日目いきなり饒舌になったが、脈絡の無いことを言うだけ、精神状態は相変わらず
    不安定で、時々幻覚を見るらしかった。4日後ようやく回復の兆しが見え始めた・・・

また、1918年のグラスゴーでは、ジャガイモを食べた61人が頭痛、嘔吐、下痢に見舞われ、そのうちの5歳の少年は
ひどい嘔吐の後腹部の血行が止まって他界しました。

朝鮮戦争当時の北朝鮮で、腐ったジャガイモを食べた住民に中毒が起きました。ある地区では382人が倒れ、52人
が入院、そのうち22人はほぼ即死、重傷の人も1日以内に心不全で他界しました。顔と腹、手足が腫れ、唇や耳が
紫になり、心臓や肝臓が肥大し、意識をなくした後、5〜10日以内に死亡した人もいたそうです。臨終の間際には
興奮の極みとなり、猛烈な発作が起こって呼吸系の不全になるそうです。

考えただけでも恐ろしいです。緑化したジャガイモや、まして芽の出たジャガイモを食べるのは言語道断です。




      ソラニン

毒性と予防法
ソラニンは神経毒の一種で、神経伝達に働くアセチルコリンエステラーゼという酵素を阻害します。
細胞同士はアセチルコリンという物質を使って、お互いに情報をやり取りしますが、情報の伝達が終了すると、
このアセチルコリンエ
ステラーゼという酵素がアセチルコリンを分解します。この酵素がないと、アセチルコリンは
分解されず、細胞がパニック に
なるわけです。この毒作用は、あの有名な「サリン」のそれと非常に似ています。
天然にもこのような恐ろしい物質が存在するということですね。

ソラニンやそれに似た物質は、ピーマン、チリ、トマト、ナスなどにも含まれますが、ソラニン中毒が起こるとまず初め
にジャガイモが疑われます。何気ないジャガイモでも、100g中にソラニンを3〜6r含みます。大半のソラニンは皮の
すぐ下にあるので、皮をむいたら無くなります。そして、古くなって緑化するとソラニンはどっと増え、芽を出せばさらに
増えます。ソラニンに対する耐性は人種や民族でかなりの個人差があり、ジャガイモの葉を平気で食べる民族もある
そうです。反対に極端にソラニンに対する体の解毒能力が低い人もいます。ジャガイモが嫌いな人はもしかしたら、
ソラニン耐性が低い人かもしれません。

いろいろ恐ろしいことを書きましたが、私たちの大部分は新鮮なジャガイモをおいしく食べることが出来ます。
ただし、ジャガイモのような平凡な食品にも体を狂わせる成分が入っていることも事実です。ソラニン中毒の予防法は、
ジャガイモの緑化が進行するような条件(直射日光や高温)でジャガイモを放置しない、出来るだけ早く食べる、
調理時に皮を剥く芽はしっかり取る、などが挙げられます。もし、古くなったジャガイモが冷蔵庫やダンボールの奥
から出てきても、もったいないとか思わずに捨てた方が無難です。