電源トランスをオーディオトランスとして使う
低周波トランス(AudioFrequencyTransformer)では図に示す様に、インピーダンスの変換比は巻き数比の2乗に比例する。したがって我々が良く使ったヒータートランスを代表とする、低電圧の出力を持つパワートランスを真空管式アンプやラジオの出力トランス(Output Transformer=OPT)の代替として使用することができる。図は100V:4Vのトランスが5KΩ:8Ωのオーディオトランスとして使えることを説明している。例えば6AR5や6AQ5などを使ったアンプの出力トランスとして最適であろう。地方では電源トランスは容易に入手できても、真空管式の出力トランスは中々入手が難しいので、このような流用の仕方もひとつのノウハウとして覚えておくと良い。なお取り扱える電力はトランスの電力容量相等と考えて良いだろう。
左のグラフは100V:5V(6KVA)の電源トランスの周波数特性を取ってみたもの。トランスは大阪高波(INSTANT)のHST-0610-1。1KHz以下からなだらかな下降特性が始まっているが、周波数目盛が対数表示ではないのでやや強調された感じになっている。しかし100Hzで-0.9dB、50Hzでも-1.75dB程度であるから中々な特性と言えるだろう。なお測定条件は入出力共600Ω終端で、100V側を信号源5V側を負荷とし、入力レベルは+10dBmである。完全終端は行っていないが低周波なのでそんなに違いは出ないと考えている。前述の6AR5や6AQ5、またはその兄貴分である6BQ5や7189A等のシングルアンプの出力トランスとして十分使えるだろう。5球スーパーや並三・並四・高一等の真空管ラジオの出力トランスとしては十分な動作が期待できる。
ただし、管球式のシングルアンプでは常時バイアス電流が流れるため、コア材が直流的に磁化されコイルインダクタンスの低下を招く。したがって動作時の周波数特性は低域が更に低下するものと思われる。近いうちに実際にオーディオアンプに使用してデータを取ってみる予定である。