第4回 使用済み核燃料編(3)

過去2回の講座で、使用済み核燃料がどんなに危険で厄介な物で、驚くような量で既に存在しているということを知っていただけたと思います。そして、ウラン235という核物質を発電源とするかぎり続けることになるのです。


どうやって運ぶの?

 皆さんご存知のように、52基の原発は北は北海道から南は九州まで、風光明媚といわれる地方にあるわけですね。それぞれの原発の使用済み核燃料貯蔵プールからイギリス・フランス・東海村へと運ばれました。そして、今後は六ヶ所へと運ばれるわけですね。その輸送手段は?ルートは?

国内の輸送手段は、専用港を持たない原発の場合は港湾まではトラックで、そのあとは船になります。海外委託再処理の場合は船になります。フランスのラ・アーグ再処理工場へはシェルブール港から鉄道輸送されています。日本国内では、未使用の核燃料は高速道路をトラックで運ばれているものもあります。以前、首都高速の横転事故の原因がドライバーの飲酒運転にあり、このドライバーは日常的に飲酒運転を繰り返していたということがありました。交通事故は毎日起きているのです。核燃料を満載したトラックが事故に合わないという保証はないわけですね。
高速道路を走行中、あなたの車の前を、あるいは隣を走っているトラックが核物質を運んでいるトラックかもしれないということです。
船は安全か?決してそうではありませんね。タンカーの座礁は1つ2つではないですね。タイタニックだって海の藻屑となりましたね。
この世に絶対起こり得ないことなんて何一つないということです。

さてルートは図を見て下さい。

放射能や使用済み核燃料の主な輸送ルート

「考えてみよう 原発のこと」原子力資料情報室より

左上にある四角の識別表示は、高速道路を走る輸送トラックにつけられる「核マーク」です。実際に作って車に張ってみると、いかに小さいか良く分かります。これじゃ高速道路走行中だと、まず見えませんね。なぜ、こんなに小さいのでしょうか。一応「核ジャックを防止するため」と説明されていますが、本当は放射能を積んだトラックがあちこち走り回っているのを知られたくないのだと思います。反対の声が大きくなりますからね。


なぜ貯蔵プールに入れるの?

使用済み核燃料は、新燃料と比較すると放射能量は約1億倍にもなります。200種類以上の放射能が強い放射線を出しながら壊変していくわけですから(基礎講座参照)、その崩壊熱はものすごいものになります。冷やし続けなければ、自ら発する熱によって金属のさや管もろとも溶かしてしまうことになります。ですから、プールに入れて水で冷やすのです。

青森県のどっかの市長が、「使用済み核燃料は核分裂をしないから安全」だと言って中間貯蔵施設誘致に乗り出したと報じられましたが、まったく無知としか言いようがありません。


貯蔵プールは安全ではないの?


残念ながら「安全」とは言えないですね。彼らは、「今まで使用済み核燃料貯蔵プールでの事故はなかったから安全だ」と言いますが、本当にそうでしょうか?今まで事故がなかったということが、これからの保証になりますか?

貯蔵プールと一般のプールと違うのは、そこに入るものが使用済み核燃料という必然的な危険を持ったものだという点です。そして、そこに使用済み核燃料がある限り冷やし続けなければならないことになります。一般のプールのように水を張ったら後は構わないということになりません。使用済み核燃料が熱を出すのですから、そのままではお湯になってしまいます。ですから、貯蔵プールの水は常に冷たい水と交換しなければならないわけです。そのための設備が「冷却ポンプ」となるわけですが、それが止まってしまったら?貯蔵プールの水が煮えたぎり最後には使用済み核燃料が溶け出す危険があるわけですね。
恐ろしいことに、11月19日六ヶ所核燃料貯蔵プールで「冷却ポンプ」が9分間停止するという事故が起こってしまいました。作業員の手順違反が原因だとされていますが、貯蔵プールの安全を確保するはずの「冷却し続ける」ということができなくなるような施設だということは、「安全性を確保した施設」とは言えないのではないでしょうか。

他に考えられる危険性として、地震で貯蔵プールに亀裂が入り水抜けが起こることですね。水抜けが起きたら、水面から核燃料が顔を出し崩壊熱によって溶け出すことになります。最後にはメルトダウンまで行ってしまいます。その場合、使用済み核燃料が原発何基分貯蔵されているかということも重要ですね。つまり、チェルノブイリ原発が1度に何十基も吹き飛ぶことになるのですから。
そんなことになったら、六ヶ所だけ、青森県だけで済むはずがないでしょう。日本壊滅のシナリオですね。



他の危険性はないの?

あります。再臨界を起こす危険性があります。使用済み核燃料の中には核分裂するウランとプルトニウムも含まれているわけですから、再臨界の確率を0(ゼロ)にはできないわけです。貯蔵プールが原子炉になってしまうわけですね。推進側が、原発の安全性について話す時、「多重防護システムだから安全」という言い方をしますね。燃料被覆管・原子炉圧力容器・原子炉格納容器・原子炉建屋などの頑丈な壁によって守られているから、放射能が外部に漏れることはないと言います。その上、制御棒・緊急炉心冷却装置(ECCS)などのシステムを備えているから絶対安全なのだといいます。
では、使用済み核燃料貯蔵プールには「多重防護システム」はあるのでしょうか。残念ながらまったくと言っていいほどないのです。
もしも、再臨界が起こったら。止める手立ては何一つありません。早い話しが、諦めるしかないと言うことです。

ところで、使用済み核燃料は発電源にウラン235という核物質を使うかぎり増え続けるわけですが、既存の貯蔵プールで足りるのでしょうか。今後の計画を見てみることにしましょう。

日本に貯蔵されている使用済み核燃料は、2000年末までに約1万トンUになります。1年間の発生量は900トンU〜1000トンUになりますから、再処理が本格操業するまでに、さらに4000トンU〜4500トンU発生することになります。そして、再処理されるのは年間800トンUですね。2005年7月以降、再処理が開始されても年間100トンU〜200トンUの使用済み核燃料は処理できずに増えつづけることになります。
一方、増え続ける使用済み核燃料に対処するため原発サイトの貯蔵プールを増設したりしていますが、1999年9月末の使用済み核燃料貯蔵容量は1万2600トンUでしかありません。
再処理が計画通り800トンU処理できるとは思えませんし、かなり早い時点で貯蔵プールはパンクするものと思われます。そうなると原発を動かすことができませんので、パンクして原発が停止しないような対策を立てたというわけです。



原発の停止を回避するために考え出した3つの方法

@ 高密度貯蔵

原発サイトの貯蔵プールでは、これまで使用済み核燃料を入れていた容器(ラック)を改造し、これまでより多くの使用済み核燃料を貯蔵するようにしました。燃料の間隔を40センチから30センチに狭め、容量を1.7倍にするように決めました。
貯蔵プールに入れる使用済み核燃料を増やすことは、再臨界の危険性が増すということになります。もう一つ、冷却問題もあります。使用済み核燃料が、強い放射線と崩壊熱を出し続ける物体であるため、プールに入れる量が多くなれば当然発熱量も増すことになります。

A 乾式貯蔵

これまでの貯蔵プールでの方法を湿式貯蔵といいます。それに対して乾式貯蔵とは、水に漬けないで使用済み核燃料輸送容器(キャスク)のような巨大な金属の円筒容器に入れて貯蔵するという方法です。これは、今後の主流になると見られています。原発敷地内外の使用済み核燃料貯蔵施設に、乾式貯蔵容器が累々と横たわることになります。
乾式貯蔵の安全性を高めるためには、腐食の少ないかなり高価な金属を使ったり容器を小さくしたりしなければなりません。経済性を重視すれば、はっきりいって厄介物の使用済み核燃料のためにそこまで経費をかけられないということになります。結果、安全性の切捨てが行われ、できるだけ大きな容器に大量の使用済み核燃料を入れるということになりました。
乾式貯蔵の安全性とは、容器自体の安全性、すなわち放射線を遮蔽することや冷却が持続可能であることが絶対条件となるわけです。

容器の危険性

98年10月、福島原発から六ヶ所村にテスト搬入された使用済み核燃料輸送容器の中性子遮蔽財のデータがねつ造・改竄されているという内部告発がありました。調査の結果、内部告発通り東京電力・関西電力・四国電力・九州電力などほとんどの容器が不良品であったことが判明しました。
ところが、調査検討委員会と科技庁・通産省は、中性子遮蔽材の合格基準そのものを下げてしまいました。この事実は、裏を返せば中性子を遮蔽する技術がないということになるのではないでしょうか。
使用済み核燃料の輸送中、あるいは貯蔵中、JCO臨界事故で有名になった中性子が環境に放射されることを意味します。

B 巨大貯蔵プール新設

すでに完成した六ケ所再処理貯蔵プールは、使用済み核燃料3000トンの容量です。福島第一原発は1号機から6号機まで6基が運転されていますが、この6基分の使用済み核燃料を一括して貯蔵する共用貯蔵プールを建設しました。
六ヶ所の3000トンを考えてみましょう。柏崎刈羽原発110万キロワットの核燃料は132トンです。六ヶ所の貯蔵プールが満杯になった場合、110万キロワットの原発約23基分の使用済み核燃料が貯蔵されることになります。このプールで再臨界、あるいは冷却不能に陥ることを考えると空恐ろしくなります。チェルノブイリは、1基であれほどの被害をもたらしたのですから。


もう一つの危険な話

使用済み核燃料の貯蔵プールの容量を1.7倍にしたり、巨大な貯蔵プールを建設しても原発敷地内での貯蔵だけでは溢れてしまうわけです。そこで、「使用済み核燃料は原発敷地内で管理をする」と規定していた法律さえも改正し、敷地外での貯蔵もできるようにしてしまいました。
それが、中間貯蔵施設といわれるものです。今後、日本全国の地方が狙われることになるでしょう。

青森県のむつ市が、愚かにもすでに名乗りを上げ立地調査の方向へと進んでいます。「使用済み燃料は核分裂をしない安全なもの」と言ったむつ市長ほど愚かな首長はそんなに多いとは思いませんが、中間貯蔵施設を回避するためには自治体の首長・議員・一般市民が使用済み核燃料そのものの危険性を知った上で、明確な「拒否」の意思表示をする必要があると思います。
繰り返しますが、使用済み核燃料は原子炉の中にあった核燃料であり、新燃料よりもはるかに危険な放射能を大量に含み、多重防護のない施設で貯蔵されるのです。再臨界・メルトダウンの危険性が常に付きまとう代物なのです。



ちょっと一言

使用済み核燃料を表現する時に、「死の灰」・「100万年単位で管理しなければならない厄介な物」とか、あるいは推進側が言う「リサイクル燃料」などがある。リサイクルできるものが5%に満たなく、取り出したプルトニウムの使い道の目途さえ立たない状況で、「リサイクル燃料」と言うのは厚顔無恥といわざるを得ない。
使用済み核燃料は地球上に存在する毒物の中でも群を抜いている。100万年にわたって環境からの隔離が絶対条件となる。そんな長期にわたって、この絶対条件をクリアすることが可能だろうか?
このような危険物質と背中合わせの暮らしから開放されるためには、とにかく発生量を最小限にとどめる必要があるだろう。その為には原発からの早期撤退しかない。その上で、より安全性を高めた貯蔵管理の方法を検討する必要があるだろう。現在、官僚・原発族議員・御用学者達が進めようとしている「安易な処分」ではなく、環境中に出さないための貯蔵管理にするしかない。
発生させられた使用済み燃料は現実に存在する。それから身を守るためには、「原発の電気を拒否する」・「安全性を高めた貯蔵方法の要求」をする必要があるだろう。
良識・理念に裏付けられた圧倒的な市民パワーが必要なのである。


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