チップ型ターミネータを使った800Wダミーロードの製作

Florida RF Labs社のチップ型ターミネータ32-1005(50Ω/800W)を使い、乾式の800Wダミーロードを製作した。簡易なデータはTest&Dataコーナーで紹介している。この製作は以前入手した日本電業の500W(推定)乾式型のダミーロードの故障修理という形で実施した。故障の原因はよくある過大入力である。元々100Ωのターミネータを2個並列にして50ΩにしてN型コネクタに接続する一方、くり貫いたアルミブロックに収められ、それぞれが両方から放熱器に接触し放熱をする仕組みであった。今回のターミネータは800Wの片面フランジのため同じような構造が採用できない、と言うより大型でアルミブロック内には収まらない。必要最小限の作業でダミーロードとして形が整う方法をまず考えた。即ち2個の放熱器の接続はアルミブロックで行い、ターミネータは片方の放熱器にマウントする事にした。
写真左はマウントしたターミネータとN型コネクタを幅約8mmのリン青銅板で結んだところ。本来ならグランド面との静電容量を確保するためにテフロンシート等を挟み込んだ方が特性が伸びると思われるが、525MHzでは前述のテスト時とほぼ同等であった。写真右は、リン青銅の通過部分をヤスリで削り落としたアルミブロックと位置合わせをしている様子。写真でも分かる通り高周波のシールドは完璧ではない。

結果は予想はしていたが片側の放熱器の温度が上昇し、2個含めた放熱効果が得られていない。アルミブロックをやめ、放熱器にフライス盤で穴を掘ってターミネータを収め、放熱器同士を直接張り合わせる等の工夫が必要である。そうする事により放熱も2個の放熱器で均等に行われ、併せて高周波のシールドも完全になる。しかしながら現状でも800Wダミーロードとして十分機能する。電気的特性は前述の通り525MHzでSWR=1.05(Kuranishi BR-400で測定)と全く問題はない。写真はリニューアルされたダミーロードをBR-400で測定中のスナップ。32-1005は国内の代理店として扶桑商事があり、オーナーは大阪営業所のご好意で入手した。


その後放熱器が片側だけしか有効に使われていない事が気になり、片側を削り込み2台の放熱器を張り合わせる事にした。マウントした側はそのままとし、突起部分を収納できるようにもう一方をフライス盤で削るのである。図は削りだしのためのスケッチ図面である。フライス盤は手元には無いので職場のOBであるK氏にお願いする事にした。図にあるようにいきなり13mmの深さを彫るには負荷が大きいので、予め程よきサイズのドリルでくり貫きを行っておく。




フライス盤によるくり貫きが完了したとK氏が放熱器を持ち込んでくれた。コネクタの取り付け位置を決め2mmのドリルで放熱器に穴を空け、2.6mmのタップを立てた。ここでターミネータ側の放熱器にNコネを取り付け配線を行う。更にくり貫いた側の放熱器と突合せビス締めする。この際シリコングリスを程々に塗り込み、両方の放熱器が均等に温まるようにする。
写真左は突合せる前の放熱器。くり貫きの精度はここでは余り必要としないが、Nコネのフランジの関係で深さは13mmでくり貫いている。写真右は最終的なドライ型のダミーロード。放熱器同士を直接突き合わせるようにした事により、オリジナルより20mm幅が小さくなっている。
SWR特性は今までのデータと変わらないが、測定器の関係で525MHzまでしか測れない。恐らく1.2GHz程度までは実用できるものと推測する。自然空冷で500〜600W連続ドライブすると相当な熱になるので、空冷又は油冷にして熱を逃がす必要がある。これで一度死んだダミーロードが完全復活した。



ドライ型ダミーロードの実運用

ドライ型(乾式)ダミーロードの実用風景です。写真の上側が製作し直した物で下がオリジナル。アンテナ関係の専門メーカーである日本電業の名盤が張られているが、スペックや何処で使っていたかは不明である。入手先によればオリジナルは500W程度との話であったが確かなところは分からない。そのオリジナルにキーイングした1KW/145MHzを放り込んでいたらダミー抵抗素子(100Ωx2個)が破壊してしまった。現在は下側のオリジナルはを同軸ケーブルアッテネータ(5D-2W/60m=-10dB/145MHz)挿入しKWダミーとし使用している。Florida RF Labsの32-1005ターミネータを組み込みリメイクした上側は、HF用に使用している。両者は共に机の下に置き活躍しているが、冬場はヒーターとしても機能する。オイル式は冷却の効率が高く良いのであるが、あの匂いと膨張や沸騰し漏れ出すことがあり室内には馴染まない。それを考えるとドライ型は環境を選ばない品と言えるだろう。