MF(中波)帯ラジオ用コイルを巻く
「ラジオ工作教室」を開くと言うので、参考出展に幾つかラジオを試作しようと考えた。どんなラジオでもコイルとバリコンによる共振回路は必須だろう。ここでは面倒なコイルを作ってみた。日用品の中でもコイルに使えそうな材料が一杯ある。物不足の時代に育った者は、日用品から出るゴミにも目が行ってしまい自ら苦笑する。ゴミの中にもコイルのボビンに使えそうな物が結構ある。最近目にするチューインガムの円筒型樹脂ケースは、直径が65mmあって大変手頃だ。数年前に購入した中国製ワインダーのシャフトに固定し、0.5mmのUEW(ポリウレタン線)を巻き込んだ。目的のインダクタンスは260μH。コイルのインダクタンスは透磁率・断面積と巻数の2乗に比例し長さに反比例するが、こんな計算をするのは面倒なので計算ソフトを使って巻き数を調べる。Coilと言うフリーソフトを起動して巻数=61回、長さ=30.5mm、直径=65mmを窓に入力すると丁度260μHになる。この値を参考にして巻いてみた。写真はコイルとリール巻のUEWにワインダー。リクコイルは9回巻いた。この状態でバリコンをつなぎMF帯に共振させると、ディップメータが強力な共振を示した。そのディップ感からは相当なQを感じる。ゲルマニュームダイオードとクリスタルイヤホンをコイルの両端に接続し、アンテナワイヤーをコイルのホット側、アースをコールド側に接続すると良好に地元のAM放送が受信できる。こうしたコイルを巻く時ワインダーの威力は絶大である。
このワインダーは中国FEIZHI社のNZ-1と称するものだが、ラチェット機能が無いので巻いている途中でハンドルを緩めると巻いたコイルがバラけるの難点。後日ラチェット機能(右転・左転・スルー)を組み込む予定でいる・・・最初からあればユーザーは助かるのにと・・・。カウンターは最終シャフトの回転数を数えている。リセットレバーを押せばゼロになる。巻数が増えたとき、数を読み続ける必要がないので便利だが、シャフトとボビンがスリップするとミスカウントするので注意が必要。
材料の線材はリールに巻いた物である程度の自重が必要である。テーブルの端にワインダーをGバイス等で固定、線材はテーブルの逆端から床の箱(逃げ防止)に入れたリールから引き上げる。テーブルの角には丸みが有るとベターで、更にタオル等を敷き線材にキズが付かない様にする。ワインダーのギア比は1:8と1:1が選択できるが、弛みを作らず一定の張力を維持しながら巻くには1:1の方が確実。
オーナーの1960年台、ラジオ製作の中心は5球スーパーかその延長線上の通信型受信機だった。コイルは殆どTRIOのSシリーズに依存していた。MF帯のコイルを巻こうとする発想は無く、巻いてもせいぜいHF帯用をプラグインボビンに巻く程度だった。
しかしこうして実際にMF帯用のコイルを巻いてみると色々な可能性が見えてくる。基本的にソレノイドしか巻けないが、空芯大型コイルの魅力を感じる。Hi-Qに挑戦したり、高感度のゲルマニュームやストレートラジオ、或いはリジェネ(再生)ラジオ等への応用も見えてくる。枯れた世界なのかもしれないが生活実験的な雰囲気があり、これは気を付けていないとはまりそうだ。
ボビンに使用したチューインガムケースには強力なシールが貼り付けてある。シールには金属成分が含有しているので剥す必要がある。上手に剥すには、一度熱湯を入れ全体を暖めてから行うと綺麗に剥す事が出来る。余り暖めるとベトベトになるので頃合を見る必要がある。ケースには底と蓋があるので、底にバナナプラグを取り付ければプラグインコイルが出来上がってしまう。LFからMF、そしてHFと差し替えて・・・実に楽しい。