3-500Z/50MHzアンプの障害と修理(May 6. 2008)

久し振りに1997年3月に製作した3-500Z/50MHzリニアアンプに電源を投入した。
ところがその直後内部でバチッ音。紛れも無い高圧のスパーク音である。その後繰り返しバチバチやるので恐ろしくなり電源を切る。
暫くして再び電源を投入しても状況は変わらない。フロントパネルの覗き窓からステンレスネット越しに3-500Zの様子を診ると球の下部に薄紫色のグロー放電がある。
こりゃ可笑しいと上下カバーと終段ボックス上蓋を外し調査に入った。

調べると(回路図はこちら)・・・。
@何らかの原因で高圧HVの負荷側でスパークが発生しそのタイミングで高圧が瞬間地絡・・・高圧側が地落すると高圧リターン(コールド側)回路がGND(シャシ)に対して-HVの電位になる。このためリターン回路とシャシ間に接続された部品が障害を受ける。
Aリターン回路はIp(FS=500mA)を読むための抵抗1Ω(R5)と倍率器960Ω(R6)が組み込まれている。
Bリターン回路とGND間にはIg(FS=250mA)を読むための抵抗1Ω(R7)と倍率器460Ω(R8)が組み込まれている。

Cリターン回路とGND間にはリターン回路が不用意に浮かないためにBに影響を与えない値の接地抵抗200Ω(R13)が組み込まれている。
D状況はABの1ΩとCの200Ωが破断状態、ABの倍率器はメーター切替SW操作時に不具合(前者は断、後者は600Ω台に値上がり)になったと推測。
Eスパーク痕は目視では確認できない。
F上記抵抗類を良品に交換し電源投入すると再びバチッ音。
G高圧平滑基板のプリントパターンに製作時に付いたと思われるカッター・キズがあり、ここが経年変化で腐食しパチパチ音を放っていた。両波倍電圧整流でコールドブロックとホットブロックにケミコン(220μF/500V)3個を直列接続しているが、コールドブロックの1番目と2番目をつなぐプリントパターンにキズがあり腐食。
H腐食部分にハンダを流して救済、完全復旧となる。

所見・・・平滑ボード以外にスパーク痕が無い事から、平滑コンと分圧抵抗が丸ごとカッターキズで隙間になっているため、ここででスパークした模様。最後にパチパチやっていた部分でガラエポ基板に炭化が見られ成長していた。当初は分圧抵抗は別ルートでつながっていると思い込んでいたので発見が遅れた。直熱管はフィラメントを灯すと直ぐ導通状態になり、内部抵抗が∞(或いは数十MΩ)から一気に低下し回路が出来るため上記隙間でスパークしたと考えらる。工作時にプリントパターンをカットした際、カッターがオーバーランして付けたキズをそのままにしていた結果だ。11年の経過でキズが腐食し半断状態になり、高圧が印加される事でパターンが飛び放電に至り、その際に基板を炭化させて行ったと思われる

・・・そもそもリターン回路の電位が不用意に上昇しないように、メーター回路(主にIg)に影響を与えない範囲の値で組み込むのが通例である。その抵抗が破断しているので部品の電力量アップなどの対策が必要と思われるが限界がある。何を最優先させるかと言う考え方の領域に入ってくるのだが、高圧回路の保護は本当に難しい。不用意な電圧が発生しないような構造や部品の選択。不具合が発生した時の壊され方、保守のしやすさなども考慮した造りが必要となってくる。今回は製作以来非常に良好に動いていたアンプでの不具合だったので信じられなかったが、色々な教訓を残してくれた。なお接地抵抗は200Ω10W(5Wから変更)であるが、高圧地落時に抵抗救済のためシリコンダイオードを並列接続(GND→リターン回路向き)した。
アンプは無事復旧し50MHzで500W出力が得られた。約30分の連続キーイングを行ない問題の無い事を確認した。


余談・・・1997年当時、50MHzの最大電力は500Wだった。その後1KWに増力されたが、当時はそこまで想像も出来ず500Wで満足していた。今なら、電源トランスの鉄心をギリギリまで積み上げ、電圧も無負荷で3.5KV程度まで上げるに違いない。また出力取り出しはリンクコイルではなくπL型にするだろう。色々経験すると手を入れたくなるが、50MHzの1stショートリングバリL&3-500Zアンプなのでこの状態を記念に保存したい・・・本当だろうか?。

写真上は終段ボックスの上蓋を外して覗くショートリングバリLとEimacの3-500Z。高圧リターン回路からの接地抵抗は、写真右上の高圧平滑基板左横に見える白のセメント抵抗。
写真右はシャシ内部の様子だが入力側は露出しており意外とラフな作りだ。中央の平ラグに不良になった抵抗群が乗っている。右下には前述のセメント抵抗の裏面が見え、ダイオードが並列になっているのが分かる。

今だったら・・・写真左は背面の配線状況。3-500Zプラグやソケットの冷却を考慮してか底のカバーを外すと全てが丸見えでガラガラの様子。
入力同調回路が剥き出しで入力同軸ケーブルがそのままコイルのタップになっている。今ならカバーを外しても特性が変らないように、また冷却を考慮した金属シールド箱を儲け入力はコネクタ処理するに違いない。出力リレーボックスも同様で密閉シールドし、同軸は必ずコネクタ処理する。
フィラメントRFCは適当なボビンが無かったのでホーロー抵抗に巻いている。これも小型化を図り巻線抵抗を軽減するためにコアに巻くだろう。
それから今回の本題だった中央平ラグの抵抗群はもう少し交換が容易な形にするだろう。
写真では見難いが入力同調VCには何と6:1のボールドライブ(梅沢製)が使われている。これはどう見ても過剰投資であった。
それからシャシに添わせたGND強化を狙った平編み銅線・・・この効果は怪しい。DCの世界じゃなくVHFは長さ・面積・大きさの世界になって来るので効果は無いと思う。むしろRFリターン電流によるシャシ駆動の軽減を考慮した方が良い。
時間が経過し一定の運用実績があると、拘りや思い込みも程々にした方が良い事に気付いてくる。