MFJ-998RT(ATU)の導入(Jan 20. 2013)
タワートップに取り付けるが可笑しい
2013年1月16日、MFJ-998RTが届いた。MFJ社の1.5KW(SSB/CW)ATUである。昨年夏に張ったBuckmasterのOCF-Dipoleは悪くは無いが、拡張があったバンド全域において低SWRで運用するには難があった。
KW運用をシャック側のATUに依存するには余りにも強引と、アンテナ直下に組み込めるATUを探しているとMFJ社がMFJ-998RTとして一昨年製品化していた。国内ではJACOMさんが取り扱っている。
昨日タワー最上部の横バーに引っ掛けるSカンを購入。今朝8時、氷点下の中部材を背負いタワーへ。さすがに冷たくタワートップでは手がかじかむ。
と、ところが肝心の工具を忘れ、硬く締めたOCFバランのMコネが緩められず、目的を果たせない。昼食後リベンジして何とかタワーでの作業を完了。
はやる気持ちを抑えながら、シャック側のバイアスTへDC12Vを供給しRFを送る・・・可笑しい!ずっとスルーのままだ。またまた余計な仕事が出来てしまった。
写真左の2枚はタワーに取り付けたMFJ-998RT。上部はステンレスSカン2個で吊り、下部はステンレス線で仮止め。
写真下はBackmaster社のOCF-Dipole付属の4:1(3KW)バラン。これもステンレスSカンでタワートップから吊り下げている。



カバーを外し中を覗く
電源からATUへは23mA程しか流れていない。SWRは電源の入切りに関係なく一定。RFを入れてもDCがあおられるだけで基本的に変化はない。スルー状態そのものだ。最大1.4Aと謳われる電源容量から考えても可笑しい。1月21日朝7時、気温2℃と比較的暖かい事も手伝いタワーに登りATUを外し持ち帰った。 カバーを取り電源供給するが状況は同じ。それで操作パネルのPOWER釦を押すと、リレー音と共に電流が約150mA流れLCDに動作状況が表示された。電源が入るとこの状態でバイアスTの電源SWを入切りしても今までの様な状況には陥らない。どうやら電源SWが何らかの事情でクリア(オフ)されてしまった模様。当初ワニ口リードで電源供給していたので、接触不良で内部設定に影響を与えたのかと早合点したが、電源SWは機械ロックでそんなことはない。ところでカバーを外す際ビス16本の内1本がやけに固い。慎重に緩めた筈だったが千切れてしまいトホホ。筐体側のネジにビスが残りその掘出しを行うハメに。色々楽しませてくれるが不可解なことが多い。



システム化
このMFJ-998RTはシャックからのRFとDC電源が同軸ケーブルに重畳されている。したがってタワー上で複数のアンテナを切り替えて使う場合は一寸工夫が要る。
各アンテナは殆どの場合DC的に短絡されるバラン(トランス)が入っているから、誤ってMFJ-998RT以外のアンテナを選択するとショートさせることになる。まさか各アンテナにDCブロックコンデンサなど入れる訳がない。
それでどうするか・・・アンテナ切替器のリレー電源を使い、小型リレーを駆動させ、更にバイアスTへ供給する電源を開閉する。こうしておけば誤操作による不具合から逃げられる。またはアンテナ切替器のリレー電源を増力しておけば、小型リレーは必要なく直接バイアスTへ電源を供給することが出来る。
左は後者の方法で対策を講じたアンテナ切替器RCS-8Vの電源部。AC-DC(12V)アダプタを内部に組み込み既設電源とダイオードミックスしている。この場合3番にMFJ-998RTが接続されている。背面端子にタワーのリレーボックスへ送る電源が出力されるので、ここからへ電源をとりバイアスTへ供給する。

ところが・・・
この方法は中々Good!だと思っていたが、運用中にANT切替を行い戻ってきた場合、必ず電源の再投入が行われる。そして、RFが入力されるまでチューニング動作をしない。更に、いきなりフルパワーを放り込めないため、チューニングが出来る環境(出力調整)を整えてあげる必要がある。
これは実際にやってみるとかなり面倒。送信はMFJ-998RTを使い受信状況を別のANTと比較したい場合、別のANTを選択すると一度電源が切れるからMFJ-998RTはスルー、戻した時にもスルーは継続しRFを入れてようやくチューニングを開始する。チューニングデータは記憶されているので1秒以内で元に戻る筈。ところが、MFJ-998RTはフルパワー入れるとチューニングが正常に行われない特徴がある。IC-PW1を使用する場合はプロテクションが働いてしまう。このため一度エキサイタ出力を下げるかリニアアンプをスルーにするなどして、MFJ-998RTのために適切な電力に落としてやる必要がある。
と言う事で、電源をANT切替に連動させる手法はやや柔軟性に欠ける。もっとも上記の様な操作をしなければ問題は無いが…。 この対策として以下のどれかが必要である。
@運用中はMFJ-998RTの電源を切らない
AMFJ-998RTへ直接電源給電する
B切替器側(リレー箱)でDCカットする
…これで目標を達成できる筈だが、DCカットCを挿入することにアレルギーを持たれる向きも有るかも知れない。
MFJ-4117 バイアスT(BIAS-Tee)について
写真はMFJ-998RT付属のバイアスT。LとCを組み合わせRFとDCが相互に干渉しないように合成し、1本の同軸でATUへ送る。
RFは下のMコネから上のMコネへ青セラミック(x2パラ)を経由し通過。DC(12〜15V)は下のコネクタから右手スライドSWとRFC(黒)を経由して上のMコネから送られる。DCは青セラミックでブロックされ下のMコネには現れない。RFはRFCとSW側の茶セラミックで構成するLPFで電源側への漏れを遮断する。
筐体はアルミを折り曲げただけで水が漏る程の荒い作りでUSAらしい。KW級を扱うならアルミダイキャスト箱にしたいところだ。自作は簡単だが通過電流を考慮するなどコンデンサの選択には注意する。
MFJ-998RT本体にも同様の回路が組み込まれ、制御ボード用のDCをLPFで取り出し、RFはC経由でATUへつながっている。


運用実績
ANT:OffCenterFed Inverted Vee+MFJ-988RT RIG:IC-756+IC-PW1

@OE2013K 2013/01/22 2211/UTC 3.518MHz/CW 599/599
  AK4JPD 2013/01/24 1251/UTC 3.503MHz/CW 599/589
BJN4UCA 2013/01/24 2313/JST 3.568MHz/SSB 59/59
CBV2013LF 2013/01/27 1419/UTC 3.505MHz/CW 599/599
DJA2LWO 2013/01/28 0007/JST 3.571MHz/SSB 59/59

写真は1月23日、日の出前の7時頃、整備を終えて再セットされたMFJ-998RT。実に綺麗に収まっている。この日から1.8MHz〜50MHzまでの運用が可能になった(50MHzは電源オフによるスルー運用)。
前述した課題もあるが、アンテナSWRを気にしながらの運用から開放され快適そのものである。
タワーはクリエイトのKT-22R。タワー上は10MHz3ele八木。マストには更に14/21/28MHzトライバンド4ele八木、50MHzのHB9CVが搭載されている。タワーの向こう側にAmeritronのアンテナ切替器RCS-8Vが見える。

関連情報・・・備忘録「My MFJ-998RT History & Memorial since Dec 2012」(Feb 11, 2014)

余談・・・千切れたステンレスビスを掘り出す方法
MFJ-998RTは16本のステンレスビスでカバーを固定している。そのうちの1本が何故か固く、だましだまし緩めたが途中で千切れてしまった。千切れた半部は筐体側のネジに残ったままである。ビスの径は1/6インチと見られる。 この場合、ステンレス用のドリル(3.2mm)をネジ回し用の電動ドリルへ取り付けて、残ったビスの中心を外さないようにしてゆっくりとさらう。これをある程度の深さまで進めると残ったビスが雪崩落ち筐体側のネジを復旧させることが出来る。CRC5-56等を薄く流して作業すると効果的。
写真の短いビスが千切れたもの。ドリルの歯の切れ味がモノを言うので、ステンレス用ドリル歯は必須。
正直なところ「そんなことまでするの?」と言うのが本音だが、MFJ製品を購入するときはそれ位の覚悟が必要である。