KWM-2Aメインダイアルのウェイトを試作(Aug 30. 2008)
はじめに
1993年、米国のダブリンコープより51S-1Bを個人輸入した時のメインダイアルは樹脂製だった。九州のHAM'S OFFICEから硬質アルミ・ムク材削りだしのウェイトノブを購入して取り付けた。
PTOやスラグラックのギア機構とメカニカルカウンターを背負っているのに、随分と滑らかなダイアルだと感心した。R-390Aの様にガッチリ握って手首で回すチューニングではなく、指先で回すチューニングに変わっていたのだ。
2007年5月、長野ハムセンターから待望のKWM-2Aを、FRラジオラボから516F2(電源)を購入しサブ機として楽しんでいたが、どうもダイアルがしっくりしない。その原因は樹脂製軽量ダイアルによる処が大きいと言えていた。
2008年1月、単身赴任先ローカル局のJH9AUB森永氏を訪ねたときに拝見したKWM-2Aは、悔しいけど自分のダイアルよりタッチが数段良かった。
2008年夏、最近3.5MHzバンドが拡張した事も手伝い、良くワッチするようになったがやはりどうも違う。それでウェイトだけでもとネット通販を覗くと目の玉が飛び出そうな値段。世の中皆金持ちになったのかとぼやきながら、樹脂製ダイアルに自作ウェイトを組み込む事にした。
当初は鉛板を丸めようと考えたが、行き付けのホームセンターには気の効いた材料が無く、取り敢えず大型の鉄ナットでお茶を濁す事にした。

構成部品
@写真の上はオリジナルの樹脂製メインダイアルノブ。単体では驚くほど軽く頼りないモノだ。
Aその内側には後述するナット暴れ防止用の充填材料である硬質ウレタン材(黒)が見える。
B左下は21mmΦの鉄ナット。厚さ15.5mm・短辺29mm・長片33.4mm。重さは測っていないが相応の重量が有る。これにメインダイアル固定用イモネジをアレンキーで回すための貫通穴2個を開ける。この穴は5mmとした。相手は鉄の塊なので、電気ドリルと冷却オイルにCRCを流し込んだ。さすがにハンドドリルはキツイ。
C更に右下はナットを組み込んだとき軸方向へに飛び出さないようにするための銅シール。サンハヤトなどから売られている。粘着力があり十分目的を果たすことが出来る。

なお、PTOのグリス硬化や軸受け芯ズレ等によるトルク増加がある場合は、先ずそれらの対策を施し最良のコンディションにしておく。

組み込み
各部品を組み込んだ様子。ナットの周辺にスペースが残るが、ここに硬質のウレタンが押し込まれる。 イモネジを締め付ける時は、このウレタンにアレンキーを串刺しにして行なう。
本来なら鉛シートを15mm幅に切断したものを一杯に巻き込めば、鉛の比重と相まって相当なウェイト効果が期待できる。
しかし現状でも大幅な改善でありチューニング操作が楽しくなる。巷では「シルキータッチ」と言うそうだが、ほぼそれに近い効果が得られている。

鉛シートが見つからない場合は缶等で鋳型を作り、そこに溶解させた鉛を流し込んでウェイトを作る。
参考だが、やや広口の清涼飲料水のボトル蓋が格好のサイズである。
これに16mmΦの円筒を立てて円ドーナッツ状にするか、後でドリルで穴を開けるかすると良好なウェイトが製作できる。
少年時代は融点が低く使い易いため良く鉛で鋳物を作ったものだ。近いうちに一度試して見ようと思う。
SP-600JXのフライホイル効果がある大型ダイアルのタッチは、見事としか言い様が無いらしいが、それを目指したい。

更に重量感を求め鉛の鋳造に挑戦

鉛を溶かす
ホームセンターには鉛が無さそうなので、それではと翌朝一番で近くにある釣具店を訪ねた。
ここには大小様々な釣り用のおもりが揃えてある。どうせ溶かしてしまうので、余り大きくない安いモノを一握り買って来た。またフック等で別の金属を使用したものは敬遠する。予想以上に安く12個\320で驚いてしまう値段だ。
写真は缶詰の鉄缶に鋳型として「アルミボトルの蓋」を置き、材料の鉛を入れガスコンロで熱を加えている様子。しばらくすると鉛が溶けるので、おもりを補充して鉛の量を調整する。一杯になったところで、ガスコンロに振動などを与え気泡を吐き出し火を止める。手で触れるまでには相応の時間が必要なので慌てて触らないようにする。
温度が下がったら中心出しをして穴をあける。鉛なので容易に開けることができるが最終的に16mmΦの貫通には結構骨が折れる。ドリルで貫通した後リーマーで広げていき、最後は16mmΦの皿もみ歯で仕上げた。
最後は「アルミボトルの蓋」を剥ぎ取る。そしてイモネジ用アレンキーを通せる溝を、丸棒ヤスリで削って作る

参考・・・比重:Pb(鉛)=11.34、Cu(銅)=8.93、Fe(鉄)=7.86

鉛ウェイトを組み込む
鉛ウェイトをノブに挿入する。周辺は硬質ウレタンを充填しウェイトの遊びを押さえている。鉛ウェイトはアレンキーがイモネジを回せる位置に調整し銅シールで固定して完成。これで、今までとは比較にならない程の重量感をもつダイアルノブが出来上がる。
写真右の右は最初に製作した超重量ウェイトノブ。床に落とすと間違いなく破損すると思われるので、取扱いには注意が必要だ。
貫通穴開けが以外と手間なので、2個目はアルミボトル蓋に16mmΦの金属円筒を固定し、その周辺に溶かした鉛を流し込んだ。このやり方の方が遥かに簡単であった。写真右の左側がそれ。このダイアルは後述の51S-1Bに当初付いていたモノ。


久しぶりに少年の頃のイタズラの気分を味わった。鉛がガスコンロの上で焼け、溶け出す時に放つあの独特の匂い、それに鉛の液体に浮かぶカス・・・こういう作業は様々な知恵と技術を教えてくれる。そう言えば中学時代に作った100mmΦの鉛フライホイルは何処へ行ったのだろう。
皆さんにも是非お試し頂きたいと思うが如何だろうか。

番外編

51S-1Bとのツーショット
左が長野ハムセンターから購入したKWM-2A。右は1993年、米国ダブリンコープより購入した51S-1B。 ダブリンコープは最近インターネット上を検索してもヒットしなくなった。ひょとして廃業したのだろうか。
購入時は局発水晶不良のバンドが3つ程あり、また機構部も汚れがあってガタガタだった。当時メモしたレストア&メンテナンス記録を見ると面白い。
しかし米国ではこの程度の話は普通らしいと後から分かる。未だインターネットは程遠い時代で、FAXでやり取りしていたことが懐かしく思い出される。色々な意味で受信機の勉強をさせてくれた51S-1Bである。