My Favorite Books・・・お世話になった本
ラジオ作りを始めた小学校の5年生の頃から幾度となくお世話になり、困ったときに紐解いた図書が何冊かある。昔は今の様に欲しい情報が居ながらにして手に出来る便利な時代ではなかった。情報に出会ったときも何らかの行動を起こさないと消えてしまうため、少年は必死にメモやノートしてノウハウを蓄積していった。町に出ると本屋に立ち寄り電子工作や無線関係の図書を探すのが最高の楽しみだった。やがて内容が濃くなってくると、ノートでは追い付けず遂に本を買い求める様になった。ここではアマチュアハンドメーカーとして大いに役立った図書を紹介する(雑誌は含まず)。
ラジオ工学教科書(社団法人ラジオ教育研究所/A5版)
社団法人ラジオ教育研究所(豊島区池袋にあったらしい)が発行していた「ラジオ工学教科書」。
その昔、文部省認定のラジオ工学講座(通信教育)が日本短波放送(1954年8月開局)で行われ、そこでも使われていた教科書で非売品と書かれている。
執筆陣には有名大学の教授も含まれ、ラジオが題名の通り工学として扱われている。
正確な年は不明だが、昭和20年代中盤でTVが出現する前のものと思われる・・・ご存知の方は是非教えて欲しい。
中学1年の時、これを従兄弟のA君から譲り受け暇さえあれば読んでいた・・・恐らく叔父さんが使っていたものと推測。
曖昧で情緒的な表現が無く、普遍的で、まさに教科書であり今でも通用する内容。
全6巻で構成されていたが現在第1巻が行方不明。情報が少ない中でも広くラジオの情報が入手できた貴重な図書だった。
ワイヤーレスマイクとトランシーバ(オーム社/B6版)
中学1年の時、同級生の間で6BE6と6AV6を使った中波(AM)のワイヤーレスマイクの製作が流行った。その発端となったのがこの「ワイヤーレスマイクとトランシーバ」第7版(A6版)で昭和43年7月10日発行である。この本にはその後製作する双3極電池管の3A5を使った、電池式の単球50MHzトランシーバの製作記事も掲載されていた。当時既にトランジスタが世に出ていたが、内容は全て真空管によるものであった。圧巻は当時でも殆ど聞く事はなかったバイブレータによるB電源の発生で、中学1年の少年は目を白黒させながら読んだものだった。
この本は自分で購入した物ではなく、幼馴染だった友人のK氏から借りた物がそのままになっている・・・と思っているが本当のところははっきり覚えていない。
中学生のハム入門(CQ出版/B5版)
1968年中学2年生の時、自転車で高校へ通学していた姉に買ってきてもらった本(B5版)。当時\300だった。アマチュア無線の資格の取得から開局と運用まで全般を網羅する内容は、ハムの世界を知らなかった田舎者の少年に多くの情報を提供してくれた。入門者の指導に徹するのと、全編自作による開局を促しており、メーカー製の無線機などの記述は一切なくて気持ちが良い。この本を参考に0-V-1やBFO付きの通信型受信機を製作した。この通信型受信機は初めてSSBの復調に成功した記念すべき受信機となった。あのAMではモガモガ音としか聞こえないSSBが、しっかりと人の声として復調できたあの瞬間の感激は、35年を過ぎた今でも忘れない。大切なのは感度でも利得でもなく、IF出力レベルとBFOレベルの相対レベルの管理が必要である事を教えてくれた。
受信機の設計と製作(CQ出版/B5版)
JA1AR/古賀忠雄氏の執筆された受信機設計のバイブル。昭和37年11月15日に初版が出版(\400)されたが、これは昭和42年7月1日出版の第5版。この本の素晴らしさは経験や感に基く製作記事が多い中で、高周波同調回路のL/C比とQ及び負荷Qについて触れ、整合と同調回路定数の設定などについて詳しく解説している点である。著者の古賀氏は日本無線(JRC)に勤務されていた専門家で、書かれている内容は普遍的で40年を過ぎた現在でもアマチュア・業務用に関係なく通用する。
文中にある製作例は、当時TRIOの9R-59に代表されるIF=455KHzのシングルスーパーが全盛の時代に、親受信機とクリスタルコンバータを組み合わせる手法で、大いに興味をそそられた。また受信機の選択度を上げるために、当時最高のIFTと持てはやされていたTRIOのT-11の共振周波数を、わざわざ250KHzに変更するなどの斬新なトライも忘れる事ができない。
また米国のアマチュアW2LYH設計製作の受信機の紹介では、新しい発見が随所にありその後の受信機製作に大いに役立った。今までは気に入った回路を集め好みに合わせ取捨選択して製作していたが、どうもやっている事が闇雲である事が明確になった。回路や方式以前にデバイスの動作状態の把握が無ければ何も発展しないと言う事を教えてくれた。
私はこの本の存在を高校入学まで知らなかったが、同級生である下田市出身のS氏より譲り受けて初めて知った。その後、暇さえあればむさぼり読んだ。今でも時々紐解く良きバイブルである。
送信機の設計と製作(CQ出版/B5版)
JA1FG/梶井謙一氏の執筆された送信機設計のバイブル。昭和39年12月10日発行の初版(\380)である。前項の受信機の設計と製作と並んで、アマチュア技術図書の決定版と言えよう。何時も思う事だが著者の梶井氏を始めとするOMの皆様は、電気的或いは高周波的知識もさる事ながら、機械や化学も含めた知識も豊富である事に驚かされる。私は執筆だけでは分からないOM諸氏のバックボーンを垣間見るのが好きだった。持っている道具や回路図では表現できない配線技術、それに素材に対するきめ細やかな対応や運用性を考慮した製作等など・・・梶井OMはそのバランス感覚に非常に長けた方だったと思う。
この本を友人の誰からか譲り受けたのだがそれが誰だったか思い出せない。
実用真空管ハンドブック(誠文堂新光社/B5版)
1970年4月JA2YCHの門を叩いた時に発見した本が2つある。1つは後述の「SSBハンドブック」。もう1つがこの誠文堂新光社の「実用真空管マニュアル」。TVやラジオを分解した時に出て来るお馴染みの真空管の記述が数多く、編集者の狙いは時機を得たものだったと思う。基本スペックの他に、代表的な使用例が要素回路として描かれラジオ少年には貴重な情報源だった。それらを好みに合わせて書き写し、自分なりの回路を構成した。振り返るとその繰り返しが後に技術力に発展した。それから執筆陣。古くから影響を受けていた斉藤OM(JA7SSB当時はJA3CKI/JA3LUX)の執筆が随所にみられ、その文体に大いに刺激を受けた。特に冒頭に記された「真空管の基礎知識」は未だに頭に焼き付いている。そしてスペックだけでは分からない執筆者の体験に基づくコメントが素晴らしい。四半世紀後、3.5MHzで斉藤OMとお逢いした時その旨をお伝えしたところ、丁寧な返事を記されたQSLカードが届いた。その後復刻版として復活しているが、版を重ねその人気は絶える事が無い。タイトルが示す「実用」性の高さが伺える。写真左はボロボロの初版(1966)を撮影後修復したもの。右は復刻版第4刷(2005)で2008年1月購入。
SSBハンドブック(CQ出版/B5版)
CQ出版のSSBハンドブックはこの版の前、昭和30年代にも一度出版されている。
左は昭和44年12月15日の初版(\650)。右はその改定版の第5版で、昭和47年2月29日に出版(\650)されたものである。
執筆陣は当時のJAアマチュアを代表するSide Bander諸氏が担当されている。これ一冊でSSBの基礎から応用、受信から送信、高出力リニアアンプや測定技術までを網羅し非常にバランスの取れた編集となっている。
自作アマチュア無線家にとっては後にも先にも最高のバイブルであった。私の高校時代は、この中の記事を参考にSSBトランシーバーや送受信機の製作に明け暮れた。この本が無かったら一体何を参考にしていたのだろうかと考えたりしている。
左は発行から凡そ42年過ぎた2012年1月にネットオークションで購入したもの。この初版の表紙を飾っているのは米SWAN社のトランシーバー。高校の無線部部室で1970年4月に初めて見たときは大変カラフルで印象的だった。
右は友人K氏宅の電気工事のアルバイトとして頂いた報酬により高校3年生のときに購入した物。
SSBマニュアル(電波新聞社/B5版)
SSBマニュアルは、CQ出版社のSSBハンドブックの向うを張って、電波新聞社が「ハムライフ別冊」として出してきた・・・と個人的には思っている。初版は昭和44年12月20日であるがSSBハンドブックと5日違いと言うのが大変興味深い。この版は昭和48年5月1日発行の第2版第1刷発行(\1000)となっている。この本の特徴は何と言っても著者のJA1ZB/松田功氏の収集された資料の豊富さだろう。今でも珍しいロシア製トランシーバーとその回路図を初めて見たときの驚きを今でも思い出す。米国中心の文化に旧共産圏の文化も加わり独特の雰囲気を放っていた。またSSBハンドブック同様に基礎から応用まで網羅しており、もう一つのSSBバイブルであった。初版は3-500Zのグラファイト管をあしらった表紙であったが、第2版は当時国産最高級トランシーバーであったTRIO/TS-900を配置している。TS-900を斜めに置き、その前方を広く白色に開けたレイアウトがやけに印象深い。
PLLの活用ガイド(誠文堂新光社/B5版)
1972年、高校の図書館に誠文堂新光社の「電子展望」があった。PLL特集があり初めて4046なる専用ICの存在を知った。その2年後の1974年、PLLのノウハウをまとめた冊子「PLL活用ガイド」が同社から出版された。むさぼり読んで、 1KHzステップのPLL-VFOの実験を始めるきっかけとなった。PLLは自励発振のVFO(VCO)が水晶発振レベルの安定度になるのだからスゴイ。VCOと水晶発振の出力を、当時は未だ高価だった初期型TTLで分周し1KHzで位相比較するモノだ。しかし運用性に乏しく、SSBトランシーバ用のアナログVFOの安定度を追求していた当時はモノにするまでに至らず、知らぬ間にJUNKと化していった。あれから35年、何処のパーツ店を尋ねても必ず置いてある4046には普遍性を感じる。電子機器の多くはPLL技術で成り立っていると言っても過言ではない。PLLの感覚を掴むために自作と実験のきっかけになった最初の図書だった。
SSBトランシーバ(日本放送出版/B6版)
この本は昭和40年代のSSBトランシーバの回路構成や特徴をメーカーの設計担当であった著者が克明に書かれたもので、読み物としても、資料としても大変価値のある1冊である。対象は国産メーカーに留まらず、米国の著名メーカーにまで及び、その違いや考え方を知る上で大変参考になった。著者は、中央無線(QQQ)をはじめ、スター・泉工業(パロス22-TRを設計)・八重洲無線で技術部長を勤められた田山彰氏。初版は昭和47年2月20日であるが、これは昭和50年2月1日発行の第4版(\900)である。国産のアマチュア無線機の隆盛は、こうしたエンジニア達の熱い情熱の上にある事も忘れないでいたい。
ハムのアンテナ技術(日本放送出版/B6版)
数あるアンテナ関係の図書の中でこれほど明快にかつ簡潔に書かれたものは他に無いと思っている。
著者は遠藤敬二氏、岡村浩志氏、菅野京七氏、谷方人氏、長谷川伸二氏で共同執筆である。昭和45年10月20日に初版が発行され、これは昭和55年2月10日発行の第15版(\900)で、その息の長さが伝わって来る。
アンテナや分布定数回路となると難しい数式を持ち出してページを埋めた本が多いが、執筆陣はメーカーや放送局の専門家でありながら難しい数式は使わずアマチュア向きに簡易な文章で解説している。そこが気に入り転勤の度に持ち歩いている。
NHK技能講座・テレビジョン技術(日本放送出版協会/A4版)
昭和36年から40年代にかけて、NHK教育TVでは「NHK技能講座・テレビジョン技術」を放送していた。毎週月・水曜放送の半年コースと、毎週土曜放送の1年コースが再放送として用意されていた。当初は白黒放送であったが40年代後半から(詳細不明)はカラー放送になった。写真は昭和47年と48年度のテキストである。紙面もカラー放送とカラーテレビを強調した記述となっている。
私は昭和43年(中学2年)頃から
この番組のファンで、田舎の本屋さんからこのテキストを買い求めTV技術の勉強をしていた。番組を知った頃はまだ真空管の白黒時代で、テキストの入手方法も分からず毎回ノートに回路図を書き写した事を懐かしく思い出す。
しかし期せずして真空管から半導体、白黒からカラーの時代になった。電子回路の原理や電波伝搬の基礎から始まるこの技能講座から得たものは多く、そのノウハウは今でも生きている。当時は将来その関係の仕事に就くとは夢にも思わなかった。この番組とテキストは、全国に多くのTVエンジニアを残したに違いないと思っている。日本を代表する執筆陣が書いているにも関わらず、定価僅か\270と言うのは時代のせいだろうか面白い。
アースと熱(日刊工業新聞社/A5版)
知る人ぞ知る伊藤建一氏著の「アースシリーズ」。電子機器のトラブルをアース回路から見直し、感と経験だけだった世界を学問として捉えた貴重な図書である。実地をベースに理論を膨らませた書き方は、その後出版された類似図書の追随を許さず、40年経った今でもその内容は色あせない。この本を参考に、どれだけ多くのエンジニアがノイズ対策に興味を持ち、それを実践していった事だろうか・・・。伊藤氏はかつてToshibaに在籍され、大電力のラジオTxやTV-Txの開発設計に携わっておられた。DCから高周波、またマイクロボルトからMWに至る広範囲な技術力を持たれた神様の様な方である。
21世紀になってもトラブルに遭遇すると何も考えないで「アースを取れ」と騒ぐ人がいる。本シリーズ、特に「アース回路」「アースと熱」はそういう向きに是非読んで頂きたい。
アマチュア無線回路図集・SSB編第1集(CQ出版/B4版)
この「アマチュア無線回路図集」は、1961年6月号からCQ誌の折込みページで紹介された内外のアマチュア無線機の回路図集である。
これは「SSB編第1集」と銘打っている、1970年6月30日発行の初版で\500だった。編集後記には第2集の予告やその内容を唱えているが、発行されたのかどうかは不明。
この年オーナーは局免許を取得した年で、自作によるSSB受信機や送信機の製作に明け暮れていた。そうした自作の良きバイブルとして読み漁った。
最初は1972年頃、ローカルのK氏が学校のクラブから持ち帰った物を借用していたが紛失。写真はその後2007年、オークションでゲットしたもの。
お金も物も無かった時代だったが、回路図とその解説文だけで回路を読む力やメーカーの考え方の違いが身に付いて行った。振り返ってみると最高のバイブルだった。
リニアアンプハンドブック(CQ出版/B5版)
この本もリニアアンプファンには愛読書であろう。類似した図書に誠文堂新光社の「リニアアンプ製作集」があるが、本書は設計・製作・測定・申請・運用まで、ハードからソフトまでバランス良くまとめられている。HF(1.9〜21MH)の空中線電力が未だ500Wの時代の図書である。初版は昭和47年7月15日発行で、これは昭和55年1月15日発行の第9版(\850)である。
リニアアンプは法的な制限があるため、マスメディアにおける電力の取り扱いは非常にシビアである。個人のホームページとは異なり、法規を逸脱した出力表示をする事も出来ずジレンマに陥る。本書では「海外のリニアアンプ例」として紹介し、入力電力で表記する事で混乱を避けている。
この本の後でCQ出版より平成4年8月20日に「リニアアンプスタイルブック」が発刊された。アマチュア向け図書なのに、プレート損失が10KW以上もある真空管をQSLカードをバックに堂々と表紙デザインするなど、ややバランスを欠いたと思われる(私見)部分があり残念に思っているのは私だけだろうか・・・。業務用高出力真空管として堂々と紹介して欲しかった。
VHF/UHF MANUAL(RSGB・CQ出版/B5版)
英国のRSGB(Radio Society of Great Britain)発行のUHF/VHF MANUALの翻訳版でCQ出版社の創立30周年記念の一環として発刊された。初版は昭和60年4月30日に発行され、これは昭和61年2月15日に第2版として発行(\4800)されたもの。翻訳はJA1BLV/関根慶太郎氏を中心に行われた。
一番の印象は共振回路を説明するとき、国内では殆どの場合LC回路で説明するが、本書はLC回路もキャビティもリニア回路も全て同列で解説している点である。国内では話を複雑にしないための手法だと思われるが、その積極的な解説に驚いた。こうする事により、集中定数による共振と分布定数による共振を常に意識した設計や製作が行えるようになる。
このように面白い原典の執筆とその発見、更にその翻訳に携わった多くの皆さんに思わず拍手である。\4800は一見高価に思えるが、内容を見れば理解できるはずである。
魅惑の真空管アンプ(誠文堂新光社/B5版)
昭和47年8月。静鉄自動車学校の帰り道、自転車で家路を急いでいた。清水駅前銀座の一番端、魚町のある書店で偶然この本を発見し興味を持った。表紙もさる事ながら、裏表紙の東芝真空管の広告に写る国産の名ビーム管6GB8の雄姿・・・新鮮だった。しかし高校3年生と言えど当時は\1000もする本を買う習慣は無かった。その後忘れていたが就職した翌年の4月、名古屋で会社の研修があり宿舎近くの本屋(名古屋市千種区東山駅界隈)でこの本と再会、間髪入れずに購入。裏表紙には昭和47年7月30日発行(\1000)とある。当時はまだCDやMDなどのデジタルソースは無く、LPレコードやFM放送が音楽ソースの中心だった。印象に残る記事は、6AS7Gをプッシュプルで使ったノンNFBのオール3極管A級アンプ。6AS7Gの増幅率μは2と極端に低い。したがって十分なグリッドスイングをさせるにはそれなりのドライバーが必要になる・・・。私は6AS7Gを同等管の6080に置き換え、ドライブは12BH7Aプッシュプルで押した。更に若干のNFBを施し長年使ってきた。
もう32年も前の事であるが、執筆された先輩方の多くはまだ現役でハンドメイドを楽しんでいらっしゃるのだろうか?。
トロイダル・コア活用百科(CQ出版/A5版)
トロイダルコアを使ったコイルを巻く上で、アマチュア向けにこれ程分かり易い図書はそれまで無かった。コイルやトランスの高周波における考え方の多くを学んだ。
特に電線にハイμのコアを装荷させる事でその前後の状況が変わってくる事、すなわち伝送線路としてみると、容易に不平衡⇔平衡変換が実現できる事を説いてくれた。前後を高周波的に絶縁する事ができ、接地(アース)環境を自由に設定できる。この考えは今流行のコモンモードフィルターに生かされている。
その他製作意欲をかき立ててくれる実用回路例等は非常に参考になった。それぞれに実験データが数値で付属し、アマチュアといえど感覚だけの表現・表記だけではダメだなと思わせてくれた貴重な本である。
著者はアマチュア無線家としても有名な山村英穂氏。写真は昭和58年1月31日に発行された初版(\1900)である。その後21年6ヶ月経った平成15年8月1日「定本トロイダル・コア活用百科(初版)」が増補版として発行された。それにしても息が長く永遠に出版が続きそうな図書である。
おとなの工作読本(誠文堂新光社/A4版)
昔の工作雑誌等の復刻やリバイバル版が出版されている。既に中年を通り越し金銭的にも時間的にもやや余裕の出てきたかつての模型少年やラジオ少年たち、或いは思いはあっても昔の小遣いでは如何ともし難かった人たちをターゲットにしたと思われる一冊の「おとなの工作読本」。出版社の狙いを憶測するのも楽しいが、やはりかつての模型少年やラジオ少年と称する工作少年はそうした背景など気にしなかった。
2004年9月現在でNo.7まで出版されている。写真はNo.1で、サブタイトルが「ラジオ少年の時代」、No.2は「今ふたたび魅惑の鉄道模型」、No.3は「夢の模型飛行機」と続き、我々の世代は内容を確認する前に買ってしまいそうである。事実私も買ってから中を見て満足している輩である。
内容は昔の「子供の化学」「初歩のラジオ」等の復刻も織り交ぜながら編集されており、懐かしさもよみがえって来て楽しい。全編から、物造り・・・すなわち、手を煩わす事の素晴らしさが伝わってくる。
LINEAR AMPLIFIRE DESIGN BOOK(丸文/A4版)
これは出版社からの出版ではなくEimac(Varian)の日本代理店である輸入商社の丸文が、Eimacチューブユーザーのために発行していたリニアアンプ・デザインブックである。元々米国で出版されていたもののコピー版のようである。著者はリニアアンプの設計製作やRadioHandbookで有名なW6SAIが中心となっている。CQ誌のSSBハンドブックやリニアアンプハンドブックに掲載された米国の製作例の多くがこの図書からの引用と思われる。
写真は友人のF氏よりコピーを譲り受けたものである。表紙は何となくセピア調で染めてみたが、原版の色は不明・・・何方かご教示頂けないだろうか。内容は理論から製作、そして運用までを非常に丁寧に説明されていて驚く。こうした図書が四半世紀以上も前に編纂されていた事に驚くと同時に、我々はそれをただ真似ているだけの様な気がしてならない。いつしかそうした内容を駆逐したアンプを製作したいと密かに呟いている。
JARL RADIO AMATEUR'S HANDBOOK 新版初版(JARL・CQ出版/B5版)
この「JARLアマチュア無線ハンドブック」の発行日(1981年11月1日)は、奇しくもオーナーの結婚年月日と同じである。その記念に購入した訳ではないが、カミサン(JK2WBD)と名古屋市栄の地下街にある丸善ブックメイツへ赴いた時(1982年2月15日)に手に入れたもの。定価は\4600と破格であるが、日本語による解説は分かり易く今でも座右の銘となっている。特にGGアンプの動作解説などは他に例のない詳しさで解説がなされており、四半世紀過ぎた今でも色あせていない。
JARLアマチュア無線ハンドブックは1963年12月10日が旧版の初版で、その後1973年3月31日の第5版まで増刷されたが、この1981年11月1日版は「新版初版」となっている。当時は現在のようなコンピューター社会が来る事など想像も出来ない時代だった。世の中が穏やかで普遍的な原理原則が尊重され、ラジオエレクトロニクスがトレンディでアマチュア無線隆盛の時代だった。その後改訂版が発行されているが、ハンドブックとしての存在感はこの時代のモノには叶わないと個人的には思っている。
執筆人の情熱と努力は、我々読者の想像をはるかに超えていたに違いない。ARRLハンドブックも大したモノだと感心するが、JARLハンドブックも捨てたもんじゃないなぁと後になって感心している。なおこの新版初版の編集委員長にはJA1LKJ/森村OMが就かれている。
JARL RADIO AMATEUR'S HANDBOOK 増補改訂版(JARL・CQ出版/B5版)
「JARLアマチュア無線ハンドブック」はその後1991年4月20日に改訂版初版が発行された。写真は1997年4月発行で改訂版最終の「増補改訂版」。この版が発行されたとき期待を持ってページをめくったが、従来の編集と異なりがっかりした記憶がある。1963年から発行の「旧版」や1981年から発行の「新版」とは明らかに編集方針が変わっていた。
従来はアマチュア無線に関する事柄が、ハードからソフトに渡り専門的に取り扱われ、かつ全体がバランスするように編集されいた。いわゆる「ハンドブック」の体裁を成し大変読み応えがあった。
「増補改訂版」は全体にソフト方面に編集の軸を移している。私見であるがアマチュア無線のPR誌の雰囲気が強い。ハンドブックと言うより単なるCQ誌の別冊と呼んだ方が適当かもしれない。これをどう見るかはそれぞれ自由であるが、少なくとも毎年発刊するARRLハンドブックに比べると内容に大きな開きがある。旧版や新版をベースに追加する形が採れなかったのだろうか。こう記すと編集委員会代表のJA1BLV/関根OMからお叱りを受けそうだが・・・。
と言う事で購入には至らなかったが、一つの歴史図書と位置付け2008年1月購入を考えた。しかし発刊から10年を超えるため、CQ出版やJARL及び書店を尋ねたが全て在庫切れだった。ネット上では定価の約3倍で取引されているが、馬鹿馬鹿しくて手が出ない。ところが、幸か不幸か単身赴任先近くの中部特機産業(福井店)に、やや色あせた1冊が残されている事が判りようやく購入(\3300)に至った。
THE ARRL HANDBOOK(ARRL/A4版)
ARRLハンドブック・・・俗に言うアマハンの素晴らしさはその編集ポリシィにあると考えている。すなわちアマチュア無線に関係する全ての項目について記述がなされ、それを毎年更新し続けているところにある。我々だったら当たり前として処理し、恐らく省略してしまうだろう項目まである。例えばアマチュア無線ってどう言うものなのか、どういう楽しみや展開があるのか・・といった部分を冒頭で詳しく述べ初心者にも誤解が無いように説いている。
写真は2000年版。50MHzのリニアアンプ製作はそれまでは3CX800A7によるものであったが、この号より4CX1600Bによるものに変わり、既にHFリニアアンプ製作も4CX1600Bに変わっており、ここでもロシア球の進出が著しい・・・というよりコストパフォーマンスが高いと言う事だろうか。こうしたデバイスを妙な理屈を付けないであっさりと使ってのけるスタンスがアメリカらしくて好きである。何処かの国では、何の根拠も無く「Eimacでなきゃ・・・」と主張されるOM連の声が聞こえてくるから・・・。
アマチュア無線をやるなら、この本の隅々までを理解する事をひとつの目標にするのも面白いだろう。またその昔は、国内の有名製造メーカーの一室にはこの本が必ず置いてあったと言う程に本書は有益だった。
Funtamental of TELEVISION ENGINERREING(テレビジョン工学原論/B5版)
この本は1977年頃、会社の先輩O氏が自宅を改築するために不用品を整理した際に頂戴した一冊。
著者は米Glenn M.GLASFORD博士で、当時大阪大学の青柳健次教授らが、日本のテレビジョン技術発展のために翻訳を行ったもの。
巻頭にはGlenn氏からのメッセージやサインが記されている。出版は無線従事者教育協会から1958年11月で、原版は1955年となっている。
この本の素晴らしいところは、テレビジョン信号やカラー信号の原理から始まり、制作設備から送信設備までをオーバーオールで網羅している点である。テレビジョンシステム上のあらゆる点において、エンジニアはかかわりを持つべきであると言う強い主張を感じると共に、当時のエンジニアの心意気が伝わってくる。
アマチュア無線家として特に目を引いたのは、General Electric社提供の実例で、4-1000AがプッシュプルでTV-TXのエキサイターとして使われている点と、セラミック管が一般的ではない時代にガラス球でVHFのTV-TX終段を構成している点である。
前述のO氏は、1959年4月研修先である名古屋の紀伊国屋書店で\1400で購入されている。当時としては破格だったに違いない。ほぼ自分の年齢と同じこの図書は、何時になっても新鮮な輝きのあるバイブル的な存在で、時間があると紐解く一冊である。
電波科学"DO IT YOURSELF"キットの世界(日本放送出版協会/B5版)
この本は1979年11月、転勤先の職場で見つけ廃棄時に譲り受けたもの。電波科学は1933年に創刊し、1985年からのエレクトロニクスライフ時代を経て、1997年に休刊されている。電波科学は当時、こうした別冊特集の発刊があり読者を楽しませてくれた。
この「キットの世界」ではヒースキット、ダイナコ、ラックス、ケンクラフト等など、当時の一級品キットを工作を交えながら紹介している。特に我々には夢のまた夢だったヒースキットのトランシーバーやリニアアンプ等のキットが、詳細な写真や図面入りで説明されていた。キットには手が出せなくても工作意欲を大いにかき立ててくれたのだ。
ヒースキットのSB-102トランシーバーは永遠の恋人の様なモノで未だに手にしていないが、この本を眺めると独特な空想の世界に入り込む事が出来る。
その後キットメーカー受難の時代になり、殆どのキットメーカーが姿を消してしまった。物作りの原点を楽しみながら教えてくれるキットの存在は、科学技術の底辺を支えるもので是非とも復活して欲しいものだと願っている。
表紙をラックスキットのプリアンプが飾っている。