ヒースキットQM-1がやってきた(Feb 11. 2018)
はじめに
Facebookの真空管無線機のサイトでオークションの紹介があった。早々に入札したところ、他に入札者が現れずゲットとなった。
Qメーターは以前から欲しかった測定機だが、SGとHi-Zプローブのオシロスコープがあれば、直読は出来ないものの取得値の相対比を求めればQ値が得られた。無くても困ることはなかったが、手元に置いておきたい測定機ではあった。三田無線が発売していた時期もあったが、購入を検討しているうちに廃業してしまい、残念な思いをした経緯がある。
QメーターはL(コイル)C(コンデンサ)が直列共振すると、C又はLの両端に発生する電圧の絶対値は供給電圧のQ倍になるのが原理だ。Q=500なら1Vが500Vに化けるとんでもない世界を覗ける。
最近は無線をやっていてもQを論ずるケースは殆ど無くなってしまったが、折りしも1TUBECOMP(One Tube Competition)が真空管無線機サイトで進行中で、RF同調回路にHi-Qコイルの自作が必要なため、実にタイムリーだった。

QM-1フロントビュー
写真はHeathkitのQメータQM-1。 左のダイヤルが発振周波数調整、右が同調容量VC調整。メーターは真空管電圧計。発振回路は双3極管12AT7の半分で発振、もう半分でカソードフォロアする。真空管電圧計は双2極管6AL5で検波後双3極管12AU7の作動アンプで大型メーターを振らせる。電源は6X5の両波整流後、低電圧放電管OD3/VR150で安定化し12AT7発振部と12AU7メーターアンプへ供給している。12AT7カソードフォロアへは非安定で供給している。

上蓋を外したリアビュー
こんなモノで良いのかと思う程単純な造りに驚く。機械的に安定で部品のクオリティが確保が求められている感じだ。
低電圧放電管はGTタイプがオリジナルだがハカマをはかせてMTタイプ(VR-150MT)に変換している。使用真空管も一般的な物(12AT7/12AU7/6AL5/5X4/VR-150)で手持ち品で対応できる。
デジタルディップメータやアンテナアナライザの出力を信号源にして、外部箱にVCとHi-Zの電圧計を用意すれば、Qメーターの自作は 容易である。真空管でも、周波数や振幅レベルの安定度が確保できれば、相応の精度のQメータが組めると思われる。校正は、Hi-Zプローブのオシロスコープ等で容易に行うことが可能。オシロスコープを使う理由は、検波回路のダイオード特性を気にする必要がないから…。

コイルのQ測定
手元にあるコイルやIFTのQを測定している様子。発振機の出力レベルを校正(メータ=0)後、付属の標準コイルでQ値を校正(離調メーターx1位置)する。事前に標準コイルを同調させ、表示が指定の110になる様に内部のTCを調整する。この調整は一度行えば良い。被測定コイルを端子に取り付け同調をとればそのコイルのQを直読できる。
SW電源用のLPFに使われているトロイダルコアは、中波帯(1MHz)では全く共振峰が確認できなかった。ちなみにTRIOの中波波スーパーや高一コイルのQは110程度であった。この値をどう見るかだが、無理して大型のコイルを巻いても、実装の段階で無理が発生することも予想され判断は人其々と言ったところか…。TRIOの小型コイルは扱い易く、複数・多段で使うことで大型コイルを駆逐して来た…と最近考える様になった。

回路図(クリックで拡大)


所見・参考文献
冒頭で記した様に、コイルのQを測ろうとした場合、これまでSGを信号源にしてLC直列共振回路を駆動(L側Hot、C側Cold)し、C側にHi-Z(10MΩ)オシロスコープ・プローブを当てて共振(SG周波数可変)させ、ピーク電圧を取得してSG出力との比でQを求めていた。
その操作が簡単に行え直読できるため、頻繁に使う場合は大変便利である。またコイルの浮遊容量についても直読ではないが、求めたC値から算出できるため、今までは難しかった測定が可能になった。
このQM-1について過去資料を調べると、私が生まれた1954年には製品化されていて驚く。1954年12月号の「無線と実験」誌に、「ヒース・キットQメーター組み立て記」として武田堰氏が執筆された記事がネット上にPDFで紹介されており、貴重な日本語資料となった。執筆者の武田堰氏をはじめ、PDF化作業を勤められた皆さんに感謝する次第である。無線技術が基礎デバイスに対して素直で真剣に対応していた「時代」を感じるのは私だけだろうか。

ヒースキット・組立運用マニュアル…ASSEMBLY AND OPERATION OF THE TEATHKIT MODEL QM-1 Q-METER