動脈管開存症(PDA)

どんな病気? 原因は? 症状は? 合併症は? 治療は? お家ではどうする?

どんな病気?

 赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときは、肺で呼吸をしていないため心臓に戻ってきた血液を肺に送る必要がない。そのため直接大動脈に流れるように、動脈管という血管が存在する。この動脈管は出生後、数時間で自然に閉鎖するが、正常な場合でも出生後3〜12日間は開存することもあり、新生児の新雑音の原因となることもある。4〜8週間後には閉鎖する。
 
 この動脈管が閉鎖しないために心臓から拍出された血液の一部が大動脈から開存した動脈管をとおり肺動脈に流れるために、肺と心臓に負担がかかる。比較的頻度の多い先天性心疾患のひとつである。

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原因は?

 出生後肺呼吸をはじめると、母体内で臍帯を通して酸素を受けていたころに比べると2〜3倍もの高濃度の酸素状態になる。動脈管は血液中の酸素濃度に対しての感受性が高く、出生後動脈血の酸素濃度が上がると、動脈管は数時間で自然に閉鎖する。
 しかし未熟児の場合はこの酸素濃度に対する感受性が弱いために閉鎖せず開存したままのこともある。
 乳児期以降に発見されるPDAは先天性心疾患の中で5〜7%。大部分は特に症状もなく経過する。
 PDAは他の心疾患の症状を補うために開存していることもある。多くの場合原因は不明だが、一つとして考えられているものには、胎生早期の母親の風疹感染が考えられている。(風疹にかかったことがない、予防接種も受けたことがないお母さんは妊娠中風疹にかからないようにしましょう。予防接種は受けておいたほうがいいですね

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症状は?

動脈管開存症の血液の流れ
 細い動脈管開存では心雑音がきこえる程度。
 動脈管の開存が太いくて、血液が多く流れ込んでいるほど、症状がはっきりでる。
 
 動脈管が開存しているために肺動脈は右心室と大動脈からの血流を受けるので肺への血流量が増え、肺動脈の拡張をきたす。このため肺動脈の圧力が高くなり息苦しさや息切れ・チアノーゼがみられたり、肺に血管内の水分が染み出すために、水っぽい痰が増えたり、咳が出たりする。

全身に必要な血液を送り出すために、左心室は動脈管から肺動脈にもれる分より多くの血液を押し出そうとするために仕事量が増え、左心室肥大を起こす。
 大動脈から肺動脈へ血液が逃れるので、最低血圧が下降し、速脈(脈拍が急に大きくなったり急に小さくなったりする脈のこと)となる。
 肺血管抵抗が増すと肺高血圧症となり、ついには肺動脈から大動脈への逆シャントが起こり、肺に行く前の酸素を含まない血液が身体を回るようになるためチアノーゼを起こす。
 動脈管が太いほど、心不全を生じて呼吸困難、体重増加不良などの症状を生じる。

 多くは無症状のことがおおいが、運動時の呼吸困難・動機・疲れやすさなどが挙げられる。
重症例では乳児期から心不全症状が見られる。

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合併症

 心不全や細菌性心内膜炎を起こしやすい。
感染の予防が必要です。
細菌性心内膜炎とは?
静脈内に進入した細菌が心臓の内膜に病巣を作り、心臓の弁の破壊などをおこす病気。
静脈への細菌の進入がもっとも起こりやすいのは、虫歯の治療や歯を抜いたときに起こりやすい。そのため虫歯を作らないようにすることが大切。歯の治療を受けるときは、動脈管開存症であることを告げ、指示に従って抗生物質を飲む必要がある。

 乳歯が抜け替わるときも出血することがあるので、歯の抜け替わる時期には用心のため主治医から抗生物質をもらって準備しておくとよいでしょう。

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治療は?

 細い動脈管開存では生後1ヶ月くらいで遅れて自然に閉じることもありますが、それ以上経過を見ても自然に閉じることはほとんどありません。

緊急を要するオペではないので、集団生活に入る前を目安に手術をすることが多いです。
予後は比較的よい。オペ自体も安全性が確立されている。全例オペの適応となる。人工心肺は使いません(心臓を止めないで手術をします。)。
左脇の下からアプローチし、動脈管をしばって血液が流れないようにします。

未熟児の動脈管開存症では、いったん安定した呼吸状態が悪化したり、肺出血・心不全を起こすことがあるので、胸部レントゲンで心拡大や肺血管陰影の増加が見られた場合には直ちに内科的治療を開始する。メフェナム酸(ポンタール)やインドメサシン(インダシン)の内服を行うが、副作用も強く、腎機能障害、腹部膨満、腸管出血等の消化器障害、出血傾向をおこしやすい。

 最近ではカテーテルの先端に動脈管を閉鎖するための栓をつけて大腿静脈(足の付け根の太い静脈)から心臓へ進め、動脈管に栓をする治療法なども行われるようになってきている。この方法は手術より体にかける負担も軽く、傷も残らない。
 

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お家ではどうする?

 手術予定のある場合は、手術に備えて、風邪などひかないよう体調を整えます。

 風邪や発熱も普通の子とおなじ対応でかまいませんが、心不全の治療をしている子やチアノーゼのある子は容態が変わりやすいので、早めに主治医の診察をうけましょう。

 歯の治療や抜歯には十分な注意が必要です。(合併症の項を参照

 予防接種は、心不全やチアノーゼがある心臓病の子供が、百日咳、麻疹、インフルエンザにかかると悪化することが考えられるので、積極的に受けることが勧められています。主治医に注意すべき点があるか前もって確認し、接種の時期を選びましょう。

 動脈管結紮術の後は、全くの健康な子供とおなじに運動もできるようになります。

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