日本映画  あ〜か (映画は五十音順になっております)

 

赫い髪の女
1979年  にっかつ   73分    監督 神代辰巳     音楽  憂歌団
                       出演  宮下順子/石橋蓮司
 
これはにっかつロマンポルノの作品である。
宮下順子は日本映画を代表する色っぽい女優ナンバーワンだと思っている。とにかくこの映画のドロドロ
とした男女の関係はともすると拒否反応を示す方もあるかもしれない。最初から最後まで続く。
この映画はとにかく宮下順子の“女”を見るためだけの映画である。
憂歌団の音楽もとても印象的である。
 

 


 

赤い殺意                     
1964年 日活  150分    監督 今村昌平    音楽 黛敏郎
                    出演 春川ますみ/西村晃/露口茂
 
白黒映画で男女の交わりをこんなにも熱く描いた作品はこれがベストだと言えるであろう。東北のある
寒い地域を舞台に、一人の女性の変遷を描いた作品である。妾の子として蔑まされて育った貞子という
女性は子供も産み、家族同様生活するが、正式な女房と認めてもらっていないでいる。ある一人となった
夜に強盗が押し入り、犯される。一度は死のうと考えたが死にきれない。その後も強盗はやってきては、
無理矢理関係を持つ。強盗の一方的な哀願に、貞子は拒めなくなり二人で東京へ向おうとする。途中に
相手を殺そうとするが、途中にあっけなく強盗は死んでしまう。何もなかったように家に戻った貞子は強い
主婦として家での地位を強く確立していく。最初は少し頭が弱いように見えた貞子が、その中で強い女性
として変っていくさまを今村監督は見事に描いた。一気に見せられる素晴らしい作品。が、音楽は良くない。

 


 

赤ひげ
1965年 黒澤プロ   184分   監督  黒澤明
                      出演  三船敏郎/加山雄三/山崎努/団令子/桑野みゆき
 
巨匠クロサワの最後のりっぱな映画である。(これ以降の映画はソ連のデルス・ウザーラ以外は黒澤監督
の映画と認めず)そしてひょっとしたら私が一番好きな作品かもしれない。
江戸時代の小石川養生所を舞台にした立派な医者たちの姿を中心に描いたヒューマン・ドラマである。
三船のかっこいい姿に惚れ惚れする。やはり、黒澤あっての三船、三船あっての黒澤であったのだ。
また、山崎努が中心の挿話がとにかく悲しい。こんなに悲しい男の姿を物語りにしたのも日本映画を見回
しても稀有ではないだろうか。赤ひげに真の医者のあるべき姿を見る。

 


 

生きる
1952年  東宝   143分      監督 黒澤 明      音楽 早坂 文雄
                        出演 志村 喬/日守新一/千秋実/小田切みき/金子信雄
 
世界に誇れる名作であり、志村喬さんの代表作です。
市役所の課長である主人公は毎日を何も変わることなく、極めて役所の人間的に過ごしている。ある日に
ガンで自分が余命わずかなことを知らされる。そんな自分には冷たい家族しか残っているものがない。
そんな時、下水溜りが出来て困っている陳情を聞いてその解決に余命の全てを注ごうとする。
人が死に直面した時、どうするのか。また生きる価値を見出すために何を行ったのかを、一人の老境に
達した人間を通してみせる。それと外務省にも見られる役所の人間が全く自分を市民、国民の公僕と思
っていない怖さ。それをこの映画では一番強烈に見せつけられる。

 


 

浮草
1959年   大映    119分    監督 小津安二郎     音楽 斎藤 高順
                        出演 中村鴈治郎/京マチ子/若尾文子/浦辺粂子/三井弘次
 
この映画は小津監督が34年に撮った作品のリメイクであるが、個人的にはこちらの方がずっと優秀だと
思っている。
何といっても主役の中村鴈治郎さんと京マチ子さんの演技は際立っていい。
地方巡業をしているドサ周りの演劇一座に起る人間関係を描いているのだが、人間の心の機微をきめ細
かく表現されていて、見直すたびに感激度は高まっていく。
脇役の浦辺粂子さんと三井弘次さんもとてもいいので注目して見てほしい。

 


 

ガキ帝国
1981年  ATG    監督 井筒和幸      
               出演 島田紳助/松本竜介
 
大阪を舞台にして、ケンカなど遊びまくる高校生達の青春を謳歌する姿を描いた井筒監督の傑作である。
紳助と竜介がとにかくいい。演技しているのか、地なのかわからなくなるくらいである。(恐らく地では・・・)
大阪を舞台なだけに、こんな奴おるなあ、おったなあという懐かしい感覚で見てしまうのも、関西人ならで
はかもしれない。
井筒監督もバラエティ番組ばかり出て、悪戯に無駄な時間を使うのをやめてそろそろこういった最初の頃
のいい映画を作ってもらいたいものだ。(確かにバラエティには欠かせないキャラではあるが)

 


 

風の谷のナウシカ
1984年  徳間書店    116分    監督 宮崎 駿      音楽 久石 譲
                         (アニメーション)
 
私は宮崎さんのアニメは全体的に好きではない。どうしてこんなに人気があるのかがわからないし、金を
払ってまで見たいとは全く思わない。(以前、「もののけ姫」を見てあまりのつまらなさに失笑してしまった。)
でも、この作品だけは別腹である。日本映画にない壮大なテーマとアニメでしか実現できないスペクタクル
さを存分に発揮してくれた傑作である。
特に主人公のナウシカのキャラクターの設定は見事で、強さとそして自然を愛する優しさも兼ね備えた見事
な女性である。

 


 

家族ゲーム
1983年  にっかつ他  106分    監督 森田 芳光  音楽  なし
                    出演 松田優作/伊丹十三/由紀さおり/宮川一郎太
 
この映画には音楽がまったくない。外に流れている日常の音がそのまま使われているのだが、それが
かえって新鮮である。これは恐らく森田監督が会話に集中させる為に、あえて実施したようだが大成功
である。
どうしようもない次男に家庭教師をあてがう。それがとても変わった家庭教師で、それを松田優作が
演じているのだが、彼の新境地を開いたターニングポイント的な作品である。
またこの家族が極めて変わっていてそれぞれが勝手な自己主張しているところが日常的にさらっと映像
化されているところもいい。特に向い合わせではなく、一列に家族が並んで食事する風景はとても気に
入ってしまった。このおかしな家庭教師のお蔭で次男は成績もよくなり、ケンカでも負けなくなる。
ただそれはあくまで流れ的なもので、森田監督はそれをストーリーとして重要視していない。あくまでこの
家族の新しい形を追っている映画である。最後に家庭教師が部屋内で暴れる風景も何かを壊してしまう
事で家庭の危うさを表現していたように思う。何度見ても飽きない映画である。由紀さおりさんが色っぽい。

 


 

学校
1993年   松竹   128分     監督 山田洋次     音楽 富田 勲
                        出演 西田敏行/竹下景子/萩原聖人/田中邦衛/中江有里 
 
この映画のヒューマニズム精神は素晴らしいものがある。山田洋次監督の努力して働きながら夜間中学
で勉強する人間を見る目の何と温かいことか。
また、先生を演ずる西田敏行と竹下景子の優しさ溢れる演技がこの映画の評価を高めている。生徒では
自閉症でこちらの学校にやって来た中江有里の演技がとても秀逸である。人間が今までと違った環境を
与えられると、これほど成長出来るものなのだと元気が出てくる。それと田中邦衛さんが映画の後半全て
を一人でさらった。山田監督の演出恐るべし。続編では大竹しのぶ主演の3作が好きである。

 


 

キッチン
1989年  光和    107分    監督  森田芳光    音楽 野力義一
                       出演  川原亜矢子/松田ケイジ/橋爪功
 
吉本ばななのベストセラーを映画化した作品であるが、はっきりいって小説を上回る出来に仕上がって
いる。
特に川原亜矢子の魅力は最高である。最近はコマーシャルに良く出ているが、この映画の川原亜矢子
のイメージが壊れるので個人的には出てきてほしくないのだが。
非常にムラのある作品作りで有名な森田監督ではあるが、この映画は非常にしっかりとした作り込み
をしている。橋爪さんの母親ぶりはお見事!

 


 

キューポラのある街
1962年  日活   99分     監督  浦山桐郎    音楽 黛 敏郎
                      出演  吉永小百合/浜田光夫/東野英治郎
 
埼玉県の鋳物工場が並ぶ町で、貧しいながらも元気良く生きていく姉弟の様子を見事に描ききった浦山
監督の傑作である。今の人間にはこの時代の生活感覚に同化することは難しいのだが、一つの時代の
通過点として是非この時代の空気を感じてほしい。(私もわからないが)
この映画での浦山監督の演技指導があったからこそ、その後の吉永小百合があるといっても過言では
ない。
しかもこの映画はこの姉弟の厳しい環境を気負うことなく淡々と追うことで、素晴らしい作品に昇華した。

 


 

巨人と玩具
1959年   大映   96分       監督 増村 保造     
                         出演 川口浩/野添ひとみ/高松英郎/伊藤雄之助
 
ひょっとしたら一番好きな監督かもしれないと、最近は感ずる増村監督の作品である。この監督はどんな
映画でも器用にこなしてしまう。だから評価は余り高くはないが、この監督作品は今の人が見ても多分に
面白い作品が多い。早く生れすぎた天才監督だと思っている。
この映画は当時の製菓会社同士の熾烈なる販売合戦を一種、アニメーション的にスピード感溢れる映像
で一気に見せてくれる。当時の世相や生活感もとても出ている。
主役の川口浩さんがとても輝いている。とても存在感があって大好きな俳優さんである。

 


 

黒の駐車場                    NEW!
1963年  大映  85分       監督 弓削太郎    音楽  
                       出演 田宮二郎/藤由紀子/小沢栄太郎/松村達男
 
ここで紹介するのにはちょっと悩んだ。というのも全く世間的には評価されていない作品だからである。
今日はもう一度見直して良ければここで紹介しようと決心した。ここで書いているということは私的に面白
い作品であった。大映の黒シリーズの一つであるが、私は全て見た中でこの作品を推薦する。ストーリー
は製薬会社の新薬をめぐるもので、会社の乗っ取り、脅迫、人殺し、産業スパイ等々てんこもりの作品
です。この作品のラストのどんでん返しは日本作品では上位に入ると私は思っています。主役の田宮二
郎さんがカッコいいですし、相手の藤由紀子さんもとっても綺麗です。機会があれば是非見てほしいです。

 


 

警察日記                     
1955年  日活   111分       監督 久松静児     音楽 團伊玖麿
                         出演 森繁久弥/三国連太郎/三島雅夫/伊藤雄之助  
 
この映画は戦後日本の貧しさを描いているのだが、ちっとも暗くならずに見ることが出来る。人身売買や
捨て子、万引き、食い逃げといった一つ間違えるととんでもない作品になったのではないか。それを救う
警察署の人々が圧倒的に人間らしくて、とても暖かい。(今の警察にはないもの?)森繁さんののんびり
した巡査や真面目一方の若い頃の三国連太郎や宍戸錠がいい。また十朱幸雄さんや殿山泰司さんも
個性を出している。そんな中で圧倒的に存在感を示すのが署長役の三島雅夫さんである。豪放磊落と
言えばいいのか、とにかく署長さんが出てくるだけで画面がパッと明るくなったようでとてもいいです。必見

 

 


 

ゴジラ
1954年  東宝  97分    監督 本多猪四郎    音楽 伊福部昭
                    出演 ゴジラ/その他大勢
 
この映画はまず、音楽の素晴らしさに言及したい。伊福部さんのこのスコアがなければ全世界的なヒット
はなかったのではないかと思うくらいの傑作である。
そして、ゴジラを映画の中盤まで完全に見せない演出は見事である。(これをスピルバーグがジョーズの
演出で見事にパクっていた。)
しかし何といっても、特撮の円谷英二とその仲間達の素晴らしい特撮である。この映画がなければこの
映画に続く特撮の優秀作も生まれなかったし、ウルトラマンも見れなかったかもしれない。感謝!感謝!

 

 

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