50V電源(ADA1000F-48)で動作させる
COSELのSW電源ADA1000F-48が到着した。工場出荷時は出力48Vなので、微調整VRで50VにセットしてHPA電源として供給してみる。HPA側の動作確認と電源の動作状況の確認だ。ADA1000F-48は数字が示す様に1KWの能力がある、COSELのサイトによれば自然空冷と強制空冷で取り出せる定格電流が異なる。例えば強制空冷時は21A/ピーク41A、自然空冷時は16.5A/ピーク41.5A(AC200V時)と言った具合だ。
先ず600W出力で60分CWキーイング時の温度上昇を確認した。また電圧が上がった事による信号源Zの変化に対する合成状況の確認する。トリマーを回してCoを調整するとピーク位置が46Vの時より減る方向になった。さらに合成時の出力のが改選され最大出力が伸びた。600Wキーイングを60分も続けるとさすがのBird8404も匂いを発しオイルヒーターと化す(来月の電気代が気になる)。HPAの放熱については幾つかのファンを用意して適正化を行った。例えば送信開始時の600W出力が60分キーイング後においても維持される事を条件としている。その結果PAPST/3212(15V)2個を12Vで使用する事で実現。電源のADA1000F-48は自然空冷だと相応の温度上昇があるが、写真の様に軽い吸出しで劇的な改善を得る事が出来た。
写真の左が電源のADA1000F-48、中央はHPA2ユニット(前後に電力分配器と合成器)と送風ファン2個、右はBird43(1000A)。
左はVcc=50Vでの入出力特性。Vcc=46Vとの違いを比べるために前項の特性も併記している。またVcc=50VでのCoの値は、600W程度で最大出力に調整すると約150PFになった。これはVcc=46Vの場合は220PFに比し明らかに異なっており興味を引く。なお電源を交換した事によりIc値を読む事が出来なくなている。
心配していたCOSELの電源ADA1000F-48の動作は今のところ完璧に近い。電源投入時のラッシュ電流もコントロールされており実にスムーズなスタートを見せている。今までの電源は電源投入時のラッシュが大きく電源SWで火花を散らし易かったが見事である。大きさや重量も驚く程小さくケースへの収納に弾みが掛かりそうだ。もう少し早くこの電源の存在に気付けば良かったと悔やんでいる。価格もALINCOのDM-330MVが3台分よりリーズナブルであるから。
HPAの冷却は重要な課題だ。ヒートシンクのサイズが限られているためファンに大きく依存する。一定量の風量が得られると600W出力キーイングを60分続けた後でも出力の低下が無く驚く。また出力合成・Z変換トランスへも風が流れるように工夫を凝らす。ちなみにダミーを気遣いながら800W出力で20分程度連続キーイングを行っても出力の低下は確認できない程であった。この際、ヒートシンクや出力合成・Z変換トランスのコアは素手で触れる範囲であった。冷却が如何に重要な技術であるかが身にしみて分かる。
最大出力(ローディング)とCoの関係の考察
先にも記したが、各段階の出力で最大値を求めるとCoの値が微妙に変わってくる。気になり800W出力で出力最大になるようにCoを調整した所、150PF→220PFになった。この時の出力は900W近くに達する。過去のデータを整理し、出力最大とCo値の関係を見ると・・・。
@Vcc=46V時・・・600Wで約220PF(Ic=25A)
AVcc=50V時・・・600Wで約150PF(Ic=?)
BVcc=50V時・・・800Wで約220PF(Ic=?)
・・・となっている。この違いは出力に応じてデバイス側のZが変動(Vcc一定に対しIc増加・変化)しているためと考えられる。したがって直線性を見る場合はどの出力に負荷側を合わせるかがポイントになる。
ここでは飽和出力(或いは運用最大出力)にCoをセットしておかないと適正負荷にならず、入出力特性の高出力側が湾曲して来る。
上のグラフはその傾向が現れている。出力飽和点付近でCoを最大出力にセットすれば湾曲点が更に高い方へシフトすると思われる。右はその考えに基づき、Co調整を800Wで行ったものと600W(前掲)のものとの比較。800Wで行うと相当な改善が見られる。しかし何処に仕様を置くかは難しい。
余談だが、この状況を見るとマルチバンド化は、こまめにCoを切り替える(そう言うメーカー品もあるらしい)か一定の割り切りが必要に思われる。或いはリアクタンス分を極小に追い込んだトランスの製作が必要になりそうだ。広帯域アンプなのに薮蛇になりそうな雰囲気もある。
ダミー(600W連続)を気遣いながら入力を瞬間的に60Wまで上げると、出力は950Wを超えた辺りで飽和領域に達する。これは出力Z変化トランスよりPAユニット入力トランスの飽和の方が早そうに見える(入力SWRから)。
更に65〜70W程度に上げると出力は1KWに達する。この領域では既に出力Z変換トランスは飽和領域に入っているものと推測される(コアの発熱から判断して)。コアのスタック数を増したら1KWを安定にクリアするかもしれない。
現状では各コアの発熱とBirdダミーロードのブッチンを気にしながらの作業(測定)である。
言葉だけでは分かり難いので入力70Wドまでの入出力特性をとったのが左のグラフ。当初に比べると相当な改善が見られ、非常に良好な状態と言えないだろうか。
共振に依存しないTr方式のHPAの動作は手軽そうに見えるが、実はリアクタンスは多かれ少なかれついて回る。今どの辺りで動作しているのか、或いは影響の無い領域は何処なのかと言った事を常に意識しなければいけないと反省している。・・・ここはAFじゃなくRFなんだと。
ところでIcが読めないと全体の状況が掴み難い。実装を視野に入れて電流計やケースの物色を始めようと思う。