電源投入NGの"Tektronix TAS 220"を調べる(Nov 20. 2010)
TektronixのTAS220(20MHzオシロスコープ)が突然電源投入できなくなった。元々ゴミ集積場で埃まみれだった物を拾ってきたモノだ。5個のノブが飛び散り、内2個はシャフトも無い。横にメーカーが描いたと思われる「修理不能」のメモ。扱い難さはこの上ないが、基本的動作はOKなので位相比較やリサージュ表示に活躍していた。
ところが11月某日朝、電源を入れると通電しない。このままでは無用の長物と化すので様子を診ることになった。
電源SWを入れ電源プラグの両極をテスターで当たり導通を診るとオープン。ひょっとしたら温度ヒューズ断か…休日には一日中通電していたので熱でやられたのか?。
恐る恐るカバーを外す。TAS20はTektronixにしてはリーズナブルだが、開けてみるとその理由がわかる。外観や塗装色には伝統の雰囲気を持たせているが、実はこのシリーズには部品や構造にそれを感じない。しかしそこは測定器、電源はトランス型で、AC側の絶縁や広めのショートリングに、低ノイズを考慮した様子が伺える。
早速各部の導通を診ると、心配していた温度ヒューズ等は無く、しっかりと外部のヒューズホルダ(ACコネクタ一体型)が存在した。このヒューズホルダの挿入角度で100/120/220/240Vの各受電電圧を選択できる仕掛けになっている。
配線は問題はなかった。ではヒューズ?と思い、ヒューズホルダをマイナスドライバの端で引っ掛けて引き抜く。ヒューズは即断型に見えるが飛んでいる様子はない。可笑しい。
それでヒューズホルダのファストン端子を外しワニ口リード線でつないで電源投入すると見事に通電。するとヒューズか。遅れ馳せながらテスターでヒューズ管を当たると導通がない…やっぱり。回り道をしたが以下の如く勉強になった。 @見た目では分からないヒューズ断
経年変化でクラックが入る様な場合は見た目では断が判からない。必ずテスターを当てる。
A低コスト追求のつけ
TAS220は20MHzと今から見ると大分見劣りする。使用部品の多くは一般品と思われる。プラスチック部品の不具合が多く、基板のVRシャフトを延長するプラスチック機構が割れて調整できない(Vari-Gainx2)。差し込み式ノブも外れて飛び散り行方不明3つ。これらはローコストを追求しすぎた結果か。
BそれでもTektronixの面目
ただしシャシ・フレームには伝統的に硬質アルミが使われ、ビス締めする部分はヘリサート処理が成され好感が持てる。 写真上はカバーを外して仰向けに置いたTAS220。写真下左はACコネクタとヒューズホルダが一体化されたブロック。ヒューズは管式ミゼット型で、差し込む方向で受電電圧を決める。写真下右はそのブロックの内部配線。半田付けは行わずファストン端子で処理されているので保守性が良い。左半分の配線内訳は黒:コモンで、赤:100V・橙:120V・黄:220V・青:240Vとなっている。