アパートに給電するBehind-Antenna(ビハインド・アンテナシステム:仮称)の実験

単身赴任したアパートは鉄骨2階建てだがアンテナエレメントを張り巡らすスペースが無い。というより住宅街でアンテナを張ったり建てたりは目立つので新参者としては思い切れない。いかにもアマチュア無線をやっています風な身のこなしが中々出来ないのである。そうしたアパマンハムの思いを何とかオンエアに結び付けようと考えたのがここで紹介するビハインドアンテナである。
構造はいたって簡単で、ベランダの手すりと屋根を取り巻く金属片にATU(AutomaticAntennaTuningUnit)経由給電するだけのこと。これで諦めていた3.5MHzのラグチューや、大好きな10MHz/CWばかりでなく、1.8〜28MHzのHF全バンドでの運用が可能になった。

(1)全体構成
ATU(SG-230)をベランダの手すりに引っ掛け、接地側(コールド側)を手すりに、エレメント側(ホット側)は屋根の金属片に接続する。前者は大地に落ちていても浮いていても構わないが、後者は完全に浮いている事をテスター等で確認しておく。
手すりや金属片はボルトやタッピングビスで取り付けられている事が多く、これを緩めてラグ端子処理した電線を共締めする。線材はコールド側は外から見え難いので金属板を用意し端々に所定の穴を開けて作るのが良いが、ラグ端子処理した太目の電線で十分だろう。ここでは32mmSQ程度の電線を使用した。ホット側はなるべく見えない方が良いので細めのステンレスワイヤーがベストだが、ここでは手持ちの関係ビニール電線(アース線)を使用した。
シャックとのグランド間電位を分離するために同軸側にはフェライトコアを挿入しコモンモードチョークとしている。


(2)ATU/SG-230周辺
ATU周辺の配線状況を示す。ホット側は緑電線でエレメントになる屋根を取り巻く金属板に接続される。コールド側は手すりのバーを固定するボルトを緩め、ラグ端子処理したケーブルを共締めする。ATU自身は大した重量はないのでこの様に硬質の針金(クリーニング屋のハンガー)でフックを作り引っ掛けるのが良い。


(3)エレメントと給電点(ホット側)
ATUホット側からの電線は屋根周辺を取り巻く金属片に給電する。金属片は幾つかのブロックに分かれているが、タッピングビスで相互に接続されている。
金属片はアルマイト処理されたアルミサッシの化粧版で、軒先に取り付けられ屋根を一回りする様につながっている。丁度四角いループが浮かんでいるような感じである。大きさは目分量だが10mx20m程もあり結構な大きさである。タッピングビスの一つを緩めラグ端子処理したATUのホット側からの電線を共締めする。写真は金属片の接続部分と接続線のクローズアップである。
しかしこの大きさならループを途中で切り離してその間へATUをかましてループアンテナにするのも面白い。


(4)コモンモード処理
シャックからATUに来るケーブルは制御線と同軸が同梱されているので、まとめてフェライトコアを被せる。もし大型のコアがあればそれに巻きつけた方が効果が得やすいだろう。この処理の目的はシャックの電位とアンテナの電位を切り離す(絶縁)するためのものである。送信中にケーブルに高周波が乗りシャック内に悪戯をしないように対策しておく。同軸や制御線及びリグがアンテナの一部にならないように・・・。
(5)まとめと今後
以上が当局のビハインドアンテナの概要である。これで念願のHF運用が可能になった。但しエレメントは家の屋根を取り巻いており人工ノイズを拾い易いのは否めない。また豪雨時エレメントや家屋が水に触れるので共振点がずれる課題がある。ビハインドの考えに基づきTVアンテナのステーに給電するのも面白い。大家さんを拝み倒しステーの一角を碍子で絶縁してベランダに引き下ろせば違った結果が出るだろう。また、そこまでやるならTVアンテナポールに直にATUを取り付け、ステーをダイポールにしてしまう手もある。また前述のように屋根周辺の金属板を切り離しループアンテナにするのも面白い。考えているだけで楽しい・・・姿を見せないビハインドアンテナ、皆さんの場合は如何でしょうか。多くの方の追試やご意見を期待します。