関連情報・・・Yaesu FL-2100Z/Bのテストと改修
3年程前にネットオークションで八重洲のFL2100Zを購入した。
前オーナーは電監検査のみにこのFL-2100Zを購入したということで、本体は内部も含めてピカピカの状態だ。
購入の目的は使われている真空管572B(2本)をGU-74Bに交換してパワーアップを狙ったのであるが、余りにも綺麗だったのでその気力が知らず知らずのうちに失せ今に至った。
それで今回(2006年)、友人のQRO申請のためにQSYする運びになり、一体どの程度の実力があるのか確かめてみることにした。
調査項目は各バンドにおける50Wドライブ時の出力、特定のバンドの入出力特性、ツートーン特性・キーイング特性等である。
なおデータはあくまでもこのFL-2100Zをオーナーの環境で測定した場合なので、他の環境でテストした場合はこの限りではないことが予想されます。
写真は前オーナーから譲り受けた当時(2003年)のもの。
(1)50Wドライブ時の出力
エキサイタIC-756の出力を50Wに調整してドライブしたとき、出力が最大になるようにチューニング。
Data
FL-2100Z:Serial No.3H 400001(Used AC100V)
Excitor:IC-756
Two Tone Gene:HM-14
CM Coupller:Nippon Dengyo Kosaku
Watt-Meter:Drake WV-4,Bird43
Dummy Load:Bird8890-300
Osilloscope:Tektronix 2225
(2)入出力特性(14MHz)
最大出力になるように出力をチューニング後、5Wから5Wステップでドライブを上げた時の出力を採取。
50Wのドライブでは既に出力にカーブが掛かっている。500W出力を得るには85W程度のドライブが必要だが、グラフを見るとそれは明らかにオーバードライブ。この事実を知らずに100Wエキサイタでフルに押している方がいらっしゃるかも知れない。まぁそれでも何とかなっているのは真空管デバイスに依るところが大きいと言える。
ちなみにAC入力は100Vラインで、5Wドライブ時は約101V、85Wドライブ時は98.3Vであった。
(3)キーイング及びリップル波形(14MHz)
CW長点をエレキーで自動送信し出力を方向性結合器でサンプルしてオシロスコープで表示させる。オシロスコープのトリガ機能が甘いと思う位置での表示がし難い。
波形先端に乗るリップル(ハム)と右方向に下降するサグが気になる。電源の平滑コンデンサの容量不足か容量抜けと思われるが、お世辞にも直流トーンとは言えずちょっと気持ちが悪い。スイープ速度を落とさないと確認できない場合が多いので慎重にリップルを探る。
垂直スケールは3目盛りで500W。オシロスコープの水平スイープ・トリガの関係でスタート位置がスケール左にはみ出しているが、凡その感じはつかめると思う。
(4)ツートーン波形・リニア域(14MHz)
ツートーンも前項と同様に方向性結合器でサンプルしオシロスコープで表示する。この場合もトリガ機能に依存する場合が多いのは前項と同様。
約400Wpep出力時のTwoTone波形。一見飽和まで余裕がありそうだが、実はギリギリでドライブレベルをちょっと上げると次項の様な状況になる。
このレベルではクロス部が弛み切れ込みが甘い。本来ならこのページの壁紙に使用している波形の様に、クロス部下完全に直線状に推移しなければいけない。
(5)ツートーン波形・飽和域(14MHz)
前項の状態からややドライブレベルを上げ出力が450Wpepを超えると途端にこのような状態になる。
ここでもクロス部が弛み、切れ込みが更に悪化している。
(6)まとめ
FL-2100Zの出力は600Wpepという事になっているが、CWのキーイングでは500W程度の出力しか望めない。
またこの領域になると入出力特性やTwoTone波形の先端が示すように、飽和領域に入っている。
したがってSSBの運用においては、この飽和領域を考慮した駆動が必要となる。
なおTwoToneのクロス状態は比較的低レベルの駆動時から確認されており、このアンプの特徴であろうか。
またCWにおいてが非常にリップルの多い波形であり、また結構早めのマーク状態でもサグが見られ短時間の間に出力変動(低下)を招いている。
いずれにしても500W時代のアンプであるのは否めなく自ずとその限界が分かる。・・・チューニング中にプレートが赤くなり気をもませるアンプである。
LB等の併用でオーディオ入力レベルと飽和領域との関係を把握した運用をしないと良質な電波確保につながらないだろう。
(7)参考資料・・・FL-2100Z Modified with GU-74B/4CX800A
FL-2100Zにロシア製真空管GU-74B/4CX800Aを組み込み、1KW申請に使えるようにするプロジェクト。
FL-2100Zをはじめとする八重洲リニア・アンプシリーズのファン必見。
左はロシア管GU-74Bを組み込んだFL-2100Zの雄姿。(2010.12.05撮影)