CM-2000(Made in China)ダイナミックマイクの特徴(Oct 23, 2007)
最近CM-2000と称するCUSTOM TRYブランドのダイナミックマイクが出回っている。楽器店やオーディオショップ、更にリサイクルのハードオフなどの店頭に大量に並んでいる。価格も定価は\2K程度の様だが\800程度で安売りされている。XLR-3-11C〜6mmPlugの不平衡ケーブルが付属しているが、電気的なスペックや説明書の添付は無く、梱包ボール箱のみでソフトケースも無い。
このマイクは1966年に登場したSHUREの名器SM58シリーズに外形と音が良く似ている。そして知り合いの無線仲間の間で評判になっている事を知り、どの程度のものか購入して確かめてみた。
なおSM58シリーズには現在、SM58-LC(ケーブル無)・SM58S(On/Offスイッチ付き)・SM58-CN(ケーブル付き)とBETA58Aがリストされている。CM-2000はSM58Sを摸したものと思われるが、良く見るとスイッチの先にSM58Sでは見えるビスが無い。

左は試験的に購入したCM-2000が2本。初期のSHUREのダイナミックマイク545SD565SD等に見られたスイッチが付いている。これを素人のマイクと思うのは自由だが、ビスを緩めて金具を180度回転させればスイッチをロックできる機構は有り難い。以下に気が付いた点(SM58比)について記した。
@グリップは長約1mm長く、各部ネジサイズは同じで互換可能
Aウィンドスクリーン中央のリングの幅が広い
B内部配線がツイストしてない・・・誘導を拾い易い?
Cマイクユニットは酷似している・・・出力レベルは同等、同一品かも
D同ユニットシールド端子がコネクタGNDに未接続・・・ノイズを拾い易い?
E重量が軽い
Dグリップコネクタ部のくり貫きが違う(穴が1個多い)
E塗装色が気持ち明るい
F社名・型名が印刷(シールではない、最近はSM58も印刷?)
Gグリップ内のチューニング用充填材が異なる
HSM58の音作りに似ているが、よりf特が広い
I音源から離した時急激に音がやせない・・・PA・回り込みに弱い?
J普通(PAしない)のボイス集音(無線用を含め)には向いている
Kスイッチはホット&コールドをショート型
Lマイクトランスは使っていない・・・これがf特が広い理由かも知れない

左がCUSTOM TRYのCM-2000で右が本家本元SHUREのSM58。
右のSM58がやや小さく見えるのはカメラのレンズがワイドなため。
SM58は日本に上陸した1970年前後は未だ1$=\360の時代で、国内での販売価格は\62Kにも達した。
現在は円高や流入ルートの多様化による価格低下で、\15K程度で入手できるようになった。
ただ最近のSM58は"Made in Mexco"の物が多く、Made in USA時代の音とは変わってきたと音屋さんは言う。
30年ほど前にPAのサービスを行なっていた頃は高値の花で、とても手が出ず国産品に甘んじていた。 しかし今はその国産品より安くなり、とんでもない時代になったと思っている。
そして、そこそこの音作りの模倣品が\800程度で入手できる現実を見ると、やや複雑な気持ちになる。
それにしても、発売から40年を過ぎても生産され、第一線で愛用され続けているダイナミックマイクは他には見当たらない。
このツーショットはSM58には失礼かもしれない。


所 見
ヘッドホンモニターで比較すると、SM58をベースに低・高域が伸びワイドレンジな音作りである事が分かる。ただPAを意識して作られたSM58のように、オフした時の急激な音のやせが無い。したがって無線運用を含め通常の収音にはMC-2000の方がベターに思える。
しかし購入後の信頼性を考えると「\800」をどう見たら良いのだろうかと私的疑問が残る。音はまずまずだから、知らないで使うだけなら問題は無さそうだが・・・皆様如何でしょう?。

価格が安い分それなりの作りが垣間見られますのでご参考まで・・・例えば。
@配線・・・グリップ部を回して数回分離するとマイクユニット側かSW側が断線する、ユニット筐体の接地処理が無い
Aハンダ付け未熟・・・ハンダ付けは素人細工そのもの
B部品が良くない・・・内部配線材料は被覆の太さに比べ芯が細く切れ易い、コネクタ部のPin番号表示@Aが逆の物があり混乱する
C附属ケーブルは不平衡・・・XLR-3コネクタのB番を@番に接続し不平衡処理、ケーブルは単芯シールド線
Dマイクトランス無し・・・不測のDCが掛かったりするとマイクユニットへ強烈なストレス
E見えない所は手を抜く・・・上記の如く全体にその傾向が強く外形に惑わされる感が強い

ハードオフには最近SHUREのマイクロフォンが並べてあり驚く。SM58は\15Kを切る金額であり、BETAシリーズもあり、またカラオケを意識したのかSW付きの減価版もある。最初は模造品?と思ったがMade in Mexcoで間違いなくSHURE製であった。