FL-2100ZにGU-74B/4CX800Aを組み込む②(Feb 17~. 2011)
関連情報・・・Yaesu FL-2100Z/Bのテストと改修
はじめに
2011年1月八重洲無線のFL-2100Z(No.9C350040)が転がり込んで来た。2003年にロシア球を組み込もうと購入した同型機が、実はピカピカ状態でとても改修する気にならずそのまま友人へQSY。そして2010年11月再びチャンスが訪れ、遂にロシア球GU-74B/4CX800Aを組み込み込んだ。
その好結果を受けて再びGU-74B/4CX800Aの組み込みにトライした。
今回の狙いは前回とほぼ同様に・・・。
①現状の回路や部品を活かす(オリジナル回路の尊重)
②グリッド接地(GG)・カソードドライブ方式とする。
③前回よりローコストで手間を掛けない
④欲は出さず多少の事には目を瞑る
⑤それでも「へー!」と言われる実力
⑥50MHzを含めたマルチバンダー化(確認のみで実装しない)
⑦その他(今思いつかない)
・・・等など。
写真は前回の改修したFL-2100Z越しに、やや遠慮がちに見える今回のFL-2100Z。さてどうなるか・・・。(2010.02.17)
不要部品の撤去開始。入力バンドSWやπ回路も最初から撤去。
当初動作確認を始めたが、バンドSW周りに不具合があり572BまでRFが達していなかった。修理して特性を確認してから改修を始めようと考えたが、時間が掛かるのでここはあっさりと諦めた。
下はソケット(SK-1A)穴を開ける様子。1号機は小穴を多数開けて打ちきヤスリがけしたが回は89mmの油圧パンチを使った。
ソケットを取り付ける4角の固定部分も打ち抜かれてしまうので固定には要一工夫。ソケットのビス穴が89mm穴の内側に綺麗に収まるので、頭の広いビスを使いソケットを締め付ける。それにしても油圧パンチの威力はスゴイ。鉄板1.5mm厚程度では全く力を必要としない。
89mm穴にSK-1Aを固定した様子と、シャシ内の状況。ビスは平ナベ4mmを使用。シャシ厚が1.5mmあるため、ビスにはΩ型スペーサーを1.6mmメッキ線を加工して作って挿入、ビスが傾かないよう工夫している。このやり方は、ビス(ナット)を緩めるとソケットの角度を自由に変えられるので便利。
ACファンにRL2や入力π回路が撤去されシャシ内はスッキリしている。RL2の入力切替機能はRL1の空き接点へ移動。RL1左の穴はRF入力のRCA-JACK、BIAS設定VRを取り付ける。ACラインをトロイダルコイルに巻いたCMCが見えるがこれは前オーナーの改修でそのまま使う。
下はSK-1Aと周辺の状況。ファン(92mm角)用ポスト(15mmスペーサー)は鉄シャシにファンを当てて罫書き、3mmタップを立てて固定する。オリジナル穴も存在するため、この位置がベストポイントに思える。
出来るところまで作業を進めた。プレートRFCは外側へ約18mm程度移動。その分金属ロッドをあてブロッキングコンとを結んでいる。
1号機の経験があるため、作業は手馴れたものであっという間に進行する。
この後Ecg基板の改修とEsg基板の製作、タイマーリレーの組み込みなどを行えば通電できるようになる。
Esg基板はトランスと共に背面の入力箱に組み込む予定。またBIAS設定VRはシャシ穴から入力箱に向け取り付る。ALC-VRは入力箱の中和TCの金具に固定する。
下はプレートRFC周辺のクローズアップ。1号機と部品配置が微妙に異なっている。(2010.02.20)
EcgとRl電源ボード(PB-1903)を改修。Ecgはトランス巻線13V+6.5V=19.5Vの負3倍圧整流・平滑出力をLM337Tで安定化する。LM337を制御しカットフ電圧と運用電圧を制御する。元々あった負1倍圧の平滑回路のCRは撤去し、そこにLM337Tを実装。ケミコンは耐圧を上げ、特にC305/63WV/100μFは-80Vを超えるので100WV/100μに変更した。
左は基板上面。左下がLM337T。水色の配線はAC19.5V。緑の配線はタイマーリレー駆動用負1倍圧出力(-24V)。下は基板裏面。ちょっと分かり難いが、都合3ヶ所のパターンカットを行いリード線で追加配線を行う。基板への配線はオリジナル配線を流用できるように配慮している。
Esg基板を制作する。回路は1号改修機と同じ。使用するトランスの損失により、基準電圧生成用の20KΩは調整が必要かも知れない。左は基板上面の配置状況。下は基板下面の配線状況。大した回路じゃないのでプリントパターンで量産しておきたいが・・・中々実行に移せない。
出力は300V、20mA流して数Vの電圧降下は良しとしている。トランスの損失が多く降下が大きい時は20KΩを→18KΩ→15KΩと落としてみると良い。
出力300Vを短絡すると瞬時にカットオフされFETやダイオードを保護する…驚くほど見事だ。(2010.02.21)
Esg基板とタイマーリレーを実装し配線処理。電源投入によりDC系の電圧電流を診る。Esg基板は外側の572B穴を塞いだアルミパンチ板固定スペーサーにビス留め。後部箱実装のトランスからAC240Vを引き込み、DC300V出力をGU-74Bソケットへ配線する。
タイマーリレーのソケットは硬質アルミアングルに角穴を開けて取り付る。さらにシャシ側面へタッピングビスで固定。高圧AC(コールド側)とスタンバイ回路を開閉する。
誤配線を確認後、ヒーター、Ecg、Esg、リレー、タイマーリレー等のの電圧を確認する。その後GU-74Bを実装し再び電源投入し同様に電圧確認。
約2分半の余熱後高圧が投入されるので電圧を確認。続いてIpのカットオフや送信時のIpバイアス量を設定(100mA程度)する。暫くスタンバイ状態で様子を観察し異常が無いことを確認する。
と、ところが変!、先日-80Vを越えていたEcgが-76.5~74.5V程度になっている。これだとIpのカットオフせずスタンバイ状態で約20mA(45W程度の損失)流れている・・・要調査だ。
現在は未だ冷却ファン未実装のため長期間の放置は出来ない。エアが流れないと独特の匂いが漂う。未だDC動作の確認なので、カソードRFCはありあわせのもの(カーボニールトロイダルコイル)を仮実装。(2010.02.25)
カソードRFCを変更。今回は#43材のトロイダルコアに6T(約17μH)。併せて60MHzLPFも実装しRCA-JACKから配線。補償抵抗Rkは未実装。
これで7MHz/CWで(40W程度)ドライブすると約700Wを出力。電源はAC100V受電でIp=520mAでEp=1800Vまで低下する。もう100V受電の限界だ。
ファン側にスポンジゴムパッドは挿入しているがチムニィは無し。これでも空気が吹き上げられているためそれなりの冷却が行われており、排熱エア温度は心地良い。高圧ケミコンが活性化するまで出力にリップルが乗る。
左はソケット周りの配線状況。下はシャシ内のボトムビュー。
なお160mと80mでバンドSWのプレート補助C切替接点(S7-a)溶解が発覚。提供者の言われていた不具合はこれか・・・。ショートバーと接点含め無くなっており、バンドSWかウェハーを交換するしか手が無さそうだ。(2011.02.27)
受電電圧を200Vに変更する。電源プラグは15A/250V仕様に変更。これによりAC受電側の電圧降下が抑えられ高圧側もそれに連動した。100V受電で800W出力キーイングを行うとパイロットランプの光が変動し、10分もしない内に受電NFBがトリップする。
7MHz/CW/800W出力(入力40W/SWR=1/Rk無し)で30分間の連続キーイングを実施(Ep≒2000V/Ip≒600mA)。印象としてFL-2100Zのタンク回路定数と電源電圧はGU-74Bに極めてマッチしている。これで電圧降下が無ければ満点をあげられるのだがと思っている。
この際チムニーは無かったが排出空気温度に特段の異常は無かった。無理にチムニーに押し込むよりは上昇気流全体をあおる方が効果があるのだろうか・・・特に54CFM程度のスケールファンではそんな気がする。
動作は極めて安定だが、出力波形に軽いリップルが重畳する。これは高圧電源のリップルと思われる。前項に記した様に高圧ケミコンが活性化するまではリップルが多めに感じる。やはり要交換だろうか。
ちなみに1KW(リニアリティ無視)を出力するためには70W程度のドライブ(SWR=1/Rk無し)が必要になる。ただこの場合Epは1900V程度に低下、Ipはスケールアウトして真の値が分らない。またトランス音とニスの匂いが気になってくる。この辺りの状況はFL-2100Z改修1号機と見事に同じである。
なおスタンバイ時にIpがカットオフしない現象はそのままで、現在30mA程度流れている。19.5Vx3倍圧(58.5V)なので、DCはその√2倍だから無負荷で80V以上は出て来てもいい筈だがそこまで達していない。カットオフ時の負荷(Cg回路)状態が重いのか、整流・平滑回路がおかしいのか・・・今後の課題。(2011.03.02)
カットオフバイアス電圧の改善を試みる。現在カットオフ時のEcgは-76V程度。オリジナルの負3倍圧整流回路は簡易的な処理をしている。一般に3倍圧整流回路はD3出力-D1/D2接合部間をコンデンサでチャージ(2倍圧)するのが一般的。ところがFL-2100Zではその役目をD3出力-GND間に入れたコンデンサとD1出力-GND間に入れたコンデンサの合成で果たしている。これを原理に従い、D3出力-D1/D2接合点間にケミコンを渡して様子を見た。しかし電圧にはほとんど変化は見られなかった。スタンバイ時は殆ど無負荷なので当然と言えば当然のことだが・・・。
それでは最後と手とばかり、電源トランスの隙間にコイルを巻く事にした。細めの耐熱電線KQEを2Tして電圧を見ると2V、すなわち1Tあたり1Vの電圧誘起がある。これを3Tにして13V巻線と6.5V巻線の間に挿入した。これで巻線電圧の総和は22.7Vになり、整流出力は89Vに達した。完璧かと思ったが未だスタンバイ時(Ep=2400V/Esg=300V)にIpメーターの針が少し振れている。これはGU-74Bのばらつきと思われるが、メーター針2・3本の事なので良しとする。電圧は余り上げ過ぎるとLM337Tの入出力電圧差を超えるので注意が必要。
左はカットオフバイアス用に電源トランスに巻いた3V巻線の様子。
余談…電源トランスに補助巻線を追加する手法はひとつのノウハウであろう。数Vの電圧不足や電圧過剰で悩んでいる場合に大変有効である。逆相接続すれば電圧を下げる事も可能だ。
高圧巻線を100~150T追加してて850Vを950~1000Vに昇圧したらちょっと違ったデータが取れるかもしれないが、こちらは絶縁の関係もあるので余りお勧めではない。
こんなことしていると、コアをスペースぎりぎりまで積み上げ、コイルを巻きなおして貰ったらどうかと思いが発展するから困ったもの。西崎電機でやって貰えないだろうか…ここまで来るとオリジナルの半分は何処かへ行ってしまう感がある。(2011.03.04)
円錐筒テフロンチムニーを製作し交換。
左はGU-74Bに実装した様子。固定はガータースプリングで行っている。
この作業は改修1号機も同時に行った。
下はチムニー作成ベンチの様子。円カッターがその主役だ。(2011.03.26)
不具合対策でバンドSWを交換した。スイッチはバーテックススタンダードから平丸ムセン経由で入手。1.9MHz/3.5MHzの動作を復旧させた。
詳細はTest&DataコーナーにFL-2100ZのバンドSW交換として掲示。本件は前オーナーから不具合として伝え聞いていた。バンドSWの接点溶解により、プレート補助コンの開閉が出来ないことが原因だ。FL-2100ZのバンドSWは他のFL-2100シリーズより接点数が多い他に、ウェハーを貫通するシャフト径が通常の6mmより小さい。通常のウェハーに置き換えても空回りする。さらに後で分かったのだが、シャフトとローターは接着剤で固められ容易に分解出来ない。結局取り寄せた保守用部品にそっくり入れ替えた。
バンドSW交換は本PJとは無関係だが、壊れた物を放っておくのがどうも苦手のようで対策した。
1.9MHz/3.5MHz共勢い良く900W超を出力。左は取り外したバンドスイッチ(左)と実装前のバンドスイッチ(右)。下は実装実装状況。(2011.04.14)
随分と遅ればせながらになってしまった。キャビネット上部の排気口を開けるのを失念していてその作業が2年越しになってしまった。89mmΦの穴をキャビネットに開け、ファンガード用のタップを立てた。
この機械をとらえ、ファンのオフディレイ用サーモSWを取り付け本来の形にした。(2013.08.17)
総合回路図(クリックすると全画面表示、予告無しに修正し履歴は残しません)