同軸ケーブルをダミーロードのアッテネータにする

ダミーロードはリニアアンプの調整で最初に必要なツールである。ところがV/UHF帯で使えるKW級の高電力ダミーロードは高価で簡単に手が出ない。そこで登場するのが同軸ケーブルを使ったアッテネータである。

写真左は144MHz用に用意した5D-2W/100mで凡そ10.5dB(≒1/10)の減衰を得たKWダミー。50mならその半分の5.25dBで、目的の電力に合せ減衰量(長さ)を調整すれば良い。同軸ケーブルの電気的な特性は保障されているから、殆んどの場合先端に接続するダミーロードの特性が反映される。しかし、熱については注意が必要である。即ち信号源側(送信機側)の温度がダミー側に比べて圧倒的に上昇するので、ケーブルの放熱を考慮する必要がある。或いは同軸素材に耐熱性のあるものを選ぶ必要がある。

一般のポリエチレン同軸を不用意に束ねたままにしておくと、写真右のように溶け出し場合によっては芯線とシールドがタッチする事があるので放熱には万全を期す。写真は丸め込んだ3D-2Wに1KWを供給し続けた結果で、被覆同士が溶けてつながってしまった様子。扱う電力によっては同軸ケーブルを水やオイルに浸ける等の工夫が必要になってくる。何れにしても手持ちの数10〜100W級のダミーロードを電気的特性を落とさず容易にKW級に変身させる事が出来る。但し、同軸ケーブルには周波数特性がありHF帯の減衰量は少ないのでご注意を!。

同軸アッテネータはハイパワーだけでなく受信系や伝送系にも応用が出来る。マイクロ波帯では、容易に自由空間ロス(例えば7GHz帯1Km=-110dB、5D-2W/約110m)を作ることが出来るので、実験や測定にしばしば応用されている。
左に各周波数帯における10m当りの減衰量を表にまとめたので参考にされたい。